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怪奇事件縁側日記「地下牢の天使」3

お久しぶりです。少しずつ書き溜めてます。
なんとか溜まりました。
今回はいろいろと情報収集。

では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏の2
「地下牢の天使」

誰もがクリスティーヌ・ダーエを歌うのは朝倉舞子か月河アサミだと信じて疑わなかった。しかし月河アサミは立候補せず、来栖恵蓮が立候補した。
来栖恵蓮は緩くウェーブした長い栗色の髪を三つ編みにした大人しい美少女、ということ以外にはこれといって目立った特徴のない生徒だった。何かと目立つ気の強い朝倉舞子とは正反対だ。
そうであるからしてオーディションが決定した直後、舞子の取り巻きたちが恵蓮にクリスティーヌ役を辞退するよう秘密裏に頼んだらしい。らしい、というのは当然ながらその打診を断った恵蓮のことを取り巻きたちがボロクソに言っているのを涼香たちは何とはなしに聴いていたからである。
「悪い方面に作用しなきゃいいけど」
涼香はパソコンの前でため息を吐いた。アドレスを入力していつものチャットルームへと向かう。
『こんにちは、ブルームーン』
『やあ、ナズナさん』
画面の向こうの相手……ブルームーンは短くそう返してきた。
『突然だけど、講堂に地下なんてあるの?』
『講堂に?』
『そう。ファントムが住んでいる、っていうじゃない?』
そう打ち込むと突拍子もない話題でも通じたようで、ああ、と答えが返ってくる。
『地下があるのかどうかはわからない。何しろ見取り図がこちらにないからね。ただ、ずっと前から噂があってね』
『噂?』
『そう。噂。何年も前に……講堂の地下室で歌声を聴いた、っていうのがある』
講堂の地下室の歌声。
『地下室には何があるんだと思うの?』
その問いに、ブルームーンは答えることはなかった。

「あ、これ……」
某掲示板にアクセスしていた明日華はふと目に留まったものに声を漏らした。
「講堂の地下には部屋がある……ね」
書き込みはクリスティーのものだった。以前ブルームーンが書いていたものと似ている。あれは講堂の地下には天使がいる、だったか。
「地下の部屋に天使がすんでる、ってことかな」
去年から講堂は噂になっていた。放課後になると歌声が聞こえると言うのだ。そのことをあわせると、地下の部屋に住んでいるらしい天使とやらは歌が好きらしい。
「そうは言っても……ねぇ」
オペラ座の怪人は菊花学園高等部にとって禁忌の劇と言ってもよいだろう。
『オペラ座の怪人を演じるクラスはあるのかな?』
そう書き込んで更新すると、ヴィオレッタから返信がきていた。
『そんな恐ろしいこと、ないことを祈りたいわ』
どういうことだろうか。首を傾げた明日華は、次の文章に目を見開いた。冷水を浴びせられたような心地がする。
「お嬢さん、稽古のお時間です……お嬢さん?」
春に入ったばかりの弟子・大神光一の声さえ耳を素通りしてゆく。
「お嬢さん!」
「……!」
肩を掴まれて、明日華の意識は急速にそちらに引き戻された。
「どうしたんですか?具合でも?」
「……何でもないわ」
弟子は小さくため息をついた。
「何かあったら、言ってくださいね」
分かったと返事しながら、明日華の脳裏にはまだあの文章がこびりついていた。
『オペラ座の怪人を上演すると、人が死ぬって言うんですもの』

唯奈は花菱衛を呼ぶと静かに口を開いた。
「花菱は菊花学園のOBよね?」
「はい。高校からですが」
花菱が頷く。
「ちょうど良かったわ。『オペラ座の怪人』、知ってる?」
唯奈としては何気なく聞いたことだった。しかし、花菱は僅かに顔色を変える。
「花菱?」
「……お嬢さん、『オペラ座の怪人』といえばガストン・ルルーの有名な小説ですよ」
はぐらかされた。
仕方がないのでもう少し探りを入れる。
「今度うちのクラスで上演するんだけど」
「……そうですか」
花菱はその顔に何の色も乗せずに頷く。
「七不思議に『オペラ座の怪人』があったとは聞かないけれど?」
「お嬢さんは知りたいんですか?」
「ええ」
花菱はしばらく押し黙った。唯奈の耳に入れてもいい情報なのか迷っているのだろう。
「花菱」
「はい」
「知ってることを全て話しなさい。隠してもしょうがないでしょ?」
出来るだけ抑揚をつけずに、出来るだけ低い声で命じる。唯奈が初めてだしたその声に花菱の表情が僅かに変わった。
「……それは」
「話しなさい」
そのままの声で再び命じれば、花菱は深くため息をついて分かりましたと頷いた。
「親父さまには内緒でお話ししましょう」
「お願い」
「オペラ座の怪人は、菊花学園にもいるんです」
「どういうこと?」
「噂を、聞きませんでしたか?」
「噂……?」
「菊花学園にいる怪人は、人を殺すんです」

菊花学園では『オペラ座の怪人』はいわくつきの劇らしい。某掲示板ではそのことについて議論が交わされている。どこかのクラスがやるだのやらないだの云々というものだ。
優は『オペラ座の怪人』を知らない。『講堂から歌声が聞こえる』とか『講堂には天使が住んでいる』とかいう七不思議の怪談にしたって、実際には聞いたことも見たこともない。だからだろか、『オペラ座の怪人』と七不思議がどうつながるのかが皆目見当もつかない。
「『オペラ座の怪人』?ガストン・ルルーの小説だろ?」
優がたまたまリビングにいた長兄・佳紀に尋ねると、彼は心底面倒くさいといった表情でそう答えた。
「お前、読んだことないの?」
「ない……けど……」
「じゃあ読めば?」
「……うちにあるの?」
佳紀の苛立ったような視線が優を射る。
(こわい)
「智に聞いてみろよ。俺は知らね」
それだけ言うと長兄はいらいらとリビングを出て行ってしまった。
(こわいよ……)
玄関のほうで次兄の智が出かけるの、と聞いているのが聞こえる。佳紀はそれにも苛立ったようにバイト、と答えている。
佳紀は怖いのだ。怒らせたら、どうなるかわからない。
だから、怖いのだ。
「優ちゃん?どうしたの?」
知らずにがたがた震えていたらしく、呼び声に顔をあげると心配顔の智が立ち尽くしていた。
「……なんでも、ないよ」
「……そう」
ごまかすようにそう言えば、智は心配そうな顔のまま、ひどく曖昧に微笑んだ。
「……そうだ、智兄さん……『オペラ座の怪人』ってどんなお話なの?」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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