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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」14

さて、14話目に突入しました。今回短い話が少ないのであと少しで終わるかなという印象です。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


大きな鳥は言いました。
お姫様、お前はこの器を非常に気に入っていらっしゃる。
私は答えます。
だって生まれたときからこの身体だったんですもの。気に入るも何もないわ。
大きな鳥は言いました。
お姫様は物好きだ。わざわざそうまでして肉の鳥籠に囚われたいとは。
私は答えます。
だって身体がなければ不便でしょう?
大きな鳥は言いました。
お姫様はそう思うのか。しかし我らには身体はない。
私は答えます。
でもあなたは動いていられるでしょう?それだって私の胸先三寸であなたの本当の姿に戻せるのではなくて?
大きな鳥は言いました。
そうさ、お姫様さえその気になれば我らはたちまち鳥ではなくなる。よく分かっていらっしゃる。
そうして、大きな鳥はまた笑うのでした。

翌朝、橘川里流が烏丸洋子と同じように絶命しているのを、訳あって早く登校してきた田原朝子が発見した。
死因も、現場の状況も、全く同じ。
頸動脈裂傷による失血死。
被害者の近くに落ちているのはやはり鳥の羽。
死亡推定時刻は前日の夕方。
雨の中、倒れ伏した里流を乗せた担架に縋り付いて号泣する彼女を人混みに紛れて眺めながら、涼香は明日華の手を引いて教室に戻った。
「……明日華」
「うん」
「……私たちには、関係ないでしょ?」
できるだけ彼女の顔を見ないように、そして自分の顔を見られないように歩く。
「……うん」
「戻りましょ」
教室に戻ると烏丸洋子のときと同じようにクラスメイト達はその話で持ちきりだった。席に着くと、唯奈が見てきた?と耳打ちしてくる。
「見たわ」
「そっか……本人、だった?」
「……多分。彼女さんが泣きついてたし」
「……そっか」
優が目を伏せる。
「先輩、殺されちゃったんだ……」
「……みたいね」
気の利いた言葉なんてかけられるはずがなくて、涼香はそれだけを絞り出す。
「ポチとかエリザベスとか、そんな噂で持ちきりだったからさ、またガセネタかと思っちゃってた」
「……そっか」
明日華が目を伏せる。重い沈黙が、彼女たちの周りだけを包み込む。
その沈黙を破ったのは、本当に微かな声だった。
「橘川先輩……なんで先輩が殺されたんだろう」
「……」
優がぽつりと零した一言に、涼香は唇を引き結んだ。本当に、どうして。最後にあった橘川里流は、快活な笑顔で挨拶してくれた。好感の持てる、いい人だったのに。
「ねぇ、橘川先輩、彼女さんと一緒に帰らなかったのかしら……?」
「ん……喧嘩でもしたのかしら?」
まさか、と優が苦笑する。
「あれで喧嘩って凄いじゃない?」
明日華がふと、顔をしかめた。
「どうしたのよ?」
「ううん、でも……彼女さんがやったんじゃないよなぁ、って」
「それこそまさかよ。説明が付かないところが多すぎるわ」
「鳥の羽が氷の結晶、なんてのがミステリーでは出てくるんでしょうけどね~……」
「でもそんな繊細な細工ならすぐにバレちゃうわ。それに今回の事件も数年前の失踪も同一人物が行ってるかもしれないし、彼女さんが犯人ならいったい幾つよ?っていう」
優が明るく笑い飛ばす。涼香も頷いた。
「違いないわね。何をどうしたら18歳に若作り出来るのよ、ってことになるわね」
「動機も分からないもんね」
そう。
仮に生きた人間が犯人だとして、動機が分からない。
烏丸洋子と橘川里流の間にはなんの関わりもない。
せいぜい同じ若嶋に先祖が住んでいた、というだけだ。
部活も違えば学年もクラスも違う。委員会だって一緒になったことはない。連続して殺す意味がない。
その犯人を田原朝子に仮定したとして、それが解決するはずもない。
けれど、彼女が犯人の確率は高くならざるを得ないだろう。
何故なら、田原朝子は橘川里流を最後に見た人物であり、第一発見者だからだ。
だが、である。
「彼女さんが烏丸洋子を殺した、っていう証拠はどこにもないでしょ?」
「ないわね」
現時点では上がってきてはいない。
「もし若作りしてたとしてさ、鶴姫様伝説を装う必要があるの?」
「う~ん……」
そこが分からない。人を殺し、すぐに消える鳥の羽根をまく。それは割と重労働なのではあるまいか。悲鳴を上げない被害者なんて沢山いるが、何らかの脅迫をして呼び出した形跡はない。その上、橘川里流は帰ろうとしていた。
つまりは来るか来ないか分からない、いわば賭けのような殺人だったと言える。
そんな分が良いのか悪いのかも分からない事に賭けるなんて、得をするのは鶴姫様本人ぐらいだろう。
(え……?)
「鶴姫様本人以外に得する人物はいない……!?」
「ど……どういう事……?」
「まさか……」
(この事件は……)
そこまでみんな考えて、唯奈がふと時計を見た。そして素っ頓狂な声を上げる。
「クラスにみんないないけど、今8時15分!」
「……え?」
「一限始まっちゃうっ!」
涼香もまさか、と時間割を確認する。血の気がざっと音を立てて引いた。
「嘘~っ!?教室だと思ってた!」
4人は泡を食って立ち上がった。

