FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」18

予約投稿による18話目です。お話がもっと大きく動きます。……あとツイッターにどう更新通知されるんだろうかとちょっと楽しみ。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

木で作ったヒトガタに、葉月は墨で七条葉月と書いた。それを持って裏庭に行き、事件現場を封鎖しているテープを何事もなかったようにくぐり抜ける。きょろきょろとあたりを見回して、一番日の射し込みそうな場所にヒトガタを置いた。
「この辺りでしょう」
そして、涼香たちへと向き直る。
「このままどこかで待ちます。付いていてくださっても結構ですし、そうでなくても構いません」
「……参考までに聞くわ。どうなってるの?」
「私の分身がここにいます。分身と鏡を通じてここを見守って、何が起きているのかを知りたいのです。私はまだ弱いので事があまり酷ければ私にも害が及びますが、殆どはヒトガタが肩代わりしてくれます」

結局夕方の教室に全員が集まった。涼香と明日華、それに葉月は楽器を鳴らして練習をしていたため、窓は閉め切ってある。
「七条さんはどうしてクラリネットにしたの?」
「お兄さまとお揃いがイヤなのです」
「え、七条先輩ってイケメンって評判じゃない」
「そうですか?……うちの神官や巫女の中では低い方なのですが……」
葉月が考え込む。
「ま、シスコンっぷりを見てればそうなるわよね」
「あ、なるほど。男の人は顔じゃないものね」
「お兄さまが私の異性交友関係にまで口を出すことではないのです。それにそろそろ妹離れしていただかなくては……」
普段何を考えているのか分からないだけに、涼香にとっても饒舌な葉月は珍しい。
「いろいろあるのね……」
唯奈がぽつりとつぶやいた。
「ほかには何か楽器とかやってるの?」
「龍笛を少々」
「なるほど……」
そんな他愛もない話をしながら時間は過ぎてゆく。ふと葉月が話を切って窓の外を見ると真っ赤な光が射し込んでいた。
「おかしいと思いませんか?」
「え?」
「この時間帯、休日はどうでしたか?こんなに日が傾いていましたか?」
葉月の顔はあくまでも厳しい。
そう言えば7月はここまで日が沈んでいただろうか。もっともっと高い所にいて、もう少し経ってから沈んだような気がする。
ならば、何故?
「件の鶴姫様とやらが取り違えている……ううん、意図的に夕焼けを演出している……?」
「おそらくは。……死んだ鶴姫が魂となって見たのは、おそらく夕焼けだったのでしょう。だから、彼女は自分が夕焼けの中で殺されたと思いこみ……この周りの世界を夕焼けにした、といった所でしょうか」
「じゃあ、何が目的なの……?」
「……殺すことでしょう。彼女を死に至らしめた全てのものを……」
そんな、と唯奈が声を上げる。
「高見さん。彼女はもう、世の範など届かぬところにいるのです。……彼女は、今自分が何を殺しているのか、正確に分かっていません。いいえ、それどころか……鶴姫という存在は……」
一旦葉月が言葉を切る。太陽の最後の命の灯が燃え上がる。
――かぁごめ、かごめ
差し込む光が全てを赤く染め上げる。
――かぁごのなぁかのとりは
木々を揺らしていた風が凪ぐ。
――いついつでやぁる
「これは……何……!?」
――よあけのばんに
――つぅるとかぁめがつぅべった
ぞくりと背筋を冷たい汗が流れ落ちる。ただの、他愛もない歌声。それなのに、歌声に籠もる心はどこまでも負の感情に満ちていて、まるで何かを呪い殺そうとするかのように恐ろしい。
――うしろのしょうめん、だ あ れ ……?
「……っ!」
葉月が首筋を押さえて蹲る。
「葉月ちゃん!?」
「……大丈夫、です……ほんの少しだけ……力が足りなかっただけですから」
抑えた白い指の隙間から、血がじわりとにじみ出す。
「大丈夫じゃ……無いじゃない……!」
「……?」
涼香が思わず漏らしたその一言に葉月はきょとんとこちらを向いて、それから唯奈に自分の携帯電話を寄越すように指示をする。唯奈が放った携帯電話をキャッチすると、迷わず香月に電話する。
「あ、先輩ですか?室宮です。……救急セット持ってきてくれますか?……はい、2年A組の教室です。……ええ、ちょっと……急いでください、葉月ちゃんがケガをしちゃったんで……ええ、はい。じゃあ切りますね」
電話を切ると葉月が恨みがましそうな目で睨む。
「涼香……何でお兄様に連絡するの……」
「香月先輩がシスコンなのは分かるんだけど……背に腹は代えられないでしょ?」
「だからってお兄様に頼まなくても……」
彼女は首筋を押さえたままぶちぶちとぼやく。仕方のないことだとは思うが、そんな状態の葉月に言われたくないなぁとも涼香は思う。
「首から血ぃ流してぼやく事じゃないでしょうが」
