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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

ハロウィン小話
こんにちは。
今日はハロウィンですね。
そんなわけでなんとなく書きたくなって書いたハロウィンのSSです。
『誘絵巻』で連載されている『時計仕掛けのミラーワールド』の紗綾と文華の話です。
では、どうぞ。

ハロウィン。
最近日本でも有名になってきた行事だ。
本来は日本でいうお盆行事に近いもので、あの世からやってくる妖怪やら精霊やらをもてなす行事であるが、どうも妖怪やら妖精やらの仮装をして「トリックオアトリート」の合言葉と引き換えにお菓子を貰う行事と化しているようである。
行事として間違ってはいないのだが、それでいいのかと首を傾げたくなるのもまた事実だ。
「……で、なんで私の家、知ってるんですか」
自宅のリビングに上がり込んで寛いでいる客人に、ハロウィンについてあれこれ考えていた峰河紗綾は盛大にため息を吐いた。
「いいじゃない、私を誰だと思ってるの」
「……『ノルン』……いや、青山文華さん」
客人……雑貨サイト『朝の花』の管理人『ノルン』こと青山文華はにっこり笑ってそんなことをのたまった。
文華は雑貨サイトの管理人であり、紗綾たちのような『朝の花』のチャットルームに集う面々の溜り場であるカフェの経営者だ。しかしいきなり暗号を持ち込んだり、紗綾の知り合いを巻き込んだ狂言事件の共犯者であったりと謎がある人物でもある。
いや、それだけではない。
紗綾の知り合いの少女が計画した狂言事件は記憶が確かなら、少女の父親から極秘で文華のもとに依頼が来たはずだ。それは『朝の花』に事件の依頼をすれば警察よりも早く事件を解決できるという噂がまことしやかに広まっていたからともいえよう。
青山文華という人間は、どういう人間なのか。
チャットルームに集っていても、カフェにいても、彼女の本性は謎に包まれていてほとんどわからない。
「……何しに来たんですか」
「ん?お菓子を貰いに来たのよ?」
しれっとそんなことを答える文華に、紗綾は天井を仰いだ。
(ああ、神様。私は日本に来て、とんでもない人間と知り合ってしまいました……)
紗綾のそんな心境を知ってか知らずか、文華は菓子を要求してくる。持ち合わせている菓子などないので大きくため息をついて鞄を手にとった。
「あら、どこ行くの?」
「買い物です。仕方がないのでお菓子買ってきますから」
その言葉を紡いだ瞬間、文華の口角がにやりと吊り上った気がした。
「紗綾ちゃ~ん?」
「……なんですか、いい年して悪戯とかやめてくださいね?」
「そんなことしないわよ」
そのかわり、と文華が何かを紗綾の目の前にぶら下げる。
「これ、つけて?」
「……いやです」
紗綾の目の前にあるのはどう見ても黒い猫耳のカチューシャ。
自分がまだウィーンにいたころで、今でも敬愛するヴァイオリンの師匠に言われたのであれば喜んで猫のしっぽとともにつけたかもしれない。
しかし現実は、紗綾はもう高校生で、目の前にいるのは師匠とは似ても似つかない意地の悪い笑顔をした文華。
絶対につけたくない。
「お菓子持ってないんだからこれぐらいやって?」
「いやですって。これから買いに行くんです」
「いいじゃない、減るもんじゃないし!それっ」
そっけない態度でリビングを出ようとすると、文華の手が紗綾の頭を襲った。
「ここは日本ですから!きゃ……っ!」
思わず瞑った眼を開けると、満足そうに微笑んで頷く文華が見えた。頭の上を恐る恐る触ると、猫耳のふわふわした毛に触れた。
「……やられた……」
「似合うわよ?」
「……」
はぁ、と三度ため息をついて、紗綾は今度こそリビングを後にした。
「ついて来てください。私1人よりは減らないはずですから」
「あら、ずいぶん素直なのね?」
減る原因を作った人物にそんなことを言われて、紗綾の頬が熱くなる。それを見せないようにして答えた。
「き、今日だけ、ですからね!来年はやりませんからね!」
(ちょっとだけハロウィンで来て嬉しいとか、全然思ってないんだから!)
コンビニへ行く道すがら、なぜ紗綾を選んだのかという問いに一番家が近いからという答えを返されて、彼女が家に引き返そうと本気で思ったのはまた別の話である。
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