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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」7

縁側日記の続きです。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏1
「籠の中の鳥」

唄が聞こえる。
あぁ、まただ。
目を閉じると聞こえてしまう。早く、早く眠ってしまいたいのに。それなのに眠ろうと意識をシャットダウンしたそばからあの歌声で再起動させられてしまう。
何なのだろう。
私は深く布団を被って耳を塞ぐ。
聞こえない、聞こえないとかたく念じる。
それなのに、聞こえる。
あの唄が聞こえてしまう。
助けて、誰か、助けて……!


翌日は休校になった。殺人事件とあればさもありなん、といった所だが、春にも休校騒ぎがあったので休校は一日のみとなっている。
「まぁ、そんなものよね……さてと」
涼香はキッチンでそんなことを呟きながらフライパンの中身を2人分の皿に空ける。何かあると明日華が家に来るのはいつものことで、それは大抵昼食を跨ぐのである。
今朝方彼女はノートパソコンを持って涼香の家に押しかけてきた。理由はよく聞いていないが、家で一悶着あったのだろう。現在涼香の部屋でなにやら某掲示板にアクセスしているが、状況は思わしくないようだ。
「明日華」
「……」
「あーすか」
「……」
「万年空腹娘!」
「いつもじゃないもん!」
3度目に漸く明日華はパソコンから目を離した。ピラフを乗せた皿を彼女の前に置いて、涼香はサイドテーブルに腰掛けた。
「進んでるの?」
「全然。……うちの新米がさ、どうも菊花学園の出らしくて」
「へぇ……」
「それで、夕方に裏庭に行くと幽霊が出て殺される……って」
そう言えば暁久も夕方の裏庭にだけは行くなと言っていた。あれはなんだったのだろう。
ログを見ると、明日華のハンドルネームである『flute』、唯奈のハンドルネーム『白露』、優のハンドルネーム『ひよどり』に混じって、『ヴィオレッタ』、『丹波』などが書き込みをしている。が、涼香はあることに気がついた。
「ねぇ、ブルームーンは?」
「気になる?」
「そこそこ。自己顕示欲強いじゃない」
「まぁね。最近動きはないかな。でも『丹波』がよくこっちに来てる」
ハンドルネーム『丹波』。
春の事件でもいろいろと面白い情報をナズナたちに提供してくれたハンドルネームだ。が、今回の発言はまるで信憑性の欠片もない。
「暇人の集いね、これじゃ」
「暇人……」
明日華が絶句する。
「暇人。『丹波』はどこまで知っているのかしら」
「どうだろ。ちょっと探りを入れてみないと」

「うーん……この事件に限って情報がない……」
唯奈はぐしゃぐしゃと髪を掻き回した。ドジを踏んだ訳ではない。情報が無いのに苛つくのだ。
仕方がないので菊花学園のデータベースにクラッキングを試みる。
組織のパソコンだけあって、罠がなかなか手ごわい。へまをすれば全てが終わる。
そんな重圧が、唯奈はしかし嫌いではなかった。
「お願い、通して……!」
祈るような気持ちでキーボードを叩き続ける。と、忙しなく流れ続ける文字列が途切れる。
「あった!」
見つけたのは烏丸洋子の保健室来室情報だった。
症状は寝不足から来る頭痛。
寝不足の原因は不明。
症状は一週間ほど前から。お陰で授業中も眠れない。
授業中に寝られないのは普通だろうと思ったが、その次の文章にはっと気づく。
「唄が聞こえる……!?」

「唄……ね。で、みんなそうなのかしら……」
「分からないわ。コピペして情報を取ってあるけれど他の生徒のことは何も」
「ん。じゃあ聞いてみる」
『誰に?』
「『クリスティー』。確か前あの人、保健室の情報は知っているって言ってたもの」
優はそう言いおいて掲示板を見る。キーボードを叩く。
「保健室来室者の情報求む……と」
少し置いて更新ボタンを押す。
「どう?」
「なんとも……あ!」
画面には『クリスティー』というハンドルネームが見て取れた。
『こんにちは、ひよどり。保健室来室者の情報、お望みならあげるわ』
『私の持っている情報と符合するか調べて欲しいの』
『了解。……で、ひよどりの持っている情報って?』
『保健室来室者が増加するのは6月の下旬から7月の夏休みまで』
やや間をおいて更新ボタンを押す。
『合ってるわ』
『OK……症状は寝不足から来る頭痛』
『……ええ、合ってる。全員がそうよ』
『全員が!?』
『そう。全員が寝不足』
『じゃあ、原因は……』
『唄が聞こえる』
「やっぱり……唄が、聞こえるから眠れない……!」
電話口で息を呑む声が聞こえた。

