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「時風戦記」第3章ー2

さて、漸く完成した第3話です。私の書くファンタジーは最初のほうがだれ気味なのが難点。
次の話ではだれないように頑張ります。
では、どうぞ。

時風戦記
第3章ー2 HUMA LIA

マリアはすぐに戻ってきた。その後ろには明るい髪の色をした少女が立っている。
「お待たせしました。さあ、クレナ……」
クレナ、と呼ばれた少女はおずおずと前に出て一行を見渡し……驚いたように目を見開いた。床を蹴って駆けだし、月紗の胸に飛び込む。
「nefilia, lec bean lona elf, KURENA!」
「きゃっ!?」
いきなり抱きつかれたので月紗もびっくりしてクレナを抱き留める。が、勢いが付いていたのでソファに強かに背を打ち付けた。
「っつ……nefila」
「こらっ、クレナ!ダメでしょう?お客様にそんなことしちゃ」
マリアの目にはどうやらクレナが乱暴をはたらいたと映ったらしい。
「あ、大丈夫……うん、大丈夫」
まだクレナは月紗に抱きついている。
「ごめんなさい……」
「……大丈夫です」
その気まずい空気を、子供の悲鳴が打ち破った。

「マリア姉ちゃん!狼が教会のところに」
走り込んできた子供の声に、マリアの顔が強張った。
「どうしましょう……私では追い払えないわ」
気弱なその言葉は焦りに満ちていて、月紗は首を傾げる。
「どうかしたんですか?」
「……私、詩が詠えないんです。今まではファルセガータから魔物避けを取り寄せていたのですけれど、その効果が切れてしまったのかも……」
「魔物避け……」
白虎が呟く。
その間にも狼は教会に近付いてきているようで、殺気が鋭さを増すのがわかる。
「俺たちが追い払う。マリアさんは子供たちをこの部屋に集めてくれ」
藤馬がスラリと剣を抜く。
「だから人前で抜いちゃだめ!」
紫音が珍しく強い口調で抗議した。

狼の数は10匹ほどで、こちらが外にでると真っ赤な目をぎらつかせてうなった。
「なんだろう……普通の狼じゃない?」
「普通ではないだろ。……白虎?」
白虎が険しい顔をして狼を見つめているのに気づいて藤馬が声をかける。
「……月紗と紫音は下がってろ。合図したら浄化の詩を詠って欲しい」
「浄化の詩……って、月紗がクレアラで詠ったアレ?」
「分かったわ。……でもアレは修道女とクレリカルしか詠えないわよ」
「クレリカル?」
「回復専門の職業」
「とにかく頼んだ」
狼がこちらに飛びかかってくる。後ろに飛びながら月紗は紫音に囁いた。
「私がアレを詠い始めたら、紫音の一番得意な詩で援護して」
「了解!」
野生にしては狼は攻撃的で、剣に切り裂かれようが矢が刺さろうが怯む気配がない。
まさか、と月紗は礼拝歌を詠うと、険しい顔をした女神セリアがふわりと現れた。
「あの狼たちは……」
「セリア様、知ってらっしゃるんですか?」
「あれは神降ろし……神や精霊を体に宿した状態です。通常は本体が命を絶たれてしまえば神降ろしは終わるのですが……何者かに操られているのかもしれません」
「じゃあセリア様、どうすれば」
「紫音、一番得意な詩を詠ってください。月紗はこれを」
紫音が唇を開く。
「lec ashen yel sfiro virl flearn lec
mif,mif, sfiro virl flearn lec
memrin lec
lec warlsn yel o lunar tacn
lec sfiro virl flearn yel
lec beentn roa finda yel, xis 1 xian
lec mirran yeli meld
(忘れないで、私のこと
ずっと、ずっと、わすれないで
覚えていてね
月が丸くなる前に私はあなたと離れてしまうけれど
あなたのことは忘れられない
きっともう一度、会いにゆくから)」
辺りにふわふわと光が漂う。それを眺めながらセリアに渡されたのは透明な小さな珠だった。
「詩の珠です」
込められた詩の想いを知りたくて、こんなことをしている場合ではないのに珠を胸元に押し付ける。
その瞬間に何かがふわりと体に絡みついて、吸い込まれていった。
「神降ろしです。詠いなさい」
確かに今なら、詠える気がする。確信できる。だから唇を開く。
「lec bean civan tua tale roa leci ir
whe nowi, lec tottan leci haigel
lec crossn yeli sailia roa hut lant et leci lifina
clima lacafe, viam reum
sfiro prenia tua meld
enelin supl tua ir roa leci haigel
crossn leci et yeli sailiy
yel enelan lec sailiy, clima tale bean rodian
(神の詩を私の中に
今こそ私の身体をあなたに捧げよう
高い空に漂うあなたの詩を私の命と繋ぎます
聖なる丘よ、運命の塔よ
神の魂を呼び覚ませ
私の詩に応えてください
私の身体はあなたのものとなり、聖なる詩が再び紡がれる)」
その瞬間、その場に強い風が吹いた。

