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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」8

さて、続きです。毎日暑いですね、そろそろ「籠の中の鳥」の季節に近づいて参りました。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


「え、それって凄いよね」
帰り道で七条兄妹のことを話すと、チョコレートクッキーをくわえた唯奈がそう感想を述べた。
「霊能者とかそういう類でしょ?」
「じゃないかしら。とても信じられないけれど……いたっておかしくないのよね」
優がペットボトルから口を離して答える。
「魔女だっていたんだし、ねぇ……」
そう。
魔女がいたのだから霊能者がいてもおかしくはない。明日華が菓子パンをかじりながら聞く。
「涼香、それって七条兄妹?」
クラッシュアイスを舐めながら涼香は答える。
「そうよ」
「何者なのかしらね……妹のほうの葉月が同学年なんだけど、あの兄妹はどうも世間知らずみたいな感じがするのよね」
「それはあるわ。香月先輩はシスコンだし、単語すら知らないし」
「シスコン!?」
「三年生のイケメンつったら大体二番目に名前の出るあの人が!?」
「そ。でもまぁ、実力はあるみたいだし、やってみるしかないでしょ」

七条兄妹が千川薫を診たのはその週末の放課後だった。
「……うーん」
「もう一度詳しいことを聞かせてください」
「うん……夜寝ようとすると誰かが何人かで唄う歌声が聞こえるんです。眠りに落ちようとすると声が大きくなって起きちゃって……」
「それはいつ頃から?」
「先月の終わりからです」
香月が唸る。葉月が首を傾げる。
「おかしいな……それなら何かついていてもおかしくないのに気配も感じない」
「千川さんのお家でだけ起こることなのですか?」
「どこでもよ」
「人に憑くはずなのですが……藁人形でも使われているのかしら」
「藁人形?あれって効果あるの?」
涼香が尋ねると葉月が頷く。
「あるわ。あれはヒトガタと同じもの。流し雛、聞いたことがあるでしょう?」
「具合の悪いところを擦りつけて川に流す、ってあれ?」
唯奈が答えると香月が頷いた。
「そう。あれはヒトガタって言ってその人の身代わりなんだ。だから呪いの矛先をそちらに反らせることもできるし、媒介にする事もできる……彼女に呪者の心当たりは無いけれど」
「なるほどね」
とりあえず、と葉月が一枚の札を出す。
「一応清めの札を持っていてください。決して離すことの無いように」
「これで、聞こえなくなるの?」
「あなたのそばから離れなければ大丈夫です」
良かった、と薫が胸をなで下ろした。

その夜、涼香は再びメッセンジャーへとアクセスしていた。
『ごきげんようブルームーン。歌の話、何か分かった?』
そう話を振れば、ブルームーンはいいや、と返してくる。
『具体的な歌詞名は分からない。だけど間違いなく日本の歌謡だ。それも、和歌ではなく長歌だね』
『童謡じゃないの?』
『童謡、うん、童謡だ。そういえば、学園長が若嶋神社に御祓いを頼んだそうだよ』
『若嶋神社?』
『そう。菊花学園の生徒にそこの子供がいるらしくてね、七条香月と七条葉月っていうんだけどナズナさんは知らない?』
七条香月に七条葉月。そういえば香月が若嶋神社の出だと言っていたか。
『知ってるわ。七条兄妹に頼んだんじゃなかったかしら?』
『そう、子供のほう……七条兄妹に頼んだ。が、二人はまだ御祓いをしていないようなんだ』
『御祓いをしていない?』
それはそうだろう。涼香に問いつめられた葉月が溜息混じりに話してくれた仕事の内容は「保健室に駆け込む生徒の原因排除」つまり学校に響く歌声を排除することだ。ついでにそれが聞こえると思しき場所は校内ときた。
『そういえば……祓っても意味がない、って言ってた……』
『祓っても意味がない、か』
なるほどね、とブルームーンは言う。
『どういう事?駆け込む生徒に何か直接憑いてる、とか言わないわよね?』
『いや、多分それだ……七条香月にコンタクトを取ってみる。何か分かったらメッセンジャーに来て欲しい』
了解、と返してメッセンジャーを閉じる。携帯電話を取って暁久にコールする。数コールほどでもしもし、と眠そうな声が聞こえた。
「暁兄、私だけど」
「涼香ちゃん?どうしたの?」
電話の向こうの暁久の声は心配そうだ。涼香がロクでもないものに首を突っ込んでいるんじゃないかとでも思っているのだろうか。ロクでもないものには代わりはないから反論は出来ないが。
「あのさ、この間の話なんだけど……」
「……高等部の裏庭の話?」
「ううん、集団仮病の話」
あぁ、と安心したように暁久が溜息混じりに返事する。
「集団仮病ね。……また失踪した人でも出たの?」
「失踪した人?」
暁久はうん、と頷いて、気前よく話し出した。
「何年かに一度、太陽が凄くよく輝く夏があって、その年は特別保健室の利用者が多いんだ。いつも夏は多いけど、クラスの大半が具合悪くて、冷房病なんじゃないか、なんて話が出たこともあるよ」
「うん」
「でも設定温度を上げても治らない。で、ちょうど今ぐらいの時期だったかな……部活中に、しかも終わりかけてから具合が悪いので早退します、なんて言って早退した子がいたんだ」
「うんうん」
部活が終わりかけてから早退。別段珍しいとは思わない。電車はいくらでもあるのだし、ミーティングだけ出ずに帰る用事があったって別段不思議だとは思わないし、具合が悪くて悪くて仕方がないのなら早退しても構わないだろう。それが、どうしたというのだろう。
「そういう子が20人ぐらいいたんだけどね、その中で5人ぐらいだったかな……早退しておいて、そのまま姿を消してしまったんだ」
「……それが、失踪の全容?」
早退すると言ったきり失踪した。具合が悪くて早退して、そのまま二度と見つかることはなかった。からからに渇いてくる喉を無理矢理唾液で潤して聞き返す。
「いや、まだあるんだ……この5人にはこれといった共通点がなかった。犯人に適当に選ばれたんじゃないか、って警察の人は言ってたけど……」
「ランダムに選ばれた……ってこと?っていうか暁兄、どうして警察の人が言ったことなんか知ってるの?」
暁久は菊花学園の生徒会長だったはずだが、失踪現場には居合わせることはなかったはずだ。生徒会は部活動よりも早く活動を切り上げるからだ。それに暁久が部活に所属していたという話は聞かなかったし、何よりもそういう場所に居合わせることのない人間だからである。
「生徒会長だったから、っていうのもあるし……何よりもアレかな」
暁久の歯切れが悪くなる。
「何、アレって」
「いや……その……涼香ちゃんは知らない方が……」
「教えて」
奥歯に物が挟まったようないい方をするのを遮って、涼香は淡々と問いつめた。暁久が電話の向こうでしばし沈黙する。
「……うん、自分の高校のことだもんね、知っておいた方がいいかもしれない……」
「で、なんなの?具体的に」
「裏庭にね……凄い量の血が残されていたんだ」
凄い量の血。想像しただけで別の何かを呼び起こしてしまいそうで、無意識に涼香の背中に冷たい汗が伝った。

