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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」10

さて、新キャラ(?)登場の予感。新キャラと言っていいのだろうか。
もうちょっとで折り返し地点ですかね。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


さて、何の話から始めようか、お姫様。
鳥は尊大にそう言いました。
お前のことから話そうか。
私のこと?と聞き返すと、鳥は冷たく光るつぶらな瞳で頷きます。
椅子に腰掛けた私は何をするでもなく、じっと鳥の話を聞いていました。
お姫様、私はお前をそのように呼んだがお前は本当はお姫様ではない。
お前はただの小金持ちの家の娘で、本来ならばお姫様などと呼ばれる身分ではない。
ではどうして私をお姫様なんて呼ぶの?
頭の悪い娘だねぇ、と鳥は言いました。
お前の身分はお姫様ではないけれど、お前の命がお姫様なのだということに気付かないのかい?
私にはそんなこと、分からないわ。
そう言うと、鳥は長い嘴をかちかち鳴らしてけたたましく笑いました。
お前、帰り道で眠くなることはないのかい?
今みたいなことでしょう?
そうではないよ。
どういうこと?
私の纏う紗(うすぎぬ)の衣がしゃらしゃらと音を立てます。紫と紅の美しい撫子かさねの紗には、美しい金銀の糸で鶴と亀が刺繍されていて、それだけで私のような身分の者が纏う衣ではないことが分かりました。
鳥はなおも続けます。
お前がとても眠くなって、そのまま眠りに落ちてしまうようなことさ。
だから私も答えます。
沢山あるわ。それがどうしたの?
それがお前がお姫様と呼ばれる所以だよ。
私がこれを着られる理由?
そうさ、本来お前などが纏うことを許されぬ、美しい紗だろう?
私には合わないのは知ってるわ。
そう答えると、鳥はとてもとても楽しそうに嘴をならして笑うのです。
お前がそうだから面白い。お前が決して纏いえぬ紗を纏って、似合わぬと言う。間違いなくお前はお姫様だよ。お前の身分はお姫様ではないけれど、お前の命はお姫様だよ。
私が寝てしまうこととどう関係があるの?
鳥は一度ばさりと羽ばたきました。
お姫様、胸に手をあててよく思い出してご覧。お前がその命に刻んできた、本当の名前を……。


