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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」13

さて、「縁側日記」の続きです。お話が動くかも?
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏の1
「籠の中の鳥」

忘れ物をした、と里流が気づいたのは学校を出てすぐのことであった。
「やべ、俺忘れ物したから先帰っててよ」
そう恋人に言えば、彼女は怪訝そうな顔こそしたものの、分かったわとうなずいて駅への道を歩いていった。
里流は学校まで走り、教室に飛び込む。誰もいない。遅くまで残っている吹奏楽部も今日は休みだったか。
さっさと忘れ物をとって帰ろうと思ったが、机の中に目的のものはない。
「あれ……おっかしいなぁ……ちゃんと入れてたか?」
鞄を開ける。
筆箱、教科書、電子辞書、ノート、水筒、弁当、そして、探していた厄払いの御守り。
「なんだ……入ってたのかよ」
とんだ無駄骨だよ、とため息をつく。
御守りごときで振り回される自分も自分だが、このお守りは特別な御守りなのだ。
里流が生まれたときに若嶋神社で受けてきた、あらゆる厄を退ける退魔の守り。若嶋に昔から住んでいる家は子供が生まれると若嶋神社で御守りを貰ってくる。そして吹き込まれるのだ。
このお守りは決して離しちゃいけないよ。鶴姫様に見つかって、食べられちゃうからね。
そうだ、確かそう吹き込まれた。若嶋ではたまに血溜まりを残して失踪した子供が出るという。
ふ、と後輩の顔を思い出して、話しておけばよかったと思う。
降りかかる災いを跳ね返す厄払いの神社。その魔除けは身につけてさえいれば子供が大人になるまで効くという。
ふと、はさりと音がして意識がそちらを向く。
里流は鞄を置いて廊下に出た。大きな鳥が飛んでいる。
「なんだ、あれ……朝子に話の種にしてやるか」
そのまま彼は足音を殺してついて行く。
鳥の大きさは白鳥くらいだろうか。里流が近づいて捉えられない大きさではない。ふぁさ、と鳥が大きく羽ばたく。
おいで、おいで。
輪の中へ。
永久の闇夜の中へ。
お前の母には内緒だよ……?
「なんだ?空耳?」
空耳とは思えないほど鮮明な囁きだった。
足を止めて辺りを見回す。砂利石。桜の木。
「ここは……裏庭か?」
そう口に出して、異常さに気付く。校舎にいたはずなのに、何故ここに?
「おいおい……冗談だろ?」
笑えねぇ、と口に出す。
しゃら、と衣擦れの音がする。
子どもたちの笑い声が聞こえる。
「子どもの来ていい時間じゃないぞ」
「なんで?」
小さな少女の声。
「鶴姫様に食われるぞ」
「大丈夫だよ、鶴姫様そんなことしないもん」
それより遊ぼう。
きゃらきゃらと子どもたちが笑う。
「遊ばない。帰る」
振り向かずにそう切り捨てると、またひとつ、衣擦れの音がした。
「帰らないでくださいませ……この子たちの頼みではございませんの」
女の声がした。
朝子でもないし、後輩達でもない。聞いたことのあるような声なのに、分からない。
「誰だ……」
くるりと振り返れば、そこには女。美しい打ち掛けを着て、長い長い黒髪をさらりと流して、優雅に佇んでいる。けれどもその美しい顔には生気というものは感じられず、ただただ人形のような気配が漂っていた。
ふ、と女の名前に心当たりが浮かぶ。
「おい、マジかよ……あんたがあれか、あのお姫様かよ……」
彼が囁けば、目の前の女はこくんと頷く。頷いた女の顔は美しく、ゆえに恐ろしい。
何故なら女は底冷えのする表情で笑っていたから。
「この子達は私の使い……あなたにお会いしたくて使いに出したのです」
「……学校に戻ってくるように、ってか?」
「ええ。……子供ですもの、すぐにやってくれましたわ」
「何が目的だ?」
女はさらりと髪を揺らして首を傾げた。
「目的ですか?」
「目的だ。俺に会いたいっていった、その目的だ」
「あなたをこちらにお連れする、それ以外に何か目的がありまして?」