「くそっ……なんだこいつら!?おい藤馬!大丈夫か!?」
弓で狼たちをなぎ払いながら白虎は叫ぶ。どれだけ切っても矢で射抜いても立ち上がってくる狼たちに、彼らは間違いなく恐怖を覚えていた。
「なんとかな……紫音の詩は……あれは回復魔法か?」
「多分な。でも追いつかない!俺らが倒せなければ月紗と紫音が倒れる!」
「月紗……この間の浄化の詩は……」
微かに聞こえていた月紗の詩はこの前聞いたものとは全く違うもの。浄化というわけでもない。そうこうしているうちに、狼が流した血がまた獣の形を象った。飛びかかってくるのをどうにかしたくとも数が多すぎて応戦しきれない。だから、彼女に届くように叫ぶ。
「月紗っ!詠え、詠ってくれーーーっ!」
その瞬間、彼らを強い風が包み込んだ。
「うわっ!」
「なんだ!?」
何が起こったのか後ろを振り返りたくとも振り返れない。が、振り返る必要はどこにもなかった。
流れてくる旋律が1つだけあったから。
「y ganel irxe bean bornin, y lona civan ya drie.
flearn rode, tottan tale harve tua.
lec krihen kersin irxe.
y envil prenia drie.
krih tale burlinyan lant, ya krihn lifina ya oria
credin unde, burlinyan selfi, shwerln meor, wonorln tast.
lec eneli roa naml n tua!
sfiron kers tale krifia!
lec rodian harve tale.
lec rodian tua tale.
lec sfiron rodian anyel tale.
tac unde,burlin selfi, beentn meor, bornine tast.
krihen ailerne miry bean win whe vela glor.
anyeln lant, anyeln unde!
lec halirn et krihn yelis lifinas!
lec prenia renca yelis irs!
leci garls halirn yeli tale.
(生まれ出でた破滅の精霊よ、此の地に災い為す悪しきものよ
道を空けよ、豊穣の神に詩を捧げよ
浄化せん、悪しき精霊よ
災い為す破滅の使者よ
浄化の詩は空を焦がし、此の地に住まうものを清めん
水を通せ、炎を焦がせ、風を切れ、大地を割れ
神の名にて我は命ぜん
汚れし詩を祓い清めよ
我が詠うは豊穣の詩
我が詠うは神の詩
我が詠うは祓えの詩
水を流せ、炎を燃やせ、風を吹かせ、大地を創れ
太古より守られし夢の島を清めよ
空を祓え、水を祓え
汝らの罪を裁き清めん
汝らの魂を蘇らせん
我の怒りに裁かれよ)」
「なんだこれ……この間のと……違う」
先ほどまで咆吼をあげてこちらに襲いかかってきていた狼たちは次々と憑き物が落ちたように力無くどさりと地面に倒れる。そしてさらさらと崩れて消えていった。
「これ……月紗の詩、なのか……!?」
藤馬が剣を鞘にしまうことも忘れて呆然と問いかける。月紗はクレアラで詠ったのが初めてではなかったか。それに、詩もどことなく違う。これが彼女の力だというのか。
「……いや、違う」
白虎には分かる。あの歌声は月紗であって月紗ではない。狼と同じ事だ。詩だけであっけなく倒れていった獣たちは、おそらく何者かが精霊でも降ろしていたのだろう。ついでに怪しげな呪いを掛けた。それをいっぺんに浄化してしまうのが浄化の詩『I tale:krifia-rencanation』だが、修道女の月紗では限界がある。彼女の限界がどれほどなのかを白虎は知らないが、誰かが彼女の身体の中に宿ればその分だけ魔力の上限は上がってゆく。そして、あれは魔力が最大出力になっているわけではないが、間違いなく歌声の主は月紗ではない。
「あれは……多分セリア様だ」
「セリア様!?」
振り向けば詩を終えた紫音と月紗がいる。けれど月紗の身体からはふわふわと淡く光が立ち上っており、彼女がいつもの状態でないことは明らかだった。
「……セリア様」
「はい」
月紗の声と、セリアの声が二重に聞こえる。
「あなたですね?さっきの歌声は」
「ええ。……詠ったのは月紗ですが、詩そのものは私の詩です」
「……どういう事ですか?」
セリアはそれには答えず、また短く歌を紡いだ。
「lec recivan laci haigel, lec lornon nowi [I tale:supl-tualiss]
rever renca, mer anlie(この器を返しましょう、神降ろしを解除します
目覚めなさい、愛し子よ)」
また風が吹いて、月紗の身体がどさりと倒れ込んだ。慌てて抱き起こす。
「月紗!」
「ん……あ、私、詠えたんだ……」
「神降ろしか?」
「うん……『I tale:supl-tualiss』……どうなったのか分からなかったから」
紫音の差し出した回復薬を飲み干して、月紗は立ち上がった。
「その分だとセリア様が降りてきてくれたのね……紫音、ありがとう」
「何とかなって、本当に良かった」

