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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」25

ラストです!ここまでお読みくださって本当にありがとうございました!

では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

「私、ここにいたいの!私、まだ死にたくない!お願い、私はまだ生きていたい!」
「先輩……」
それは血を吐くような叫びだった。一言一言を叫ぶごとに風が吹き荒れ、鶴たちが慌ただしく羽ばたきながら飛び回る。
「そんな酷いこと言うなんて、あなたたちも鬼なのねっ!?鬼なら、侍なら殺しても良いのよ!」
鶴たちがこちらへと飛んでくる。それはもう鶴と言うよりは鉄砲玉に近い。
(よけきれない……!?)
これはよけきれない。避けたとしても何処かが傷つくのは避けられないだろう。覚悟をして目を閉じる。瞼の裏に鶴の嘴が映る。
その時だった。
かん、と鋭い音がした。
目を開けてみれば唯奈の胸ポケットが柔らかい光を放っている。鶴たちは嘴を突き刺そうとしても見えない壁に阻まれたように途中で止まっている。
「これは……?」
唯奈が恐る恐る胸ポケットに手を突っ込んでお札を出す。広げて天に掲げるとぱしん、と音が鳴って結界が強固なものとなる。
「これは……結界……っ!?」
雅が唸る。優がポケットからお札を取りだして鶴へと向ける。
「やっぱりこれ、効果あるんだ……」
一声断末魔の悲鳴を上げて鶴たちが霧散した。
「嘘……っ、何で……若嶋……若嶋神社の……」
「若嶋神社の巫女さんがくれました」
狼狽えた雅は、しかしもう一度風を起こす。
「かごめかごめは私の呪いの歌!誰にも……誰にも私を止めさせない!」
襲い来るは、一陣の突風。明日華がポケットの中から塩を掴んで投げつける。それからお札を掲げたまま突風に真っ向から立ち向かう。
「明日華!」
「だいじょうぶ」
彼女がにやりと笑ったのを涼香は見た。
「涼しかったわ……でもちょっとおいたが過ぎたんじゃないっ!?」
お札を投げつけると雅の動きが止まった。同時に風も止む。これでお札を出していないのは涼香だけだと彼女はぼんやりと思う。
「籠原先輩」
涼香が掛けた声に返ってきたのはふて腐れたような返答だった。
「……なぁに?」
「あなたは、この世に生きながらえて幸せでしたか?」
「……ええ」
「でも、あなたはこのままではずっと菊花学園で人を殺し続けなければならなくなる……今年卒業してしまえばどうなるか分からないんですよ?」
「……」
「暁姫様も小夕さんも、分かっているはずです。これ以上人を殺した所で、あなた方がにくんでいた者はもう……いないんです」
「……わかって……いるわ」
か細い声。
「わかっているの……でも……」
「ねぇ、先輩。私はあなたと知り合えて良かったと思っていますよ。明日華だって、優だって、……優だってそう思っているでしょう」
「……」
「ですから、私たちは今度はちゃんと生を受けたあなたと知り合いたいんです」
雅が涼香を見上げる。
「還りましょう……いるべきところに。あなたはもう苦しむことも悲しむこともないんです。……その代わり、ちゃんとあなたがいた証を残しますよ」
砂利道にぱたりぱたりと水滴が落ちる。雅が咳き込む。
「先輩、それ……」
彼女の手の平には、べったりと赤い血が付いていた。
「……あぁ、やっぱりもう限界なのね……」
雅のあげられた面に浮かぶのは微笑み。涙が伝って血で汚れていてもなお、その微笑みは美しかった。いや、今までで一番綺麗な微笑みだった。
「さようなら……籠原先輩」
涼香が二つに折りたたんで結んだお札を宙に投げる。それは空中で三羽の鶴となり……3人の鶴姫を乗せて黄泉の国へと旅だった。
「終わったね……」
誰かがぽつりと呟いた。

それから数日が経った。
「涼香~っ、暑いよぅ~……」
涼香が昼食を取るために教室に戻ると、明日華がフルートを机の上に置いてだれていた。
「何言ってるの、クーラーつけなさいよ!」
クーラーをつけてやると彼女はお腹空いたぁ、とお決まりの文句を並べ立てる。
「ほらほら、ご飯にしましょ。……で、唯奈と優は?」
「ご飯買いに行ってる……」
「あそ。……で、あんたは何でこんな所に?」
「ご飯……」
「……はいはい」
明日華に聞いてもまともな返答は得られないと分かって涼香はペットボトルの中身を煽る。
「ところでさ、……もういないんだね……」
「……そうね……」
籠原雅。死んだはずの彼女は仮初めの生が幸せだったと言った。そしてあの日、籠原雅という存在は急病で死んだと言うことにされた。
けれども涼香達は知っている。
彼女がどういう存在で、どんな最後だったのかを。
だから、忘れない。
菊花学園高等部の裏庭にはひっそりと小さな祠が建っている。七条兄妹に協力してもらって立てた鶴姫の祠だ。
雅がこの世にいなくても、涼香達は決して忘れない。
「ただいま~!暑いわね~、外!」
「ただいま……きゃっ!」
賑やかな音が響いて唯奈と優が入ってくる。
「ちょ、唯奈、大丈夫?」
「椅子に足引っかけちゃって……大丈夫」
「なら良かった。ご飯にしましょう」
唯奈は結局、雅が成仏する瞬間をしっかり見ていて、それでも泣くことはなかった。また逢いましょう、と空に向かって静かに微笑んでいた。
それが彼女の強さなのだろうと涼香は思う。
外を見れば蝉の鳴き声に混じって青葉で遮られた日の光がきらきらと輝いていた。それを眺めながら涼香は歌う。

かぁごめ、かごめ
籠の中の鳥は
いついつでやる
夜明けの晩に
鶴と亀が滑った
後ろの正面だぁれ……

それが誰かに向けた鎮魂歌になっていることを祈って。

おわり。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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