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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」11

さて、続きです。
鶴姫様ってどんな人でしょう。挿絵を描くに当たっていくつかラフ候補が挙がっているんですが、未だに自分でも決められていません。
そんなわけで、どうぞ。……あ、この物語はフィクションですので実際の地名とは関係がありません。ついでにフィクションの地名も混じっています。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」

数分後、跳ねた黒髪をくしゃくしゃと掻き回しながら、1人の男子生徒が歩いてきた。
「何ですか橘川先輩。またコンビニで杏仁豆腐買ってこいとかだったら嫌ですよ」
「あのな。お前知ってるだろ、鶴姫様」
はっ、と男子生徒が目を見開いた。
「鶴姫様……ですか」
「そう、鶴姫様。……あ、コイツ、後藤朔斗。俺の幼なじみでさぁ、蓮城に負けず劣らずこの手のものが大好きなやつだよ」
圭に負けず劣らず、といわれても圭がどのくらいその手のものが好きなのかが分からないからコメントのしようがない。が、彼の口ぶりからすると二人ともカルト的なものが相当大好きなようだ。
「後藤朔斗(さくと)です。
……鶴姫様、っていうのは何者かは分からないんですけれど、とにかく昔の裕福な武家の娘だったらしいんです。
その昔は一国一城の主だったらしいんですけれど、鶴姫の時代は没落してしまったようですね。一国の城主、というわけではなかったらしいですが、そこそこの権勢の家だったそうです。ところが何らかのトラブルがあって姫君は家を飛び出しました。それを追ったのが侍で、姫君は最後は現在の若嶋の辺りで殺されました。
当時若嶋には神社があって、そこでよく村人達が集っていたのですが―社会、という言葉もこの辺が語源だと本で読みました、何しろ社で会う、杜に集う、という単語ですからね―、当時その神社には巫女が1人いたらしいんです。
しかしその巫女の行方は杳としてしれません……姫君を助けようとして死んだのか、姫君を置いて逃げたのか、あるいは姫君を殺そうとして失敗したか……のどれかでしょうね」
鶴姫様、というのはどうやら武家の娘だったようだ。
もともとは権勢を誇った家であったのに、没落して家臣へと成り下がった。
そしてそこの姫は何らかのトラブルに巻き込まれた末に逃げ出して殺された。
そして、殺された場所は若嶋……菊花学園の住所だ。
「……巫女については何か知っていますか?」
「巫女、ですか……巫女についてはこれといって言及されていないんですよね。ただ、神社で血をまき散らすのは御法度ですから、何らかの対策は取ったと思うんですけど……」
「そうですか。……鶴姫様に食べられる、っていうのはどういう事ですか?」
朔斗は少しだけ考え込む素振りを見せた。
「……それは……食べられる、というのは、その……」
言いづらそうに彼は言い淀む。
「何だよ?」
「言えば鶴姫様に祟られる、っていう伝承もありまして……」
あぁ、と里流が頷く。
「鶴姫様がこの村で殺されてその腹いせにがきんちょを殺したって言われるのを避けて、ついでに鶴姫様をかくまわなかったから結果的に村人も殺したことになる、ってのを隠すためだろ?」
「……!先輩っ!」
あんまりにもさらりと言うので、呆気にとられた後に慌てて朔斗が叫ぶ。
「何だよ」
「何だよ、じゃありません!鶴姫様がお怒りになりますよ!」
「どうせ死んだ人間だよ、祟るわけ無いだろ?」
常識的に考えて、と里流は笑う。が、圭が里流を制した。
「よく考えろ、橘川。……お前さっき言ってたろ?鶴姫様が死んだ後に村の子供達が変死したって」
「言ったぜ?それがどうしたんだよ」
「お前、死んだ人間が祟るわけないんならどうして子供達は殺されたんだよ?……祟るんだよ、その鶴姫様は」
圭の表情は真剣そのもので、里流は驚いたようにたじろぐ。