教会に入っていくと、子供達がまたまとわりついてきた。
「玩具じゃないんだが……」
困惑する藤馬をまあまあと宥めていると、マリアが子供達をたしなめる。
「ほら、みんな、お客様にご迷惑をおかけしないの。……あの、こんなところでよろしければ、ささやかですがお食事とお風呂をご用意させて頂きました」
「ありがとう、マリア」
「え……せ、セリア様!」
そんなわけで、セリアに声を掛けられて感激だか恐縮だかしているマリアの厚意に甘えてその晩は泊まっていくことになったのであった。

明くる朝のことである。
「本当にありがとうございました。狼を退治して頂いて……」
「いえ、あの、こちらこそありがとうございました」
「では、行きましょうか」
セリアに続いてくるりと背を向けた時である。
「あの」
「はい」
「あの……私も連れて行ってはもらえませんか?」
おずおずとした声に振り向くと、マリアが縋るような目で佇んでいた。
「子供たちはどうするんですか?」
「隣村から修道女を派遣してもらいます。私、子供たちを守る力が欲しい……詩を詠えるようになりたいんです」
詩を詠えるようになりたい。それはマリアの本心だろう。先ほど狼が襲ってきたときも魔法が詠えないと言っていた。普段は魔物よけを使っているのからしいが、今回のように効果切れになった場合に詠えなければ不便この上ないだろう。
「セリア様……」
けれど女神は目を瞑って首を横に振った。
「マリア。あなたを連れていくことはできません」
「何故ですか?私だって修道女です」
「けれどあなたはモーニの丘の修道女でしかない。それに……あなたを連れていくにはこの旅は危険すぎる。私はあなたを死なせたくない……月紗たちには命を賭させるに値する理由があるのです」
「私たちが命を賭けるだけの理由……」
邪魔法の使い手のことだろうか。それとも別のことなのだろうか。
考えあぐねてセリアの方を見ると、女神は今にわかります、と微笑んだ。とりあえずよく分かっていないままに曖昧に頷く。
マリアはふうと息を吐くとわかりました、とうなだれた。
「私は、セリア様に従います」
「ありがとう……本来ならあなたは修道女にならないはずなのに、私に祈りを詠ってくれて……これはお礼です」
ふわ、と淡い光がマリアの胸に舞い降りて、溶け込んだ。
「あなたが詩を紡ぐことは出来ないけれど、守りたいものを護れるように、一つ詩を授けます」
「セリア様……」
「また、機会があったらここに来ます。そのときにフィアーニュの話も出来るといいな」
「月紗さん……」
2人は修道女だ。
その間に何の違いがあるのかは分からない。
けれどももう一度あいたいと思った他人は初めてだった。
その気持ちを胸にしまって旅は続く。

つづく
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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