7月13日 15:30
「あぁ、鶴姫様ね……聞きたいんだ?」
橘川里流は茶色い髪を掻き回して、人なつこく微笑んだ。なかなかの好青年である。
「ええ。……風の噂に先輩が詳しいとお聞きしまして」
「なるほどね。俺のクラスに籠原さんが来てさ、放課後に私の可愛い後輩が訪ねるかもしれないからちゃんと対応するのよ、とかいうから何かと思ったよ」
「あれ、一緒のクラスじゃなかったんですね」
唯奈がきょとんとそう訪ねる。うん、と里流が頷く。
「一年までは一緒のクラスだったんだけどね。二年に上がったら別のクラスになっちゃった」
「そうなんですか」
「うん。それより、鶴姫様について聞きたいってどういう事?俺、そんなに知らないよ?」
「知っていること、教えて欲しいんです」
涼香がそう言うと、彼はしばし考え込む。
「ん……しょうがないか。何に使うにしてもこれは広めておいて損はないもんな」
「損はない?」
「あぁ、どうせ俺らが伝えなくなったら廃れてく伝承だからさ、1人でも多くの人に伝えたいわけ」
「なるほど」
そう、と笑って、里流は簡単だけどと口を開いた。
「鶴姫様って姫さんがいてさ、すっげえ美人だったらしいんだけど、どっかから追われる身だったとかで誰も匿えなかったわけ。んで、結局姫さんは殺されるんだけど、その後から村のガキんちょが変死する事件が続いてね。あんまり死ぬもんだから鶴姫様の祟りだ~、ってんで偉い坊さんに供養してもらったらしいよ?」
「変死ってどういうことですか?」
「何でも女が出てきて子供を殺す……だったかな?で、まぁ殺された時期になると鶴姫様が何で助けなかった~!って出てきて、ろくろく眠れなかったんだとさ」
里流は伝承だけど、と付け加える。
「匿わなかった、って鶴姫様はひとりで逃げてきたんですか?」
「ひとりだったんじゃないかなぁ。婆ちゃんから聞いた話だし、婆ちゃんもずーっと前から伝わる話だって言ってたし」
「つまり詳しいことはわからないと」
「ご名答。でもまぁ、伝承だからね」
「あの、供養した、っていうのはどこで?」
「え、たしかこの辺だったと思うよ?幕末になって菊納って金持ちが買うまでは供養塔も立ってたらしいし」
「菊納……」
とんでもないところで聞いた名前がでてきて驚いた。今はもう砕け散った、鏡の魔女の家。菊納の家はもしかしたらここを買ったばかりにかような災いに見舞われたのではないか、とぼんやり涼香は思う。
「まぁ、菊納家も変なことばかり続いた村に家を建てるなんて酔狂だと思うけどね、何もなかったから供養塔を壊した、ってきいたな。……特に何もなかったわけでもなかったみたいだけどね」
「どういうことですか?」
「1日1人子供が変死したのが7日に1人になったとか、ひと月に1人になったとか、失踪したとか」
「失踪……」
「でも菊納家には何もなかったんだ。何ともなかったから菊納家は家の供養塔をぶっ壊した。どうせお詣りに来る人もなかったからね」
罰当たりめ、と思うのは春の事件を知っているからだろうか。
しかし、鶴姫様というのは何者だろうか。追われて殺された、というのはわかるが、どこのお姫様なのかもわからない。里流は微笑んでどうしたの、と聞いてくる。
「あの、鶴姫様ってどういうお姫様だったんですか?」
「あー、美人だったらしい、ってことしかわからない。どこのお姫様で何をしたのかもわからないんだよね。誰も調べようとしなかったから若嶋では伝わってないと思う……あ、そうだ」
里流は教室の中に向けて叫ぶ。
「おい、蓮城、ちょっと来いよ」
「何だよ、いきなり」
「お前、可愛い女の子が4人も来てるのにみんなデートに誘っていいのか?」
蓮城、と呼ばれた男子生徒はしぶしぶ、と言った風情でこちらに来る。跳ねた茶髪で人なつこそうな里流と対照的にその男子生徒はストレートの黒髪で、眼鏡がよく似合う美青年ではあるが気むずかしそうだ。
「お前、彼女に刺されるぞ」
「あぁ、大丈夫大丈夫。だからお前呼んだんだろ。……こいつ、蓮城圭って言うんだけど、変なことに詳しいんだ。で、お前鶴姫様って知ってるよな?」
蓮城圭、と紹介された彼は肩をすくめる。
「名前だけだ。さすがにお手上げだね」
「お前でも調べてないことがあるんだなぁ?」
「当たり前だろ。僕は彼女が欲しいの!」
「だから合コン来いって」
「やだよ。何でそんなとこに行かなきゃいけないんだ」
蓮城はぐちぐちと言い返しながら携帯電話を取り出す。
「彼女たちが鶴姫様のことを知りたいんならお前と後一人しか知らない」
里流があぁ、と頷く。
「捕まるか?」
「知らん。つかお前、頭痛いんじゃなかったのか?」
「それはそれ、これはこれ。……原因不明の体調不良なんかで保健室に駆け込んでられるかよ」
からからと快活に笑った里流がふと顔をしかめる。
「橘川先輩!大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫、ありがとう。ちょっと寝不足でさ……」
「寝不足って、歌が聞こえるとかですか?」
里流ははっ、と目を見開いて、それから何もなかったかのようにまた笑った。
「あはは、やっぱり噂になってるんだ。歌は聞こえるよ。気味が悪いけどまぁ慣れるよね」
「慣れる、って……」
「何年かに一遍だからさ」
そりゃあ慣れるよね、と笑う。ずっと里流の方を向いていた圭がふとこちらを向く。
「全く、そんなに悪いなら七条に見てもらえよ」
「あいつは霊能者か、そういえば。でもあいつ、忙しいだろ」
「だろうな。……そうだ、鶴姫様ならもうちょっと詳しい奴がいる。さっきのもう1人、だけど、今呼び出すよ」
里流が圭の携帯を借りてダイヤルする。
「お、後藤?俺。橘川だ。大至急俺のクラスまで来い。……あ?一人じゃやだ?先輩命令だっつの。じゃあな」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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