FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」17

さてさて、縁側日記も17話目です。今回お話が動きます。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

授業は昼で打ちきりとなり、生徒達は下校していった。けれどもどうしても納得がいかなくて、涼香は屋上へと上がっていく。
千川薫の死因は橘川里流や烏丸洋子と同じく頸動脈裂傷による失血性のショック死。血だまりの中に倒れていて、やっぱり周りには羽が落ちていた。
けれど、薫は葉月からお札をもらっていたのではなかったか?あのお札をもらってから歌声が聞こえなくなったと言っていなかったか?
では、何故?
ぐるぐると回り続ける思考回路を一旦リセットするために屋上へと向かう。
ドアを開けるとそこには先客がいた。
長い黒髪をサイドアップに結い上げ、流れる髪を肩口で結んだ女生徒。
「葉月……ちゃん……」
七条葉月がぺたんと屋上の床に座り込んでいた。彼女はこちらに背を向ける形で体育座りしているため、どんな表情をしているのかは分からない。ただ、時折揺れる肩が彼女が静かに泣いているのだろうと想像させた。
(似てる……)
既視感(デジャヴュ)を覚えて涼香は慌てて頭を振る。そんなはずはない。
けれど、葉月のその姿は絵になりそうなほどに美しかった。
(タイトルを付けるなら……『静寂』……?)
許されるならばこの場でこの光景をカンバスにそっくり写し取ってしまいたい。黒く艶やかな髪に夏の爽やかな日差しを受けているのに、不釣り合いなほどに沈んでいる少女。青い空が白みを帯びたコンクリートに反射する。照りつける日差しは強いのに、その場には蝉の鳴き声だけしか音はない。その静寂をカンバスにそのまま貼り付けたいのだ。
けれども今はその時ではない。一刻も早い事件の解決を願うなら、動かなければならない。だから彼女のそばへ行く。
「葉月ちゃん」
「涼香……」
振り向いた葉月はもはやいつもの彼女ではなかった。いつもの寡黙で大人びた雰囲気はどこにもなく、迷子になった幼子のように目に涙を溜めている。
「お札を渡したのに……渡したのに……」
「うん……」
けれど彼女はそこで乱暴に涙を拭い、立ち上がる。
「……私の力がなかったのか、それとも他の原因があるのか……いずれにせよ、私は首を突っ込んでしまったのですから手を引くわけにはいかないわ。……手伝って」
葉月は強い。本当に強い。涼香は彼女の凛とした姿勢に少しだけ驚きを感じる。そして、彼女の想いを受け取る。だから、頷いた。
「……ええ」

「涼香、どこ行ってたのよ」
葉月を伴って教室に戻ると、近くのファストフード店で買ってきたと思しきナゲットを囓っていた明日華が寄ってきた。
「ちょ、あんたお昼食べたでしょ?」
「ん~……でもお腹空いちゃって」
えへ、と彼女が笑う。葉月が心配そうな声を上げた。
「……神城さん、あまり食べ過ぎると体に悪いですよ」
「ん……でも、いいんだ」
葉月が首を傾げるのを制して、涼香は明日華に尋ねる。
「唯奈と優は?」
「あ~、二人ともコンビニ。みんなでお茶しようかと思って」
「……あそ。悪いけどお茶はあとよ」
短く告げれば明日華はにやりと笑って頷いた。
「そのために葉月ちゃん連れてきたんでしょ?」
「ご名答」
葉月が軽く会釈をした。

