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怪奇事件縁側日記「地下牢の天使」8

こんにちは。今日は冬至ですね……。先日でこのブログも6周年を迎えました。
もっと面白い作品を書けるよう、これからも益々精進していきたいと思います。あともっと更新していきたいと思います。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・2
「地下牢の天使」


少女には目の前の光景がどこかテレビドラマの中の世界のように感じられた。シャンデリアの下から真っ赤な液体が舞台の上に広がって、誰かの悲鳴が聞こえる。
押しつぶされているのはいったい誰なんだろう。生きているのか死んでいるのかもわからない。けれど、ここにはいない誰かがワイヤーを切って、シャンデリアの下にいるひとを潰そうとしたことだけはわかった。
「あ……あぁ……」
少女にわかったのはそれだけで、後は何がなんだかわからない。クラスメイトたちが赤い液体の流れ出るシャンデリアに駆け寄って、下にいるひとに声をかけたり救急車を呼ぼうと走っていくさまを少女はぼんやりと眺めていた。
駆け寄ろうとしても少女の足はただ震えるだけで前へと踏み出してはくれなかった。
(こんなことしたのは誰なの?)
自分に問いかけてもわからない。だって音楽の天使はクリスティーヌ・ダーエではなかったけれどもコーラスガールの役を射止めた自分と、見事クリスティーヌ・ダーエを歌うことになったあのひとにお祝いとして舞台で使うシャンデリアをプレゼントしてくれたのだ。
それなのに、シャンデリアは誰かの心無い事故によって真っ赤な血に汚れてしまった。シャンデリアを落とした誰かはもしかして自分がクリスティーヌ・ダーエを歌っていたら自分を潰そうとしたのかもしれない。
(こわい)
少女は知らず、身を震わせた。いつの間にか男の子が自分の横に立っていて、優しく肩に手をかけた。
「大丈夫?」
「だいじょうぶ……でも、だれが」
「誰なんだろう。でも、君が危なくなったら僕が守ってあげるから」
その言葉と手のひらの温かさに少女は不思議と震えが止まるのを感じていた。歌を教えてもらうときにだけ感じていた心の中に広がる温かさが今再び感じられる。両親を亡くして親戚に引き取られた彼女の凍ったままの心が、どんどん解けてゆく。
凄惨な現場を目にしているのにもかかわらず、少女は場違いにもぼんやりと訪れた嬉しさに身をゆだねていた。


ねえ、神様。
どうして私の人生には血の記憶が纏わりつくのでしょう。
私はどうして、誰も守ることができないのでしょう。大切なひとさえ満足に守れない。彼らが涙を流しているときに、私は盾になることさえできないのです。
私の思い出には楽しいこともたくさんあったけれど、それ以上に悲しいことが多くありすぎて苦しいのです。
今あの人がそばにいてくれたら、私はもっと強くなれたでしょうか。あの人を守るために、修羅の道を歩めたでしょうか。

「先生」
彼女は震える声を絞り出す。目の前の人物は本当に優しげにどうした、と問う。その声がたまらなく愛おしくなって、彼女は彼に縋り付いた。
「怖いの」
「怖い?」
「私はクリスティーヌになれなかった。でも、それでよかったと思ってしまったの」
「よかった……?」
彼女は夢中で頷いた。あの時感じた震えがまた甦って、再び身を震わせる。
「だって、私がクリスティーヌを歌っていたら、きっと私が殺されてた!」
シャンデリアの揺れる不気味な音が、今も耳の奥で木霊している。本物のシャンデリアと遜色ない重量のそれが落ちる音が、逃げ遅れて潰される瞬間のクリスティーヌの恐怖に彩られた悲鳴が、頭の中から離れない。
それよりも彼女が怖いと思ってしまったのは、自分が潰されなくてよかったという安堵を覚えた自分だった。差出人が何者かわからない手紙をもらってクラスメイトから罵倒されたことが結果的には幸せだったと感じたのだった。
「クリスティーヌを心配するよりも、自分があの場所にいなくてよかったと思ってしまったの!」
彼は彼女の名を呼んで、優しく髪を梳く。
「人間とは……そういうものだよ。誰だって人が不幸な目にあえば、自分がその立場でなくてよかったと思うものさ」
「でも……」
「クリスティーヌ役がそんな目にあったのは、誰かが君のクリスティーヌ・ダーエを聴きたいと思ったからではないかな」
「先生……」
クラスメイトの心配よりも自分がまきこまれなかったことの安堵が先に立ってしまった浅ましい自分の歌を、彼は聞きたい人がいるだと言ってくれた。その一言だけで彼女は神にも許されるような心地がする。
「先生は、私の歌を聴きたいと言ってくれる……?」
彼はゆっくりと頷いて、もちろんだと言ってくれた。
「さあ、練習を始めよう」

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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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