突然だが、私立菊花学園高等学校の二年A組とB組の本日一限目にある科目は体育である。
今の季節はその暑さに有効なスポーツが行われる、はずである。
水泳。
それは真夏の太陽の下でこそ最も楽しめるスポーツであり、決して気温が十数度の雨の降る一限目にやるスポーツではない。
雨が降ったら当然中止、水温が低ければ当然中止になるはずである。……高校に上がるまでは、涼香も当然そうだと思っていた。
が、本日は雨。
ついでに気温も水温も低い。
そのコンディションの中で、体育科担当の東野教諭と西川教諭は非情にも水泳続行を指示したのだった。本日は夏休み前の最後の授業とあって、メドレーのタイム計測というなんとも残念なメニューである。
沸き上がる大歓声、ではなく大ブーイングをよそに西川教諭は予定を大幅に遅らせたチャイム五分前に授業を終えたのだった。
「体育が長引くって本当何なの!?」
廊下を駆け抜けながら涼香は腹立ち紛れに呟く。
「やっぱり寒いよね~……雨ならやめてほしいなぁ」
優が腕時計を見て嘆く。次の授業は古文。担当は鈴山教諭だ。
「あと五分だよぅ……」
ため息をつく明日華に、神城さん、と声がかけられた。
「はい?」
くるりと彼女が振り向いた方を見やると、そこには眼鏡の少女が立っていた。
「千川さん……」
「お久しぶり。これ、落としたよ」
「きゃあ、ありがとう。髪ゴム落としちゃったのね」
「どういたしまして。それと、この間はみんなありがとう。最近歌声も聞こえなくて、よく眠れるわ」
「良かった。お礼は葉月ちゃんに言って。あの子、本当にすごいなぁ……」
葉月の力が薫を幸せにした。それを見るだけで素直にすごいと思える。
「言ってきたわ。七条さんって、一体何者なの?」
「若嶋神社の娘じゃないの?」
「若嶋神社……」
「どうしたの?」
「ううん、これは家にちょっと伝わる話なんだけど、あの若嶋神社って元は出雲のほうの神官が造ったんだけど、場所と名前が替わったのよ。最初は鶴羽神社、って言って、今の神官の先祖の親戚がやってたんだけど、鶴姫様が境内で殺されてからは鶴羽神社は荒れ放題でね、仕方ないから菊納の家が買い上げるときに今の神官の先祖が本殿とかを若嶋神社に持って行ったんだって」
「鶴羽神社……」
薫は神妙な顔をして、ため息をつく。
「ガセだとは思うんだけどね……なんか若嶋の子って生まれたときに御守りをもらうじゃない?あれって若嶋神社が出してるんだけど、鶴姫様よけの効果があるみたいなの」
鶴姫様よけの効果。それは初耳だ。
「鶴姫様よけ?」
「そう、鶴姫様よけ。鶴羽神社で殺された鶴姫様が祟るといけないからってもらうのよ。何年かごとに神隠しみたいな現象は起こっているらしいんだけどね、私は見たことがないのよね……ホントにデマだとは思うんだけどね」
「神隠し、ねぇ……」
「うん。昔は子供が沢山殺されていたらしいわ」
「千川さんも知っているんだ……」
「うん。私若嶋出身だから。小学校の時に引っ越しちゃったけどね」
「そっか」
そう、と薫は頷く。そして、時計を見て授業始まっちゃうからまたね、と駆けていった。
「鶴羽神社……ねぇ……」
ぽつりと明日華が呟く。
「調べてみる?」
「当然。……放課後、図書館行こうか」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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