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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」21

お久しぶりです。さて、縁側日記の続き。次回から怒濤の考察ラッシュです。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

「それで、その鶴姫さまが、今更何の用なのかしら」
ねぇ、と優が唯奈に応じる。
「それならパソコン、掲示板のログ保存してあるわ」
明日華が小さな声で知らせる。涼香が明日華のノートパソコンを開くと、ズラリとファイルが出てくる。
「一番新しいの」
言われたとおりにファイルを開くと、巨大掲示板のログが大量に出てきた。頭がクラクラするような文字の羅列から読み取れたことを整理する。
どうやら鶴姫さまの元になった姫君は松谷暁姫、関東のこの辺りに近い小国の大名だったらしい。しかし時は戦国の世、家臣の田嶋公親の下克上に合い、闇討ちにあった当主の隆靖(たかやす)は討ち死にし、長男の隆忠(たかただ)を筆頭とした暁姫と長女の礼姫を除く2男3女の子供もあえなく殺された。
その中の礼姫と母を同じくする二の姫が暁姫なのだが、その姫が下克上の混乱の中、専科をかいくぐって逃げ出してしまう。田島公親は姫を生かしておくわけには行かないと部下に追わせ、村人の冷遇もあってとうとう逃げ切れなくなった暁姫を殺してしまう。
その場所が今の学園、当時の神社だったのである。
松谷家は元々山城の国(現在の京都府辺り)にいた武士で、貴族や朝廷との繋がりが非常に深かった。暁姫は当時15、姉の礼姫は松谷家のパイプによって内裏に更衣として既に上がり、暁姫も10月には貴族の某(なにがし)に嫁ぐ筈であった、というわけだ。
巫女小夕については、元は暁姫の侍女だったが、病気とかで暇を出され、親戚の伝手を頼って神社の巫女として養生していたのだそうだ。
姫にとっては気心知れた仲であったことだろう。兎に角小夕がいた神社がこの学園の前身の前身、鶴羽神社だったのだ。
「怨みを残して死んだみたいだからね、二人が怨霊化してもそうおかしくはないよね」
「そう……ですね」
唯奈が迷うように頷く。恐らくは前回の事件のことでも考えているのだろう。そういえば春の事件もそうだった。全てを取り上げられ、復讐のバラの魔女と化した女。その胸のうちに渦巻いていたのは紛れもなくこの土地を奪った花園家と、菊花学園への恨みだった。恨んで恨んで、とうとう死んでしまった女と、恨みながら殺された女。よく似ている二人は十分に異形のものになる資格があったのかもしれない。
「そういえば礼姫はその後どうしたの?」
「それがどうも落飾しちゃったみたいなの。……まぁ、母親の朝嶋夫人―香姫が本名みたい―も他の兄妹達も死んじゃったから仕方はないと思うんだけどね。ついでに落飾後の名前は礼紫院」
礼姫は落飾。暁姫やその下の姫達は殺された。
「へえ……そういえば分かったわ、歌の正体」
「歌の正体?」
「ええ。……かごめかごめよ」
「かごめかごめ……」
「……ってあれでしょ?か~ごめかごめ、かぁごのなぁかの鳥は……って」
優が歌ってみせる。
「そう。……ついでに鶴姫様、きっと分かってなかったんじゃないかしら」
何が、と明日華が首を傾げる。
「自分が何を殺しているのか」
「自分が……村人と侍じゃなくて?」
唯奈が聞き返す。
「ええ。鶴姫様は言ってたわ。……『私を追うお武家様を根絶やしにしなさい』……って。でもこれだと村人が殺されたのはおかしいのよ。鶴姫、もとい暁姫には相手の名前なんて覚えちゃいないわけで、それなら田島公親を直接殺した方が早いでしょ?なのにそれをしないって事は村人を自分の追っ手だと思いこんでいるからなんじゃない?」
ふむ、と竜哉が頷いた。
「涼香ちゃんの考えはいい線を行っていると思うよ」
「そ、そうですか……近い近いっ」
また涼香に顔を近づけながら彼はうん、と頷く。
「でもそれは鶴姫としての意志じゃないよね」
「ど……どういう事ですか……?」
「それはさっき涼香ちゃんが言ってただろ?」
さっき涼香が言っていたこと。
『小夕って巫女と松谷暁姫の魂の合体版みたい』
「……あ、まさか……その意志は暁姫の意志で……小夕の意志がまた別個に存在する……?」
「そうだね。多分小夕は大事な姫君を冷遇した村人が許せなかったんだろう。それで村人達にも同じ目に遭わせようと思った……しかし小夕は死んでしまい、暁姫と一つになったことで村人を殺さなければという意識が残った。その意識が暁姫の追っ手から逃れなければという意識と混ざって『追っ手を殺さなければ』という意識へと昇華してしまったんだ」
鼻先がくっつくような距離で彼はそう言う。
「それが……鶴姫が人を殺す理由?」
唯奈が問いただすと、竜哉は涼香から顔を離さずにそう、と肯定した。
「まぁ、二人の魂が融合した理由としては深層意識でシンクロしていた、と言うのがあるかもしれない。追っ手から早く逃げなければならないけれど、自分をこんな目に遭わせた村人が憎い。その意識が追っ手を殺してしまわなければならないと言う意識にすり替わったんだと思うよ」
「はぁ、……それで、鶴羽神社が若嶋神社になったあとも、菊納家が菊花学園に売り渡したあとも鶴姫はその土地に縛り付けられていたと」
明日華の相づちにも顔を離さずに彼はにやりと笑う。
「そういうこと。まぁ地縛霊みたいなものだからね、ついでに何らかの要因があって彼女の力の及ぶ範囲が校舎裏だけなんだろうけど、夕暮れ時に殺されたとおもってそういう光景を作りだしている、とも言えるかもね」
「そ……そうですね……あの」
やっとの事で涼香が言葉を絞り出すと、竜哉はなんだい、と微笑んだ。とても心臓に悪いのでいい加減に顔を離して欲しいのだが、その念は伝わらなかったようだ。
「いつになったら顔を離していただけるんでしょうか……?」
「う~ん、僕が飽きたら?」
にっこり、と擬音がつきそうなくらいに彼は笑う。ただでさえ近すぎる距離で話をしているのに、そんな至近距離で微笑まれたらどうしたらいいか反応に困ってしまう。
「いい加減離れてくださいってばっ!」
べり、と明日華が竜哉を引きはがした。
「顔があんまり近いとびっくりしちゃうんだから……」
「明日華、それだけじゃないからね」
「あはは、ごめんごめん、でも僕としては大まじめだったんだよ?」
彼の顔には反省の二文字すら書かれていない。本気であの所行をしていたというわけだ。
「そういえば誰にでもこんなことしてるんですか?」
「う~ん、まぁ大体そんな所かな。でもおでこをくっつけるだけだよ?」
「それ、彼女さんいたら大問題になりません?」
その瞬間、竜哉の表情が固まった。質問をした優もきょとんとしている。
「……」
その場を重苦しい沈黙が支配する。
「……?」
優が首を傾げた。唯奈が苦笑して口を開く。
「桃原さん、彼女さんいないのよ」
うわあ、と竜哉が身悶える。
「うわぁぁぁ、唯奈ちゃんどうしてそういうこと言うんだ~っ!」
「……だってあれでしょう?年齢=(イコール)彼女いない歴、っていうよくある……」
「よくあるけどね、初対面の女の子の前で言うことじゃないよっ!?」
「爽やかイケメンの第一印象が崩れるから?……むしろそっちを押し出した方が群がってくる女の子は多いと思うわ」
「いやでもさぁ!」
軽やかな漫才を繰り広げる二人を眺めつつ、涼香はふと考える。
(暁姫と小夕の意識が混ざり合って……だとしたらこれはもう警察の出る幕じゃないんじゃ……?)


