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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」24

ラスト前。そして予約投稿。今回エピローグが短いので次回に一緒にUPしますね。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


息を吹きかけた折り鶴は真っ直ぐに鬼のほうへ飛んで行きました。そうして鬼の喉を裂きました。
醜い断末魔の悲鳴を上げて鬼は血を流して倒れていきました。けれどもそれはただの人が倒れているようにも見えました。
「どういうことなの?」
大きな鳥は言いました。
「お姫様、お前が殺しているのは侍だ。けれどもお前が殺しているのはお前の次の器なんだよ」
「お姫様って……私は……」
「お前は籠原雅であり、鶴姫様だ。松谷暁姫様と鶴羽の杜の小夕様の魂がお前を生かしている。お前はこの若嶋の民に復讐するんだ。……それが出来なければお前はただの甕だ」
「私は……私は……まだ、生きていたい……」
「お前は生まれたときには死んでいた。我らの助力が合ってこそ生き延びてこられた。さあ、お姫様。我らはあなたの鶴です。あの鬼共を食らうご命令を……」
鳥……いいえ、鶴はいつの間にか何羽もいました。
その嘴は、羽は、朱に染まっていたのです。
きっと鶴姫の仕業でしょう。
嗚呼。
私の話をしましょうか。
私の家は小金持ちの、籠原家という家でした。
私はその家に生まれた最初の子で、長女でした。
けれども私は生まれてなんていなかったのです。
私は知らないうちに人を殺めるお人形なのです。
いいえ。
私は鶴姫。
鶴姫そのものなのです。
ですからどうか、私をこの世に留まらせてください。
私は鶴姫として、籠原雅として生きることで生の喜びを知りました。
それは18年足らずで手放すにはあまりに惜しいのです。
誰の血を捧げても構いません。この若嶋を根絶やしにしたって構わない。
だから、私を助けてください……。


翌日、涼香達は気分が乗らないながらも教室へと登校した。授業を何とかやり過ごし、教室にてその時を待つ。
「……唯奈」
「うん」
「……いいの?」
「……うん」
唯奈はこくんと頷いた。
「先輩を……このままにはしておけないわ」
「……そうね」
「納得ずくで還って欲しいものだけどね……」
明日華が天井を仰いで溜息を吐く。
「そうね……」
優も思わぬ事態に嘆息した。
籠原雅が最早彼岸の人だとは思わなかったのだ。
そして、彼女が鶴姫だとは思わなかったのだ。
けれども涼香達はブルームーンと約束をした。
鶴姫を、雅を黄泉の国へ帰すと。
時刻は間もなく17時。あの世とこの世の境界がもっとも曖昧になる逢魔が時。
かぁ、と太陽が最期の焔を吐き出す。
赤い赤い、妖かしの光が制服も顔も血の色に染めあげる。
菊花学園はこの瞬間に人ならぬ物の怪たちに支配された。
「そろそろ、行こうか」
唯奈が立ち上がる。涼香も続いて席を立った。
「真っ赤……すごいわ」
がらりと教室のドアを開けると、そこには艶やかな黒髪の女生徒が立っていた。
「葉月ちゃん……」
女生徒……七条葉月はしばらく涼香たちを見つめた後、ようやく口を開いた。
「本気で……かごめかごめの鶴姫を倒しに行くの?」
「ええ。現実にいる人でも、いる人だから、もうこんなことはやめて欲しいの」
そう、と葉月が抑揚のない声で頷く。
「できれば私が鎮めたいと思っていたけれど……終わったら呼んで」
「分かったわ」
頷いて廊下に出た涼香たちを葉月が再び呼び止める。
「これを持っていって。何かの役に立つはずよ」
手のひらには数枚のお札が載っていた。
「危なくなったらそれを出して。必ず助けるから」
うん、と返してお札を身につける。
セーラー服のポケットにそれを仕込んで、スカートのポケットに仕込まれたものを確認して、彼女たちは校舎裏へと歩いていった。
生きて帰ってきて、という葉月の願いを受け止めながら。