彼は絶句した。こんなところで、こうもあっさりと言われるとは思っても見なかった。
つまりは、橘川里流を、殺す。そう言うことだ。
「一応聞いていいか?」
「何を?」
「なんで……俺なんだよ」
「何で貴方なのかですって?」
きゅっと女の口元が引き締まる。
「それこそ私が聞きたいのです。どうして……私なのですか」
「え……?」
「私が何をしたというのですか?私の家があなたに何をしたというのですか?」
その悲しげな表情は、よく知った人が時折浮かべる表情に似ていて、里流は息をのむ。
「……鶴姫さんよ、俺はそんなの知らないって」
「いいえ、貴方はきっと知っているはず。だって私はあなたに殺されたのですもの」
殺した?
自分が?
この女を?
身に覚えなどない。
人を殺めた覚えなどない。
「に……二年の烏丸洋子もお前が殺したのか?」
「烏丸?知らないわ……でも、お武家様ならたくさん追い払ったわ。だって、追いかけて来るんですもの」
夕焼けに染まった雨が降ってとても綺麗ですのよ、と鶴姫様は笑った。
里流の背筋を冷たいものが駆け抜ける。
この女は何を言っているんだろう。
何の話をしているんだろう。
さっぱりわからない。
身に覚えのないことで詰られるのはかなりつらいということを里流は今更ながら知る。
「……あなたは、私を殺した。だから、私もあなたを殺すんです」
太陽が最期の光を放って燃え尽きてゆく。白い単衣が赤く染まった鶴姫様が右手をすっと挙げる。その伸ばされた指の先には、橘川里流。
「何だ……?」
「さぁ、私の可愛い子供達……」
気付いたときには子供達に囲まれていた。遊ぼう、遊ぼうと寄ってくる子供達をはねつける。
「俺はお前らと遊んでる暇なんか無いんだ!帰る!」
「何を言ってるの?」
「帰らなくていいんだよ?」
くすくすと子供達の間から笑い声がさざめく。何がおかしい、と怒鳴りかけて、彼は気付く。
今の時代のどこにこんな格好をした子供がいるものか。
子供達の着ているものは洋服ではない。女のような打ち掛けでもない。赤や青がくすんだような絣の小袖。
「遅れたから鬼だよ……?」
「鬼だからしゃがまなきゃ」
「……帰る!俺は用事があるって言ってるだろ!」
「用事なんて知らないよ」
「約束破っちゃ嫌だよ」
まとわりついてくる子供の力は思ったよりも強く、振り解けそうにもなくて彼は驚く。子供の年齢は十かそこらなのに、何故そんなにも力が強いのか。疑問に思ったときには既にしゃがまされて、目を閉じていた。
「最初から遊んでくれればもっと早かったのにね」
1人の子供がそう言えば他の子供も同意する。
嗚呼、早く帰りたい。こんなのは何かの間違いだ。だから、歌い始めた子供達を見据える。
「……お前らかよ……人が寝ようとするたびに歌ってたのはっ!」
子供の顔が子供に見えない。女の顔も人に見えない。
そこにいるのはただの亡霊ではないか。
だから里流は立ち上がる。真っ白い木綿の絣の子供達を押しのけて帰ろうとする。けれど、でられない。帰れない。
歌だけが狂ったように響き渡る。
かぁごめ、かごめ
かぁごのなぁかのとりは
いついつでやぁる?
よあけのばんに
つぅるとかぁめがつぅべった
うしろのしょうめん






ふぅわりと子供が浮いて、歌いながら鶴へと変わる。それがふわふわと飛んで、夕焼けに染まった雨が降る。
どしゃりと音を立てて倒れた青年の周りで、女の唇が弧を描いた。

神を下ろすか、遊女の任期か。
それは誰にも分からない。
私にだって分からない。
鶴よ滑れ、亀よ滑れ。
幸なんて招かせない。
吉兆なんて知らせない。
この村は呪われた村。
身体は正面、心は後ろ。
後ろの正面、だぁれ……?

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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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