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怪奇事件縁側日記「地下牢の天使」7

前回の続きです。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・2
「地下牢の天使」

「『オペラ座の怪人』を上演すると……人が死ぬって言われているのよ」
「え……」
聞かなかったからだろうが、それはブルームーンが教えてくれなかった情報だった。明日華と唯奈の引きつったような表情を見て、涼香と優もそれがただの冗談でないことを知る。
「人が死ぬ、って……」
唯奈の言葉にアサミはゆるゆると首を横に振った。
「私も詳しくは知らないの。……リハーサル、行きましょう」

台車を押して講堂に着くと、キャストはアサミ以外全員そろっていた。
「どうしたのよアサミ、遅いじゃない」
ふん、と朝倉舞子が不機嫌そうに声をかける。そこから離れたところで来栖恵蓮が遠慮がちに声をかけた。
「な、何か……あったの?その台車……」
「ええ。教室を出るときに廊下にこれが置いてあるのを見て、台車をとりに行ってたの。……『親愛なる麗しのプリマドンナへ』ですって」
アサミの言葉に恵蓮と舞子が首をかしげた。
「『怪人』……ファントムからの、贈り物じゃない?」
恵蓮の表情が困惑に染まる。
「……あの時の……?」
「……オーディションの時の手紙の?自作自演だと思っていたわ」
桃色を基調とした動きやすそうなワンピースに身を包んだ舞子はしばらく押し黙った後、包みに手をかけた。
「中身はなんなの?」
「まだ開けてないのだけれど……」
彼女はふぅん、と返事をして段ボールに貼られたガムテープを剥がしてゆく。蓋に手をかけて箱を開けば、中から大きなシャンデリアが姿を現した。
「シャンデリア……?」
「なにそれ」
「明かりはつかないようになってるけど……これ、シャンデリアだわ」
どういうことなの、と呟く舞子に淳史が口を開いた。
「この間の『ファントム』が朝倉をクリスティーヌだって認めたんだろ。自作自演をしてとぼけるようなどっかの誰かと違って何もしなくても上手いから」
「それはともかく、シャンデリアに関してはこれで大道具を作らなくて済むわね」
舞子はよかったわねと続けるとアサミ達に背を向けた。
「リハーサル、始めましょ。シャンデリアはちゃんと吊るしておいてね」

リハーサルの時のように、歌声が舞台から伸びてくる。
朝倉舞子のクリスティーヌ・ダーエを聴く度に涼香はこれで良かったのかと疑問に思う。
『クリスティーヌ・ダーエは来栖恵蓮に歌わせよ』
あの手紙が来栖恵蓮の自演だった証拠はない。恵蓮が歌っているのを聴いた何者かが寄越した可能性だってある。ヒステリックに怒鳴る舞子を宥めるために恵蓮をクリスティーヌがコーラスガールを務めるオペラ座のヒステリックなプリマドンナ・カルロッタ役に据えたが、配役を逆転させた方が正しいような気がしたのだ。
「女優だよね」
唯奈が呟く。
「え?」
「舞台の上では、ヒステリー起こさないもの」
「……そうね」
「みんなそうなのかな」
「みんな、って」
「私たちも……女優になれるのかな」
その一言が妙に重い気がして、涼香は返事を躊躇った。沈黙のなか、歌声だけが伸びてゆく。舞台の上では女優になれる。それは役を演じる上では必要なことだ。だが、舞台がその意味での舞台なのかが分からない。菊花学園という舞台で、高見唯奈という役を唯奈が演じている、という意味なのか。唯奈やこの学園の生徒に限らず、自分という役を演じる者はいるだろう。どのくらいいるのかは分からないが、誰であろうと演じることは出来る。だが、と涼香は考える。何かを隠すために自分を演じることは出来るのだろうか。
「……あ、そんな難しく考えなくていいのに」
唯奈がぱっと笑った。
「……え」
「私も緊張しないでお芝居出来るかなって思っただけだから、ね?」
「え、あ……そうなの?」
「そうよ?」
唯奈の笑みにつられて笑う。なんだか釈然としないながらも涼香も笑みを浮かべた。舞台では朝倉舞子が今朝何者かから贈られ、結局は吊り下げられたレプリカのシャンデリアの下で歌っている。

そのシャンデリアが、揺れた。

「……?」
「どうしたの?」
「今、揺れなかった?」
「え……?」
ぎいぎいとワイヤーを軋ませて、照明装置ごとシャンデリアは揺れる。朝倉舞子は気付かない。
「朝倉さん!」
呼び掛けても朝倉舞子は反応しない。音楽を切って再度呼び掛ける。ようやく朝倉舞子が反応した。
「ちょっと!まだ途中じゃないの!音響ちゃんとやってよ!」
「朝倉さん、すぐ舞台降りてこっち来て!」
涼香の言葉を朝倉舞子は一蹴した。
「変更点があるならこっち来てよ。私は歌いたいの」
「そうじゃない、そこにいると危ないの!」
ぎいぎいと揺れるシャンデリアに今や誰もが気付いていた。
「舞子!」
誰かが叫んだ。
「え……?」
朝倉舞子が上を見る。
「舞子っ!」
麻里紗が手を伸ばした。
その瞬間、シャンデリアの揺れが止まる。

そして、レプリカのシャンデリアに付いていたワイヤーがぶちりと切れた。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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