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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」15

さて、続きでございます。う~ん、何というか……いろいろと凄まじいです。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

放課後の図書館は閉館間際なせいかがらがらに開いていて、レポートの資料を探す大学生がちらほらと見えるのみであった。その中に混じって若嶋の本を探す。
「これかな?」
明日華が適当に取った一冊をのぞき込む。
「へぇ……旱魃なんてあったんだ」
「時代が奈良だもの、あったって不思議じゃないわ」
「なるほど」
四人は手分けして手当たり次第にぱらぱらと捲る。
「鶴姫様は室町後期のお姫様……になるわね。ちょうど上総か何かのお姫様じゃない?」
「そうみたい。……室町前期だとまだ神隠しというか殺人事件は起こっていないし」
ごにょごにょと小声で密談する涼香達を近くの書架で本を読んでいた大学生が不思議そうに見やって通り過ぎる。
「村人の不審死は室町後期……あ、鶴姫様事件の時に巫女さんも死んじゃったんだ……ほら、お骨を丁寧に葬った、って」
「あ、ホントだ……でも鶴姫様って何なのかしら?」
「それが分からないよね……」
四人が四人首を捻り、仕方がないので数冊本を借りる。
「テスト、ホント終わってて良かった……」
涼香がぼやくと、優が頷く。
「ね。勉強とこれを平行って出来ないもの」
やっぱりねぇ、と溜息を吐いていると後ろから不意に声を掛けられる。
「あら、みんなどうしたの?」
「え……?あ、か、籠原先輩!」
籠原雅はクスリと笑って、どうしたの、と再び尋ねる。
「ちょ、ちょっと調べたいことがありまして……」
「そう。……若嶋の歴史?」
「はい」
そう、と雅は答えて、また優雅に笑う。
その笑みが、不穏に見える。
「ねぇ、鶴姫様の伝説って、本当はなかったんじゃないかしら?」
「……どういう意味ですか?」
涼香の問いに彼女は首を傾げる。
「だって鶴姫様のことを記した文献なんて見たことがある?ないでしょう?」
それは、と唯奈が言葉に詰まる。
「それなら鶴姫様なんていないのよ。鶴姫様なんて旱魃か何かで村がやられた村人たちが勝手に作り出した幻想だわ」
「そんなわけ、ないです!」
優の勢いづいた否定に雅はあら、と声を漏らした。
「そうかしら?若嶋には現に旱魃の時期があったわ」
「それは私たちも見ましたけれど、時期は鶴姫様伝承の時期とかぶっていません。それに、現に村人の不審死は文献にもあります。それをどう説明しますか?伝承と同じ死に方で、死体は誰かに食われたり肉を切り取られたりした跡なんてありませんでした」
「それに、若嶋神社の前身・鶴羽神社はどうして潰れたんですか?鶴姫様伝説の引き金がその神社でしょう?」
雅の顔が少しだけこわばったような気がした。
「ねぇ、室宮さん」
けれど次の瞬間、彼女はいつもどおりニコニコと微笑んでいた。それがなんだか気に食わなくて、涼香は少しだけ睨み返す。
「……なんですか」
「私があなたを憎らしいと思ったら、ここから立ち去ることができるわよね」
「……ええ」
立ち去りたいのなら勝手にすればいい。涼香はそう思うのだが、雅はそうでもないらしい。
「私がそうしないのはどうしてだと思う?」
「唯奈に示しがつかないからですか?」
「違うわ。あなた達がどうしているかどうかもわからない鶴姫様なんて信奉しているのか興味がわいたのよ」
「それならご自由に」
素っ気なく返しても、雅はニコニコ笑ったままで立ち去ろうとしない。
「あなたたち、生まれはここなの?」
「代々、じゃないですけど」
「うちもです」
「出身はここですけど、両親が結婚してから越してきたようで」
「私もです」
「そう、それなら鶴姫様なんかいない、ってどうしていわないの?ばかばかしいだけでしょ?若嶋出身の私でさえそう思うもの」
「籠原先輩、それは悪魔の証明です」
悪魔の証明。所有権帰属の証明の困難性を比喩的に表現した言葉であり、全称肯定命題(又はその対偶としての特称否定命題(すなわち消極的事実))の証明の困難性を比喩的に表現した言葉である。
一般的には「無いものの証明」の困難さを表す語として使われ、「無いもの」の立証の困難さを比喩的に示している。
鶴姫様を存在すると言い張り、その立証を試みるのであれば、鶴姫様をこの場に引っ張ってこなければならないだろう。そうすれば鶴姫様はいるということになるが、そうでなければただの可能正論でしかない。
「喩えでいいますが、先輩は小さいころ、月にウサギがいると思ってませんでしたか?」
「ええ、思っていたわ」
「では、今はどうですか?」
「今?そんなものはいないと思っているわ」
「どうでしょう。月にウサギがいないのは地球に向いている面だけで、裏側には住んでいるかもしれませんよ?」
「ありえないわ。月の環境からして無理よ」
「地球だって生物が住めない時期なんていくらでもあったじゃありませんか。そういうのに適応することだってできるかもしれませんよ?」
「月に行った宇宙飛行士の映像を見たわ。でもそこにはいなかった」
「宇宙飛行士が月の全土を歩き回ったとお思いですか?」
唯奈がゆっくりと進み出た。
「先輩。では私からお聞きします。なぜ先輩は月にウサギがいるかもしれないという可能正論すら否定するのですか?」
優雅に笑っていた雅が不意に俯いた。長い髪で顔が隠されて、表情は見えない。
「先輩?」
「っふふ……うふふふふふふ……!」
「……?」
呆気にとられる涼香達を余所に彼女は肩を振るわせて笑い始める。
「うふふふ、面白いわ、本当に面白いわ!そうよね、想像力はあるに越したことはないものね!」
「……先輩?」
雅は心底おかしそうに笑っていた。滲む涙を拭ってまで尚笑い続ける。
「……ふふ、可能性論に持っていくなんて面白いわ」
「……はぁ……」
でもね、と彼女はまた微笑んだ。
「鶴姫様なんて真っ赤な嘘よ。自分たちの所為でお姫様が死んだのを村人達が気に病んだ……本当に真っ赤な嘘」
横をすり抜けて図書館に入っていく雅を呆然と見送ってから、涼香達は家路についた。
(鶴姫様なんて真っ赤な嘘……か)
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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