結局凶器は見つからないし、犯人の痕跡も見つからないしで授業は次の日から再開された。
部活動も試合やコンクールが近いものに限り再開を許可されている。
「いくらコンクールが近いからって合わせばっかりにする必要があるのかしら?」
同じパートの七条葉月がクラリネットのリードをマウスピースに合わせながら抗議する。「ねぇお兄さま?部長としてどう思います?」
部長ことフルートの七条香月がもっともらしくうん、と頷く。
「僕としてはみんな超特急で個人練習をしてるだろうから問題はないと思うよ?」
「お兄さまは練習してたらデートをすっぽかしたのでしたね」
葉月の言葉には珍しく棘があった。ちくちく刺さっているはずなのに美貌に神妙な表情を浮かべる香月と淡々と兄を詰る彼女の間で、涼香は非常に肩身が狭かった。
この兄妹、もとい七条葉月は普段丁寧な言葉遣いを崩さない分だけ口げんかになると全く言葉を選ばないので嫌みの応酬がまるで毬栗を投げ合っているかのようにぽんぽんと飛び出すのだ。2人そろって美形なのでなおさら怖い。
「あの、ですね……私を挟んで喧嘩しないでほしいんですが」
「そうよね。ごめんなさい」
「今更だけど葉月ちゃんって普段から先輩とこんな感じなの?」
「ええ。お兄さまがあんまり頼りないから……」
はぁ、と大和撫子らしくため息をつく葉月に香月がちょっとまて、と制止を入れた。
「葉月、お兄ちゃんは心配なんだよ。可愛い妹がどこぞの狼にさらわれないか……」
「なんですって?」
それを聞いて葉月の柳眉がきりりとつり上がる。
「香月先輩、心配しすぎですよ。葉月ちゃんだってちゃんと男の人を見る目くらいありますよ」
「涼香、ちがうの。お兄さま、そういうことを言ってるんじゃないの」
「え?」
「室宮さん、僕は葉月のお兄さまとして、絶対に葉月に男を近づけるわけには行かないんだ!」
ちょうど深く関わりたくない程度に自信満々である。こういうのをなんというのか思い出して、涼香はげんなりとした。
「……先輩、それ、シスコンって言いません?」
「しすこん?」
「シリコンの親戚か何かかい?」
そういえば七条兄妹はどうでもいいことは学ばない質だったと思い出す。覚えているのは勉強と音楽と興味のあることだけ。一回それでよく今まで生活できたと言ったら首を傾げられてしまった。
「シスターコンプレックスの省略です。お姉さんや妹にべったりな人」
「あ、シリコンの親戚じゃないんだ」
「先輩、人の話聞いてました?」
「うん、聞いてた。……そうだ、室宮さん」
「なんでしょう」
「僕らがこんなに超特急練習をしなきゃいけない原因だけどさ、どうしたらいいと思う?」
「はぁ?」
「お兄さま、それではわかりません。はっきり仰ってください」
「うーん。僕らの家が神社だ、ってことは知ってるよね」
「はぁ。さんざん強調してましたし」
「実は校内のお祓いを良い値段で頼まれたわけ」
「私は祓っても効果がないと思いますが」
葉月がさらりとそんなことを言う。
「うーん……あ」
「うん?」
「じゃあ去年のクラスメイトで具合が悪そうな子がいるんですけど、その子にお祓いとかしてあげられませんか?」
「何かついているのならどうにかしてあげられるかもしれない」
香月が頷く。
「まずは会ってみなくては何もわからないわ」
葉月もまた神妙な顔をして頷いた。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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