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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」16

テスト終わりました。と言うわけで続き。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


そんなある日のことでした。いつものように私が床につこうとすると、どこからともなく唄が聞こえてくるのです。
それは幼い頃に歌ったような懐かしい歌。
けれどその声は耳に心地よいものではなく、頭にがんがんと響くほどの大声で無遠慮にがなり立てるのです。
懐かしくともこんな歌声を聞かされては寝るどころではありません。
私に何の恨みがあってこんな事をするのでしょう。
迷惑なものだと私は毎晩耳栓をして眠れぬ夜を過ごすのでした。


「もう、殺人事件が起こったばっかりなのに文化祭の支度なんて……」
彼女はぶつぶつと呟きながら布をちくちくと縫っていた。秋にある文化祭の支度だ。6月頃から始めていたのだが、殺人事件で色々と立て込んでしまって現在急ピッチで進めていた。彼女が今縫っているのは演劇の舞台衣装。
「家でやるのもなんだか忘れそうで嫌だし……」
本当は家で作業をしても良いのだが、縫ったものを忘れるのが嫌だという理由でちくちくと針を無心に刺していた。
烏丸洋子と橘川里流は同じ子供会の班だった。随分と仲良くしていたものだ。彼らが殺されたということで、本当は彼女だって気が気でないに決まっている。けれどもその怖いのを我慢して作業をする。けれどもその怖さが雑念の余地を許す。
(鶴姫様が本当に殺したのかしら。それとも誰か他の人間?でも……)
いや、ばかばかしい、と彼女は首を横に振る。
(鶴姫様なんて伝説なんだから!)
そう、伝説。ただの伝説。
そうに決まっている。
ふ、と教室の外に目をやる。赤い赤い日差しが校舎内に差し込んでとても綺麗だ。
そして、彼女は思う。
(あぁ、行かなきゃ……)

赤く赤く染まった光が裏庭を赤く染め上げる。
「いい子……いい子ね……」
着物の少女は鶴にぴたりと寄り添った。こんなに赤く染まった空では、逃げることも出来やしない。鶴の羽をそっと撫でて、砂利道を伝う水に指を浸す。
「あぁ……赤いわ。まるで血みたいに赤い。綺麗でしょう?」
鶴は彼女に寄り添ってゆっくりと座る。白い羽が水に汚れていく。
「いい子……一緒にいてくれるのね?」
かつて少女が口にした言葉。どのような光景で口にしたのかは覚えていないが、それでも唯一懐かしむ縁(よすが)の言葉。彼女が口にした、温かい言葉。
鶴たちが空を舞って彼女の傍まで降りてくる。
彼女が親しめるものは今となっては鶴のみ。けれど彼女はこの光景をとても気に入っていた。
「夏が終われば此の地は私への贖罪を終わらせる……そして私はまたここに閉じこめられる。……あぁ、あと何年必要なのかしら……」
彼女に仇なす者たちをすべて打ち払うにはどうしたらよいのだろう。少女の目には、既に現在の光景は見えていない。
光を無くした瞳は、彼女の時を止めてしまったのだ。
本来ならば彼女はここにいるはずのない者。本来ならばその肉体さえも存在するはずのない者。
それはとうの昔に分かっているけれど、彼女は認められなかったのだ。
ただ、今際の際に抱いた感情故に。
じわりと単衣の胸元を血が濡らす。古傷が鋭い痛みを伴って疼く。
「私が飽きることはないわ……そうでしょう?」
1人小さく呟くと、鶴は頭を垂れて彼女にすり寄った。
「いい子ね……」
頭を撫でて、少女は単衣の袖で口許を抑えて咳をする。喉元を伝って、何か液体が逆流する感覚。それを単衣に吐き出すと、そこにはまるで夕日のように赤い水が単衣にべったりと付いていた。それは、紛れもなく彼女の血。
「……あぁ、私は……もう長くはこの世にいられないのかしら……?」
悲しいわけではない。
悔しいわけでもない。
そこに存在するのは、ただの未練。
「また……私は探さなければならないのかしら……」
あの人達はもういないのに。
ざり、と砂利を踏んで彼女は赤い水たまりに近づく。溢れ出る水を人差し指で掬って、唇に塗りつける。
水たまりに映った顔は紛れもなく、彼女の死に化粧だった。

こつん、と靴底がアスファルトを踏みしめる。彼女は兄のほうを振り返った。
「こちら……のようです」
「うん」
兄は神妙な顔をして首を捻った。
「お兄様?」
「……おかしいな……」
「……おかしい?」
兄はよく考えてご覧、と諭すように言う。
「校内にも気配はないし、この家にも気配はない。その上依頼者にも気配はなかった。……ヒトガタかな?」
「ヒトガタ……ですか……それは……可能性はありそうですが」
けれどもそれでは彼女の中に疑問が残る。
「どうして同じように殺されるのです?それも同じ時刻に」
「二人は偶然だったかもしれない。……憶測だけれどね」
「そう……ですね」
その可能性を忘れていたとは、なんて失態。彼女は兄に見られないように唇を噛んだ。
ざぁ、と生ぬるい風が吹く。彼女の髪とスカートを揺らして、湿った風は吹き抜けてゆく。
「……帰ろう。みんな心配しているよ」
「……ええ」
まだ6時だというのに夏の空は明るかった。

翌朝、女生徒の遺体が見つかった。
女生徒の特徴はロングの黒髪。規定の丈のスカート。そして、割れたノンフレームのオレンジ色の眼鏡。
当然憶測が飛び交う。
女生徒のクラスを除いては、誰だ彼だと冗談半分の噂が飛び交った。
「ねぇ、これ、やばいんじゃない?」
「……う~ん……」
明日華の囁きに涼香は首を捻る。確かに犯人を刺激しかねないぐらいの噂である。勿論自分の存在を轟かせたいだけであればさぞかし気持ちがいいだろうが、そうでなければ広まってしまった事件に焦って、口封じの一つでもしたくなるに違いない。
「3丁目の角を曲がった……ってレベルじゃないわよね」
「ないわね……」
気になることは山積みだけれども、まずは誰が殺されたかの特定が先だろう。
「ちょっと情報収集してるから、何かあったら呼んでね」
そういって唯奈が携帯電話を弄り始めたその瞬間、鈴山教諭がタイミング良く入ってきた。
「あ~……諸君も今朝の件で聞き及んでいるとは思うが、本校の裏庭で見つかった遺体の身元が特定された」
「!」
身元特定。唯奈はぱたんと携帯電話を閉じてポケットの中にしまう。身元確認の情報を探る必要がなくなったからだ。
「被害者は本校2年B組に在籍していた生徒で、昨日の放課後から行方不明だった」
前日の放課後から行方不明。2年B組。
嫌な予感が駆けめぐる。
いや、でも、そんな。だって、彼女は、彼女には。
「千川薫さんと特定した」
(嘘……っ、葉月ちゃんの、お守りは……!?)
涼香の頭の中が一瞬にして真っ白になった。

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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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