「えぇ……っと……」
唯奈はもどかしくキーを叩く。
「お嬢さん、どうしたんですか?」
「花菱、ちょっと黙って。……うぅん、人の頭にもアクセスできればいいのに……流石に公共機関のデータベースにクラック仕掛けちゃダメかしら……」
唯奈が見ようとしているのは公共機関の、しかも警察という場所のデータベースである。勿論無断で見るのだから犯罪中の犯罪だ。
けれど、唯奈はどうしてもそれが見たいのだ。
烏丸洋子がどうして殺されたのかが見たいのだ。
「お嬢さん、そこ、コード入力じゃないですか?」
「あ、そうみたい。ありがとう花菱」
ぞんざいに礼を言ってかたかたと指定のコードを入力する。警察のデータベースだけあってトラップは頑丈だ。だが、どうにかしてデータを見なければ何も始まらない気がしたのだ。
「あ、開いた!」
「流石お嬢さん」
「花菱、ちょっと黙って」
花菱を黙らせて、唯奈は2009年の7月の欄をクリックする。一日から順々に事件が出てくる。その数たるや目眩がしてくるほどだ。
その中から菊花学園で起きた事件を探す。
「あった……7月7日、菊花学園高等部不審死事件……」
それを開くと、ずらりと事件の概要が並んでいた。

7月7日 菊花学園高等部不審死事件
本件は7月8日早朝、東京都渋谷区若嶋にある菊花学園高等部裏庭にて同校二年の烏丸洋子(からすまるようこ・女・16歳)が遺体で発見されたものである。7月8日の朝7時30分頃登校してきた同校三年の橘川里流(きつかわさとる・男・18歳)が裏庭で血だまりの中に倒れている烏丸洋子を発見、119番通報し、駆けつけた救急隊員によって死亡が確認された。烏丸洋子は前日の7月7日夕方から行方不明になっており、家族は翌日捜索願を出す予定であったという。
烏丸洋子の死因は頚動脈裂傷によるショック性失血死で、死亡推定時刻は17時20分ごろ。凶器は不明。その時間には部活動は終了しており、家路についている生徒がほとんどであった。当時校内に残っていた生徒は少なく、また校内に残っていた生徒も烏丸洋子と面識があった生徒はごくわずかであった。本件の犯人は犯行後、凶器をどこかへ隠したものと思われるが、いまだ凶器の特定には至っていない。
「ふぅん……要するにただ単に不審死、ってだけなわけね」
「お嬢さん、変だと思いませんか?」
「え?」
花菱が急に深刻な口調になるものだから、唯奈は驚いてそちらを向く。
「ここです。凶器の特定がなぜできないんですか?」
「あ……そういえばそうよね。普通ならナイフとかだけど……」
そこまで言って引っかかる。なぜ凶器の特定ができない?
「極め付きはここじゃないですか?」
花菱が無言で指差した先には、どう見てもおかしな文章があった。
発見当時被害者の倒れている付近には、無数の白い羽のようなものが散らばっていた。
「鳥の羽……!?」

「う~……なにこれ」
明日華はキーボードをカタカタ叩きながら首を傾げる。画面上には色々な唄の歌詞が出ている。
何の唄か分からない以上、探しようがないのだが、ブルームーンが「日本の童歌ではないか」と返信してきたのでそれで絞り込んでいた。
「わかんない……」
どれもこれも解釈の余地がありすぎてどうしようもない。「かごめかごめ」も、「花いちもんめ」も、「とおりゃんせ」も、全て見解が統一しない。
「昔の唄だからなぁ……」
そうぼやきながら検索条件を変更する。今度は『菊花学園 子供』である。童歌は子供が歌うもの。もしかしたら歌声の主は子供かもしれないからである。
そして、それは何件めかの検索結果のとき、明日華に思いもよらない結果をもたらした。
「なに……これ……?」
そこは春にも行った掲示板だった。一言、『丹波』の手でこう書かれている。
『夕方の菊花学園の裏庭には子供が遊んでいる』
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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