「迎えに参りましたよ、お姫様」
その声にくるりと女がこちらを向いた。
「あら、みんなそろって来てくれたのね」
女の声は柔らかく、そしていつもの彼女の声ではなかった。
「あなたをこの世の呪縛から解き放つために、ね」
「この世の呪縛?」
女は笑った。
聞いているこちらが薄ら寒くなるほどに愉快そうな、歪んだ笑い。
ブルームーンから聞いた言葉が蘇る。
『彼女は元々この世に存在しないはずだった。姫が無理やり体を育て、巫女が守っているに過ぎない』
残酷だ、と涼香は思う。
女は生まれたときにはすでに死んでいるはずだった。それを姫と巫女が無理やり蘇生しただけの、いわば人形だったのだ。
「私、あなたと知り合えて幸せだったと思います。でも、同時に不幸せだったとも思う」
「まあ、どうして?」
唯奈がきゅっと唇を噛んで、覚悟を決めたように女を見据える。
「あなたはもう、この世にはいない存在なんです……籠原雅先輩」
雅がぱちぱちと拍手をしながらくすくす笑う。
「ふふ……よく分かったわね。誤算といったらそれだけかしら」
「あなたは生まれたときには死んでいた。けれどお姫様になることで生き延びた。違いますか?」
「正解よ。でもね、私、しばらくは雅でいたのよ」
それまでは巫女となることで鶴を折っていた、と彼女は笑った。
「ねぇ、私、何かしたかしら?私はずっと追ってくる侍たちを振り払っているだけなのよ」
それは、無邪気な微笑み。
途方に暮れた幼子が、自分を元気づけようと浮かべる、無邪気な微笑み。
「あなたが振り払ったのは、侍たちだけじゃない。村の小さな子供もいたし、菊花学園の生徒もいた……だから、もう寂しくないようにお迎えに来ました」
すると雅は嫌がるように首を横に振る。その背後に、白い靄が立ち上る。
「……!」
「嫌、嫌よ。私まだ生きていたい」
その声に、靄が答えるように雅を包む。それはだんだんくっきりと形を顕し、鶴の形となった。
「せっかく体を手に入れたのに、もう出るなんていやよ!」
ひゅう、と風を切る音がした。
地を蹴って飛び退くと、風を切って飛んできたソレはぱさりと墜落する。
「鶴!?」
それは鶴だった。ただし、白い紙で折った折り鶴である。
「私は鶴を折るのが好きだったの。ずっとずっと折ってたの。みんな私が生きていくのに賛成してくれたわ」
その嘴に、羽に、赤黒い染みが出来ている。
「でもこれは血でしょう?あなたの大好きな鶴に染み込んでる……ねぇ、籠原先輩……鶴姫様」
なあに、と雅は楽しそうに笑う。それがどこか悲しそうに見えたのは錯覚だったのだろうか?
「どうして殺してしまったんですか?」
「私を追いかけて、殺そうとするからよ」
「でもそれはあなたが生きていたときまでです。今まであなたが殺してきた人間は全くの無関係です」
「そうかしら。私にはそうは思えないわ」
「なら幼い子に何の罪があるんですか!?あなたは血の香りに酔っているだけです!だから、どうか目を覚まして……籠原先輩は、唯奈の大切な先輩なんだから……」
縋るように糾弾する涼香の後ろで、唯奈が雅を睨みつけた。
「どうしたの?高見さん」
睨み付けたまま彼女は声を絞り出す。
「あなたは結局、血の味が好きなだけだったんじゃないですか?」
「まぁ、どうして?」
雅が優しく笑う。
「だって……鶴の記憶の中のあなたは、血の匂いに微笑んでいるから」
「あら……」
「友人から聞きました。あなたは……あなたはもう死んでいるんです。若嶋の村人を武士だと勘違いして殺し続ける暁姫と、もう自分が包囲から逃れる必要が無いと分かっているのに姫を助けなかった村人を恨み、復讐しようとしているだけの小夕の操り人形なんです」
「……」
「私たちはある人と約束したんです。……あなたを、あなたたちを黄泉の国へ帰す、と」
「嫌よっ!」
不意に雅が叫んだ。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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