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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」20

予約投稿です。
とりあえず今回は長い。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


目を閉じてと言われて目を閉じ、涼香が再び目を開けたとき、目の前にはあのあやしい、いや、愉快な青年はいなかった。代わりに空と村が見える。
「ここは……」
自分を納得させる答えを出すのを、一瞬彼女は躊躇した。が、今一度思い直して答えを出した。
(そうよ、たしか催眠術とか言っていたじゃない。だから、これは……何の夢なの?)
けれど夢というにはあまりにも記憶になく、自分が寝ぼけて出した幻術とも思えなかった。なにしろ、こんなに意識がはっきりしているのだから。
「かぁごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつでやる?夜明けの晩に、鶴と亀がつぅべった、後ろの正面だぁれ?」
あの、すっかり馴染みになってしまった歌が流れてくる。時刻は夕暮れの少し前だろうか。子供たちが数人集まって、あの、昔懐かしいかごめかごめをしている。うーん、お君ちゃん、と答える声。あたり。
お君ちゃん、という女の子が中心にしゃがんで、再開したとき、あたりがかあっ、と赤くなった。夕陽が最後の光を投げかけたのだ。
かぁごめかごめ
籠の中の鳥はいついつ出やる
夜明けの晩に鶴と亀がつぅべった
後ろの正面……
その時、涼香は見てしまった。幽鬼と化した少女が、1人、悲しげに佇んでいるのを。その、だ、あ、れ、と歌った瞬間、少女が近づいて、ゆらりと右腕を真正面の子供の後ろ姿に差し伸べる。
「あ……!」
その瞬間、涼香は目を閉じて耳を塞ぎたかった。
けれど、体が金縛りにでも遭ったようにいうことを聞かなくて、全く叶わなかった。
少女の指先から放たれた鶴の嘴が、少女の前に立った幼女の胸を貫いたのだ。
他の子供たちも、後ろを向いていたお君も、弾かれたように悲鳴を上げて走り出した。
「鶴姫さま、許してっ!!」
鶴姫さま?涼香が金縛りから解放されて目を瞬いたとき、血を流したわけでもないのに白いセーラー服は赤かった。それを夕陽が染め上げたと気付くのに、少しだけためらった。
涼香の気持ちの問題だ。
あの時に戻っているはずはないのに。彼女にもよくわからない何かから逃げるように辺りを見回すと神社の境内があった。
近くにあったご神木に隠れて見ていると、緋袴を履いた二十歳くらいの少女(おそらく巫女だろう)が本殿から出てくる。
遠く、火がはぜる音が聞こえる。
ややあって、巫女が小さく声を上げた。何かを見つけたらしく、その声には驚愕の感情が多分にこもっている。涼香がつられて巫女の視線を追うと、涼香よりも幾分幼い少女が境内に駆け込んできた。
(あれが、鶴姫さま?……っていうか、伝説ドンぴしゃ?)
しかし巫女が口にした名はそれではなかった。
「暁姫さま!よくぞご無事で」
深く安堵に満ちた声色。暁姫と呼ばれた少女は巫女を一度抱きしめると、追っ手が、と一言洩らした。
「……村の者たちは……?」
巫女の問いかけに少女は首を横に振る。腰の辺りで揃えられ、汗で乱れた黒髪が揺れる。
「私を匿ってくれるところなど……有りはしないわ」
「姫様……」
「小夕(こゆう)、わたくしは家も失い、追われる身となって、どうすれば……」
2人は境内に歩いてゆく。
「尼におなりあそばしませ。まさか仏門に入りなさった御方には……」
言いかけて、巫女小夕は小さく姫さま、お逃げあそばしませ、と鋭く小さく叫んだ。追っ手が来たのだ。
「まさか、みんな殺された……とかそういう……ことなの?」
涼香の勘は当たっていたらしく、暁姫が裏切った者が……、と悲しそうに呟くのが聞こえた。
「松谷暁姫、観念なされよ」
「姫さま、お逃げください!」
追っ手の1人が厳めしく宣言し、小夕が金切り声で叫んだ。彼女が暁を神社の裏手に押しやるのを見て、追っ手たちがいきり立つ。
「構わん、巫女ごと殺せ!!」
姫が駆け出すと同時に、刀が巫女の胸を切り裂く。
真っ赤な鮮血が飛び散り、白装束を濡らす。
小夕は胸を裂かれたその瞬間に息絶えた。
暁姫は走った。
逃がそうとしてくれた小夕の気持ちに報いたかったからかもしれない。しかし姫の足ではそう遠くまでは逃げられず、まだ神社の敷地にいるうちに胸を貫かれて息絶えた。2人の血飛沫に、どこまでも平和に歌が被さっている。
「暁姫か小夕が鶴姫さまってことなの?」
2人殺されたのだから、少なくともどちらか一方が鶴姫さまとなるのが自然だろう。
「巫女と姫の体を城に持ってゆけ。後は公親殿にお伺いせよ」
そう侍が言った瞬間、何かが彼の胸を貫いた。涼香は息を呑んだ。暁姫と小夕の遺体から白い靄が上がり、合わさって1人の女となったのだ。侍たちは1人が死んだのを見るや否や、矢を射ったものの当たらず、結局全てが息絶えた。滝のような血が流れてくる。まだ、歌はやまない。
「この村は私を匿おうともしなかった……私が倒れようとも村人達は私を避けた……なんと心のないことよ」
女は何の色も映さぬ表情でそう呟く。ゆらりと白い衣が揺れる。血に染まった黒髪が揺れる。
「私が何をしたのか……どうして私は殺されたのか……」
ずるりと侍の死体の中から白い何かが顔を出す。頭の赤い、黒と白の鳥。
「……鶴?」
涼香の勘は当たっていた。女が鶴よ、と手を伸ばしたから。
「この社は鶴羽の杜と言うものね……」
鶴羽の杜。杜は社に通じ、ひいては神社と書かれる。それはまさしく鶴姫様伝説に出てきた、鶴姫様が死んだ神社であり、若嶋神社の前身、鶴羽神社のことだろう。
「我が名は今から鶴姫としよう……さぁ、お行きなさい……私を追うお武家様を根絶やしにして……」
鶴が飛んで行く。歌は止まらない。
かぁごめ、かごめ
籠の中の鳥は
いついつでやる
夜明けの晩に
鶴と亀がすべった
後ろの正面
だあれ……?
狂おしく響く夕闇の歌の正体を、涼香はむせ返る血の匂いのために遠のく意識の中で漸く知った。
(あぁ、かごめかごめだ……)

