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怪奇事件縁側日記「地下牢の天使」9

今日が冬至だったみたいです。間違えた……。
そんなわけで続きです。


怪奇事件縁側日記 夏・2
「地下牢の天使」

レプリカとはいえシャンデリアは重かった。間一髪で朝倉舞子の頭上は外れたものの、太ももから下は襲ってくる金属とガラスの塊からは逃れられなかった。医者の見立てでは後遺症は残らないということだったが、足を骨折したこととシャンデリアが落ちてきたというショックで舞子は舞台を降りることを余儀なくされた。
舞子が舞台を降りれば代わりのクリスティーヌが必要になる。だが、クラスメイトの一部が劇自体をやめたいと主張し始めた。
「だって、誰がやったって同じよ!舞子みたいにシャンデリアにつぶされちゃう」
それが主な理由だったが、すでに菊花祭実行委員会に演目を提出してある。ついでに変更期間はとっくの昔に過ぎ去っているために変更は不可能という事態に陥っていた。彼らは諦めきれずになんども実行委員会に掛け合ったようだが、前例がないという理由で演目の変更は却下されている。
演目の変更が不可能であれば、クリスティーヌの代役を立てるしかない。
かといって役も担当も決まってしまっている今、再びオーディションをするのは二度手間だ。
そういう理由で、新たなクリスティーヌは来栖恵蓮が歌うことになった。

夕暮れの講堂に悲鳴が響いたのは、恵蓮がクリスティーヌを歌うことになった数日後だった。講堂のすぐ近くでたまたま片づけをしていたテニス部員が駆けつけてみると、演劇部の女子部員が泣きそうな顔をして舞台上で蹲っていたという。そして彼女はこう言ったのだ。

「ここの下から、歌声が聞こえるの……誰もいないはずなのに」


彼女の歌声は薄暗い地下でよく伸びた。まさにクリスティーヌ・ダーエを歌うためにあるような歌声だ。
初めてこの地下牢で彼女に会って以来、彼と彼女はたびたびここで共に歌っている。ここには使用人以外来ることが許されていないというのに、どこからか彼女は現れるのだ。
「まるで音楽の神様みたい」
いつだったか、彼女は彼にそう言った。
「私はそんな身分じゃない」
そう答えたが、彼女は確か、ゆるゆると首を横に振って言ったのだ。
「身分なんて……神様じゃ嫌なのなら、天使」
そうして、彼女は自分の手を取り、指先に口付けたのだ。
彼女との関係は歌の師弟であり、良き友人のようなものだった。そうでありたいと思っていた。そうでなければならないと思っていた。
彼女は私を天使だと言ったが、彼には彼女こそが天使に見えるのだ。
この暗い地下牢で、彼に射した一筋の光が彼女だった。
だから、自分の中に芽生えるはずもない感情が芽生えた時、彼はそれをないものとして扱った。


講堂の地下から歌声が聞こえる。その噂はその夜、菊花学園高等部の生徒たちの間を駆けぬけた。掲示板も例外ではなく、オカルト板にいくつもスレッドが立てられた。菊花学園の裏サイトでは根も葉もない憶測が流れ、普段書きこみの多いスレッドさえもオカルト―否、怪人の噂一色に塗りかえられた。いくつもの推測の果てに、書きこみをした者たちはこう尋ねた。
「そういえば、ブルームーンはどうした?何か知っているんじゃないのか?」

『やれやれ、みんな勝手だなぁ。いつも電波とか何とか言っておいて、こんなときだけ頼るなんて……。そう思わないかい、ナズナさん?』
モニターの向こうにいる“彼”がそう問いかけてくる。それにため息を零しながら“ナズナ“はキーを打った。
『それは仕方ないんじゃないかしら。日頌の行いがこういうときに物をいってくるってことでしょ?』
それはそうだけど、と“彼”が返す。
『で、本当のところはどうなの?ブルームーン。春も鶴姫の時もわりといろいろ知ってたでしょう?本当に何も知らないのなら仕方ないけど』
『お手上げだよ、僕も。……つて言いたくなる気持ち、ナズナさんならわかってくれると思うんだけど。……知らないってことはないけどね』
知っていることがあるのなら白状しなさい、と書きこむと、ブルームーンはやれやれと長文をうちこんできた。
『講堂の地下には”怪人“が住んでいる、という七不思議は知っているだろう?実はその根拠となり得るものがあったんだ。……歌声だけじゃない、明確な証拠だ。講堂の奥、誰も動かしたことのないロッカーがある。実はそのロッカー、少しズラしたことがあるんだ。その後ろ、何か……板、古い板のようなものが打ちつけられていた。それがきっと、地下に続く階段が隠されているところなんだ。……他に地下へ降りられる場所はなかった。ついでに……いや、やめておこう』
『何よ、気になるでしょ?知ってること、全部話して』
涼香がそう詰め寄ると、やや間があって書き込みがある。
『動かした形跡があったんだ。少なからず人が出入りしている可能性がある。……ただ、それが誰なのか、中にいる者が出入りしているのか、外からの出入りがあるのかも分からない。だから言及しなかつたんだ。……勿論”あっち“にも言うつもりはないよ。言おうとも思わないけど。……誰かあっちに事情を知ってる人がいればいいけれど、いないと間違いを教えてもらえないからね』
そういうことかと涼香は納得する。要するに確信が持てないから言いたくないのだ。確かに鏡の魔女のときといい、鶴姫のときといい、ブルームーンは確信が持てたものしか情報を流さなかった。情報屋のプライド、というやつだろうか。
『ねえ、“あっち”で一度聞いてみたら?何か分かるんじゃないかしら?……あなたの言う無責任な人たちでも、何か知ってるかもしれないわ』
そうかなぁ、と首を傾げているような返答にナズナは苦笑した。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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