ばん、と音を立てて扉が開いて、水干を纏った青年が駆け込んでくる。七条香月だ。だらだらと汗を流している割には救急セットをきちんと小脇に抱えている辺り、着替える間もなく走ってきたに違いない。
「あ、香月先輩」
「葉月は!?」
「そこです」
「帰ってください」
葉月が冷たく切り捨てると、香月がしゅんと項垂れる。兄に背を向けたまま、彼女は言葉を絞り出した。
「すみません……失敗してしまいました。でも……きっと分かるはずです。鶴姫は……まだこの世にいるのです」
「……」
鶴姫様がやはり実在した。鶴姫の魂はまだこの世を彷徨っている、と言うことか。香月が妹の傍に歩み寄る。
「葉月」
「……はい」
「いつまでも首を押さえていないで、手当をしなさい」
救急セットを机の上に置いて、彼は葉月の手を外させる。そして傷口を涼香達に見せる。
その傷口は何か鋭利な刃物にでも掠ったかのように皮膚がぱっくりと裂け、真っ赤な血が溢れ出ていた。香月が溜息を吐く。
「……葉月」
「はい」
「僕が気にならないとでも思った?」
「……ええ」
「気になったさ。……それ以上に、葉月が室宮さん達を巻き込んでこんな実験をすることも分かっていた。……だから鏡で見てたよ」
ふ、と葉月が顔を上げる。
「鏡で……」
「うん。室宮さん達も見るかい?」
香月がこちらを向いた。
「あ……はい」
頷くと、彼は救急セットの箱の中から金色の龍の縁取りのついた鏡と、それを立てかける脚を取り出す。
「え……救急セットじゃないんですか?」
「うん。今日は何人か神社に詰めてるからこれをちょろまかしてくる余裕が出来たんだ」
「……そうですか」
さて、と香月は鏡を組み立てると、袂から幣束を出して鏡に向けて左右に振る。
「これからその様子を映すから」
「は、はあ……」
彼が鏡に向かって何事か唱えると、鏡が淡く光る。そして、次に見えたのは夕暮れの……裏庭だった。
葉月がじゃりじゃりと砂利道を歩いてゆく。すると、小学生ぐらいだろうか、着物を着た子供達がまとわりつく。
『あそぼ』
『……良いでしょう』
『じゃあ鬼ね』
『……はい』
子供達は円陣を組んで、葉月はその真ん中にしゃがむ。ざざ、と子供達の歌声にノイズが混じる。
「くそ……っ、やっぱり聞こえないか……?」
『……ご……の……は……い……』
「五の杯?」
「ノイズ混じりで聞こえませんね……」
ノイズが混じりながらも歌は続く。そして、鏡の中の葉月が立ち上がると、見る見るうちに子供達は白い着物を纏ってゆき……ついには変化した。
「これは……鳥?」
「鶴……かな」
ざざざざざざざ、とノイズが歌のほとんどを支配する。白い鶴となっても子供達はまだ歌い続け、ついには鏡の中の葉月は困惑したように首を傾げる。
『……何……?』
ふふふ、と笑い声が聞こえる。弾かれたように彼女がそちらを向く。
『誰です!?』
『分かっていらっしゃらないのですね……』
『……何を?』
鏡に映らずに女の声が響く。
『私を殺したのに……何故私が殺されなければならなかったんですか?』
『私に言われても分かりません』
『そうですか……?』
『ええ……ですがあなたを見逃すことは出来ません!』
白い手が翻り、何かを声に投げつける。
『また私を殺すのですね……!』
女の怨念に満ちた声がしたかと思うと、ひゅん、と風を切る音が聞こえた。ぱっと赤い飛沫が舞って、鏡の中の葉月は倒れ伏す。その首筋は何者かに切り裂かれ、そしてその凶器は優雅に空を舞いながら鏡の外へと飛んで行く。
『いい子……』
さら、と黒髪が画面を舞う。葉月の黒髪よりも長く黒々としていて、重たげな髪。さらりと衣擦れがして赤と紫の着物が画面にちらりと現れ……消えた。
「……どういう事……?」
「……そう言うことだよ」
香月が鏡を脚から外した。
スポンサーサイト

テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

最近の記事
これ以外にも、NOVEL INDEXを随時更新中です。
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
二次創作は「その他創作」からどうぞ。
FC2カウンター
FC2カウンターおんらいん
現在の閲覧者数:
無料カウンター
ブログランキング
FC2 Blog Ranking にほんブログ村にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説にほんブログ村 ホラー・怪奇小説 長編小説 air-rank
サーチ様
検索エンジン Mono Search
ブログ開始から何日経った?
ブログ内検索
リンク
相互リンクサイト様、素材サイト様、管理人別サイトの紹介です。
このブログをリンクに追加する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。