あの眠れない子守歌が響いて幾日目でしょうか。私は久しぶりに夢を見ました。
子供達が輪になって歌っているのです。
かごめかごめと歌っているのです。
嗚呼、それはなんてほほえましい光景でしょう。私もかつてはあのように友達と遊んだものでした。
しかしそのうちに私は気付いてしまったのです。
目映いほどの子供達の笑顔は悪意に満ちていて、まるで私のことを嘲笑っているようでした。あんなに可愛らしい歌声も、私を呪い殺さんとする呪詛の響きに聞こえたのです。
なんということでしょう。
私がほほえましいと眺めていたものは恐ろしい餓鬼達の呪いの儀式だったのです。
ここは地獄なのでしょうか。
この世はみんな鬼達が呪いの儀式を行って生きているのでしょうか。
すると大きな鳥が現れました。
「ご覧お姫様、あの子供達が歌っている」
「あれは子供達なんかじゃないわ」
「では何に見える?」
「鬼よ」
「これは異な事。子供に罪は無いというのに」
「でもあれは子供なんかじゃない……あんなの、鬼よ!」
よろしい、と鳥は頷きました。
「では殺してしまうが良い。お姫様を殺した侍たちならばきっと鬼に違いない」
「……いいの?」
殺してしまえば私は殺人を犯すことになります。けれども鳥は平然とそれを勧めるのでした。
「なに、あれはお姫様を殺した侍達の幻よ。……殺した所で何の罪にも問われない。鬼達は永遠に出てくるのだから、その都度殺してしまうが良い」
「殺すって言ったって……」
殺すと言っても武器を持たないこの身では1人を縊(くび)り殺すのが精一杯でしょう。考えあぐねてふと自分の手を見ると、撫子重ねに包まれた手に何かを握っているのに気付きました。
「……?」
何かと思って握り拳を開いてみれば、それは白い折り鶴でした。雪のように真っ白で、所々に小さく亀の模様が織り込まれている美しい紙で織ってある、鶴でした。私の記憶が正しければ、そんな紙など見たこともありませんし、ましてやそんな紙で折り鶴など作ったこともありません。確かに私の家は小金持ちではありますが、後日どこの文房具屋に聞いてもそんな紙は取り扱っていなかったのですから。
けれども、私は知っていたのです。
その美しい紙を、私は見たことがあったのです。触ったことがあったのです。
そして、その折り鶴をどう扱えばよいかも知っていたのです。
何故だかは知りません。
けれども、その美しい折り鶴をどう扱えば次の瞬間に何が起こるかを知っていたのです。
「さあ、その鳥を使うがいい。その鳥はお姫様に忠実だ」
「わかっているわ」
そうして、私は折り鶴に息を吹きかけたのでした。

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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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