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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」5

久々の縁側日記です。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 夏・1
「籠の中の鳥」


私の家はちょっとした小金持ちの家でした。
リムジンでお出迎え、というほどではないのですが、それでも送り迎えがあった家ではありました。私はいつもその車の中で眠ってしまって、目覚める頃にはとっくに校門に着いていたりするのです。
私が車に乗り込むと、一羽の鳥が飛んできます。
そして私を車の外の世界へと誘うのです。
外の世界には何もありません。ただただ白い世界が続いているだけです。白と黒の鳥は私をそこへ誘い、そこに腰を下ろせというのです。
腰を下ろすと言っても椅子も何もありません。
座ってしまえばもしかしたら白い地面が抜けてしまうかもしれない。そう言うと、鳥は私にこう言います。
では椅子をつくってやるからそれに座ってよくお聞き。
そう言うのです。
お前は見てしまうかもしれないが、椅子をつくっている間は決してこちらを見てはならないよ。
こうも言うのです。
見てしまうかもしれないが、とはなんて言いぐさでしょう。鳥のほうを見ることなく、私は言い返しました。
私、約束を守るのは得意なの。あなたはどうしてそんなことを言うの?
鳥は言いました。
お前がお姫様だからさ。
私は尋ねます。
どうして私はお姫様なの?
鳥は答えます。
お前、自分の格好を鏡で見てご覧。
私は尋ねます。
そんなこと言ったって、ここには鏡なんかないじゃない!
鳥は答えます。
お前の目はただの墨の固まりなのかい?
お姫様、自分の格好をその眼という鏡で見てご覧なさい。
そこで私が自分の姿を見ると、いつもの私の格好ではなかったのでした。
だから私は鳥にくるりと背を向けて立っていたのでした。

家に帰ると、ちょうど暁久が自宅へ帰るところだった。
「あ、暁兄」
「おかえり。ご飯つくっといたから食べてね」
「うん……あ、そうだ暁兄、今時間ある?」
暁久は訝しげな顔をして、あるけどどうしたの、と尋ねる。確か彼は菊花学園のOBで、生徒会長を務めていた……ような気がする。涼香の記憶が正しければの話だが。
「たしか暁兄ってウチの学校のOBだったよね?」
「そうだよ。……何かあったの?」
「ん……ちょっとね。それより、今ぐらいの時期にやっぱり保健室に行く人が多かったの?」
「保健室?……あぁ、確かに多かったな……なんか一時期は集団仮病か、なんて問題になったんだけど」
「仮病?」
「そう。熱も出なければ頭痛もしない。出席率が悪いわけでもないのにその時期だけは決まって生徒がいなくなる。……不気味ではあったかな」
「そう……あのさ、それでその人達、唄が聞こえる、なんて言ってなかった?」
「唄?」
「そう。眠ろうとすると唄が聞こえる、とか」
暁久は少し考えて、言っていたようななかったような、と首を捻った。
「随分前の話だから詳しいことは忘れちゃったけれど、そんなことは言っていなかった気がするなぁ……」
「……そう、ありがと」
じゃあそろそろ行くね、と従兄は鞄を担いで玄関に向かいかけ、そうだと足を止めた。
「涼香ちゃん」
「何?」
「高等部の裏庭には日が暮れてきたら近づいちゃダメだよ。……それ以外なら、気の済むまで調べても良いから」
返答に詰まる。暁久には涼香が得体の知れない人物と接触していることを知らせていない。ましてや春の失踪騒ぎに休校にもかかわらず首を突っ込んだことなど知らせるはずがない。
何故知っているのか。
「あ……暁兄……」
「心配だけどね?出来ることならサポートするから」
そうして暁久は帰って行った。台所には晩ご飯。冷蔵庫には明日の朝食と弁当。
1人残された一軒家は広すぎて、暁久の思いがけない言葉が頭の中でリフレインして、気の抜けた風船のように涼香はぺたんと床に座り込んだ。

「ただいま……」
玄関で挨拶して、おざなりにお帰り、と返ってくる言葉に溜息を吐く。優にとっては一番気が重い瞬間である。
出来ることなら家にいたくない。
けれど、それは出来ないから。
「ご飯、出来てるから」
「あ……うん。着替えてから食べる」
重い足取りで自室へと向かう。
本当はリビングに顔を出すのも億劫だ。何故なら居心地が悪いから。
外は暑いはずなのに、この家の中だけは冷え切っている。
「寒い……」
自室にはいるとぱたん、とドアを閉じて座り込む。
「みんな……今頃何やってるのかな……」
もしかしたらいつもの場所にいるかもしれない。今日のことについて色々と推理しているかもしれない。
「……行かなきゃ」
よいしょ、と立ち上がって制服から普段着に着替える。
台所に降りていくと、兄の智(さとる)がご飯を温めていた。
「お帰り、優ちゃん」
こちらを向いて微かに笑う兄の姿に、少しだけ冷え切った空気が暖まるのを感じる。
「ただいま、智兄さん」
「一緒にご飯食べようか」
「うん」
樋口家には四人子どもがいる。優はその末っ子な訳だが、一番年の近い兄が智である。一番上は姉の理世(りよ)と長兄の佳紀(よしき)で、双子だ。この2人は優とは年が大分離れていて、いつも忙しそうにしている。だから話す時間はほとんどない。
話すことも特にない、というのが本当のところではあるが。
そこに来ると智は優を随分かわいがってくれて、彼の趣味の写真のことも随分教えて貰った。
「学校で困ったこととかない?」
「うん、大丈夫」
「そっか。夏休み、理世さんも佳紀さんも忙しいかもしれないけど、兄さんと日帰りで旅行でも行こうか」
「旅行?写真取りに行くの?」
「そうだね……久しぶりにそれも良いかもしれない」
どこが良いかな、と考え始める智の心遣いが、優にはとても嬉しかった。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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