ふわりと意識が浮上して、涼香は現実に戻って来たことを知った。4つの顔が彼女の目をのぞき込んでいる。
「目が覚めたかい?」
ひどく悪戯な微笑みで怪しく愉快な青年、もとい桃原竜哉がカップを差し出した。ええ、まぁ、と答えて受け取る前に、明日華に纏わられた。
「目覚めてよかった……」
後の台詞は本格的に涙が混じって聞き取れない。なかなか離れようとしない明日華をそのままに、唯奈と優がねぎらいの言葉をくれた。
「やっぱり、学園の土地だわ。鶴姫様伝説の通り、巫女と姫君が殺されてる」
「鏡の時みたいな?」
唯奈の問いにええ、と答えて、カップの中の液体を煽る。アールグレイのミルクティーの香りが鼻腔を満たした。
「で、犯人は?」
「鶴姫さま」
「やっぱり?」
唯奈が問い返す。涼香は頷く。
「やっぱり。見てきた限りでは小夕って巫女と松谷暁姫の魂の合体版みたい」
侍も村人も揃って祟られてたわ。その言葉に、明日華がいやいやと首を振り、竜哉の陰に隠れた。
「明日華ちゃんはこのテの話が嫌いかい?」
彼のTシャツを握り締めたまま、彼女はまたふるふると首を振る。
「そういえば、怪談話した夜は泊めて、ってきてたわね」
涼香の台詞に、明日華があうぅ、と意味不明の呻きを洩らした。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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