「おいおい……蓮城、お前までそんなこと言うのかぁ?」
「鶴姫様が祟らないんなら子供達の変死はなかった。……自分が死んだ直後には恨みを持って祟ったとして、今なお怨み続けているというのは考えやすいが、その逆は考えづらい。分かっていても認めたくないのが人間だ」
「そうです。七条先輩に見て貰ってください。あの人、霊能者なんでしょう?」
「……そんなに有名なんだ、七条兄妹……」
明日華の小さな呟きに対して、朔斗が反応する。
「知っているんですか、七条兄妹」
「あぁ、この子が妹の葉月と同じ部活なんです」
明日華が涼香の肩を叩く。その発言は少なからず朔斗に衝撃を与えたらしい。彼は嘘だろ、と小さく呟いた。
「……後藤さん?」
「……いえ、こちらの話です。霊能者という話はご存じですか」
「ええ、とっくの昔に。本人が言ってたんで」
「……そうですか」
朔斗はまた何事か考え込んで、言葉を選ぶように口を開いた。
「僕はある掲示板に出入りしているんですけれど、七条兄妹の噂はある人から貰っているんです。その人は本人と、もう1人、情報源がいると言っているんです」
情報源。構図的には某掲示板の住人とブルームーン、そしてナズナの関係によく似ている。そんな関係が余所にもあるということだろうか。それとも、某掲示板の住人とブルームーンとナズナの関係の中に自分がいると言いたいのだろうか。
「……そうですか」
「……何か分かりましたら、菊花学園関連の掲示板にお越しください。必ずお相手しますから」
それじゃ、と朔斗はくるりと背を向けた。歩き出そうとして、また振り返る。
「橘川先輩、四の五の言わずに七条先輩に見て貰ってくださいね。でないとどうなるか分かりませんよ」
それだけ言い残して、彼は歩いていってしまった。里流がぱりぱりと頭を掻く。
「ったく……心配性だなぁ」
「いいから見て貰えよ」
「いいよ、別に。……でもまぁ、そんなに心配なら明日にでも見て貰うさ。その日のうちに祟られた、って話は聞かないし」
不愉快そうに顔をしかめる圭に、里流は今度こそ大丈夫だって、と笑った。その背中に衝撃が走る。
「うわぁ!」
「里流、なに女の子引っかけてるのよ」
「な、なんだ……朝子か」
衝撃の主は女性だった。後ろからぎゅうっと抱きついて頬を膨らませている。どうやら件の彼女のようだ。
「朝子か、じゃないわよ!もう、部活が無かったから帰ろうと思ってきてみたら~!」
「誤解だって!部活のこうはいとその友達だってば!おい、蓮城からもなんとか言ってやれよ!」
「……お前……やっぱり……」
「やっぱりってなんだよ!」
朝子、と呼ばれた彼女は見る見るうちに柳眉を逆立てて、何ですってぇ、と叫ぶ。
「……あの、お話中すみませんが」
あまりに何かの漫画みたいなやり取りをされて、割って入れないような空気に明日華が斬り込む。彼女の一種の清々しいまでの図々しさに、涼香は少しだけ感心した。朝子がなぁに、とこちらを向く。
「ちょっとお聞きしたいことがあって伺わせて貰っただけなので、痴話げんかはやめていただけますか?」
彼女の表情は硬い。その場の者は少しだけ怪訝そうな表情をして、すぐにそれを引っ込めた。
「あ、ごめんね。……私、里流の彼女で田原朝子って言います。よろしくね」
「よろしくお願いします。……聞きたいことは全部聞いたので、失礼しました」
くるりと背を向けて歩いてゆく明日華に、涼香達は慌ててついてゆく。
「ちょっと、待ちなさい明日華。気持ちは分かるけどそのずかずか歩くのやめなさい!」
階段を降りきった所で、むぅ、と明日華は唇を尖らせる。随分と子供っぽいマネをするものだ。しかしそれが却って彼女の感情を表していて、涼香は溜息を吐く。
「もう……とりあえず、今日はこれぐらいしか分からない……って事ね。帰りましょ」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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