コンビニに菓子類を買い出しに行った唯奈と優の帰りを待ってB組の家捜しを決行した。ろくろく掃除もせずに帰っただけあって、教室には色々なものが散乱している。
「あ、ラブレター発見」
明日華が便箋を摘み上げる。唯奈と優が両側からのぞき込む。
「教室に落とすなんて……差出人は公開処刑ものじゃない?」
「そうねぇ」
「封は切ってあるの?」
涼香が尋ねると明日華は首を横に振る。
「切ってない。……あぁ、なるほど、男の子から女の子ね。えーと……宛名は桜野綾、差出人は紺野健……へぇ」
「空けない方が良いわね……あ、シャープペン。製図用のやつね」
「こっちは三角定規とかあるわよ~」
文化祭の前だからかは知らないが、とにかく教室は汚い。ラブレター云々を抜きにしても文化祭関係の小物が散らかっているので迂闊にさわれない。
「葉月ちゃん、どう?」
「色々なものが散乱しているので探しづらいですが……何か、手がかりがあるかもしれません」
「そう」
そのまま葉月に探させておいて、涼香はふと首を傾げた。
(そういえば七条兄妹は千川さんを見たときになんて言ってたっけ)
確か、何もないと言っていたのではなかったか。千川薫以外の何者も彼女の器の中には入っていないと言っていたはずだ。
それが見間違いだったのか。
いや、そうとも限らない。何せ七条兄妹の家は若嶋神社。鶴羽神社の後継だ。若嶋の子供は生まれたときに若嶋神社からお守りを貰っているのだから、間違えたとは考えにくい。
では、わざとそんなことを言った?
まさか、そんなはずは。そう考えて、涼香は考え込む。そう言えば鶴姫様伝説の中に巫女が出てこなかったか。若嶋神社の神職―七条香月と七条葉月だ―は鶴羽神社の神職の後継だと千川薫が言っていたではないか。鶴姫様伝説で巫女が殺されたか何かで、巫女を失った七条家が末裔の二人に若嶋の子供を殺させた?
まさか、と涼香は首を横に振る。荒唐無稽も甚だしいからだ。香月も葉月もそんな昔の伝説に踊らされるものか。
「……これは……」
葉月がふと立ち止まる。その視線の先には一枚の紙切れが落ちていた。
「これ、お札?」
「ええ……私の……差し上げた……」
「無理やり取られた、って感じじゃないわね。自主的に置いていった?」
「そうかもしれない……葉月ちゃん?」
葉月は目を伏せて床に転がったままの札をじっと見つめていた。いや、見つめていたというよりは睨みつけていた、という方が正しいか。
「葉月ちゃん?」
「……お兄様と、千川さんのお宅に伺いました。そこにも、何もなかったのです。人数分の気配以外は感じなかったのです」
葉月の声は泣きそうだった。
いつも淡々として、何事にも動じない彼女が見せた感情の揺らぎが物珍しかったが、それだけ気にしていることなのだろう。
「私たちは……分かるから」
「……ありがとう」
お祓いは気休めだと聞いたことがある。
確かに清めの札でなにも起こらないのなら超能力と言うべきかもしれない。
しかし、涼香たちは知っている。この世には科学だけでは証明できないものがある。
鏡が人間を飲み込むなんて、科学者の誰が証明できるだろう。けれども菊花学園にあった鏡は人を吸い込んだ。
それと同じように七条兄妹の祓えの力を、誰がインチキだと否定できるだろう。
これまで辛いことがたくさんあったのかもしれない。インチキだとあざ笑われたことがあるのかもしれない。
葉月の礼の言葉には、幾色もの感情が混ざっていた。
「……ヒトガタを使ってみます。何かわかるかも」
「ヒトガタを?」
「ええ。きっと、向こうには人に見えるはず」
スポンサーサイト

テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

最近の記事
これ以外にも、NOVEL INDEXを随時更新中です。
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
二次創作は「その他創作」からどうぞ。
FC2カウンター
FC2カウンターおんらいん
現在の閲覧者数:
無料カウンター
ブログランキング
FC2 Blog Ranking にほんブログ村にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説にほんブログ村 ホラー・怪奇小説 長編小説 air-rank
サーチ様
検索エンジン Mono Search
ブログ開始から何日経った?
ブログ内検索
リンク
相互リンクサイト様、素材サイト様、管理人別サイトの紹介です。
このブログをリンクに追加する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。