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あなたへの手紙

久しぶりのオリジナル小説です。サークルに出したものをサルベージ。
しかし今日寒いですね……。あんまり寒くて手が冷え切ってしまったので、駅でパンケーキを買ってカイロ代わりにしてました。
なんかいつ見ても今川焼きみたいな形なんですけども。
では、どうぞ。

「あなたへの手紙」

「拝啓、遠野(とおの)有馬(ありま)様……と」
諸事情があって手紙を書かなければならないのに、私は時候の挨拶まで書いたところで止まってしまった。書くべき事は決まっているのだが、それではあまりにも素っ気ない。とはいえ、用件以外に何を書けばいいのかわからないのだ。手紙の相手はもう何年も会っていない人。だからこそ、伝えたいことが伝えられないのかもしれない。
「そもそも、お兄ちゃんみたいなものだったし……当たり障りのないことでも良いかな……?」
そう一人呟きながらボールペンの尻を唇に当てて思案する。
 だが、私にとって手紙の相手、もとい遠野有馬は兄以上の何かだった気もしないではない。そんなことを思い出していると、幼い日の記憶が蘇ってきた。

小さな頃、私と遠野有馬は幼なじみ同士で、いつも隣の空き地で遊んでいた。時々ケンカもしたけれど、一人っ子で引っ込み思案な私にとって、彼はたった一人の兄のような存在だった。
『奏、遊ぼう』
その一言でどれだけ救われたかわからない。有馬は部屋の隅でぽつねんと座っていた私、時野奏(ときのかなで)を空き地へと誘い出してくれたのだった。
 有馬とは本当に色々なことをして遊んだ。
 2人だけだからおままごとやあやとりぐらいしかすることがなかったけれど、それでも私は楽しかった。そのなかでも、想い出に残っているのは秘密基地だった。秘密基地なんて本当にありふれたものかもしれない。その辺に投げ捨てられていた段ボールや板切れを継ぎ接ぎして、空き地に好き放題に生えているススキの枯葉で隠して。大人達には内緒だよ、なんて二人きりで笑いあった。そういえば中には色々なものを持ち込んでいたことを思い出す。トランプ、絵本、落書き帳、綺麗な石などなど。幼稚園から帰ってきては有馬が待っている秘密基地に走っていったものだった。
基地の中に、がりがりと鉛筆で付けた傷があった。いや、印だったか。とにかく、その傷だか印だかは基地の中でくだらないことでケンカした時に出来たものだ。
『奏のほうが大きいもん!』
『僕のほうが絶対大きい!』
『奏のほうがぜぇったい大きいのぉ!』
発端は忘れてしまったけれど、確かどちらのほうが背が大きいか、という内容だったと思う。私があんまり言い張るものだから、はかってみようという結論になったのだった。結果としては私の方が小さくて、彼の背丈は奏が届かなかった秘密基地の入り口に頭がぶつかるくらい。結果がはっきりした後、彼は私の頭をぽんぽんと叩いて、はっきりしただろ?と笑ったのだった。当時小学一年生だった時野奏は年相応に悔しかった。どうやら負けず嫌いではあったようだ。相当ふて腐れたに違いない。けれど、妙に大人ぶった遠野有馬の笑顔を見てそんな気持ちが吹き飛んでしまったのもまた事実だった。
 基地を作ってからは毎日毎日夕暮れ時まで遊んだ。同じ小学校に通ったから宿題もその秘密基地の中で終わらせた。二人だけの秘密基地だった。基地自体は私たちの子供時代の終焉と共に空き地が買われていったせいで解体されてしまって後も形も残っていないけれど、今でも十数年前に基地を作った時の約束は覚えている。
『大人には内緒だよ。みんなにも内緒。二人だけの秘密だよ』
私は多分それに元気よく頷いたのだろう。酷く心が弾んだことだけを覚えているから。

 断片的に記憶を辿っていると、ふと夏の夜を思い出した。もう二十歳を過ぎたのだから、夏の夜なんて何千回と経験しているし、忘れられないそれだって沢山ある。蝉の鳴き声を聞きながらの受験勉強やレポートに勤しんだり、花火大会に行ったり、何かの行事で行った等々。けれど、それ以上に忘れられない、真夏の夜空に咲く打ち上げ花火よりも強烈な輝きを放つ夜があった。

 それは有馬と秘密基地で流れ星を数えた夜だった。
『やっぱり沢山は見えないね』
有馬が基地の中から顔を出して困ったように頭をかいて、それがあまりに可愛らしくて珍しくて私は笑ったのだった。
『こら奏。笑ってるんなら手伝いなさい』
『はぁい。でも、見えるの?流星群じゃないでしょ』
流星群ならともかく(当時は知ったばかりだったから流星群という言葉を使いたかったに違いない)、流れ星なんて見えないことは分かり切っていたけれど、有馬が旅行した時に見たという流れ星を見せてくれようと頑張っているのを見て私は胸の辺りが温かくなるのを感じたのを覚えている。
『有馬は流れ星に何をお願いしたの?』
その問いに彼は優しそうな微笑みでこう答えたのだった。
『内緒』
当時はその返答にむくれたものだったが、もし仮に私が同じ事を問われていたとしても内緒、と答えたと思う。私は有馬と一緒にいられればそれでよかったのだから。

 そんなことをして過ごしていた日常が変わったのは中学一年生の時だった。
『奏。僕……転校するんだ』
『転校?』
理由はうすうす知っていた。家庭の事情とかいうやつだった。もっとも、有馬のお父さんの会社がうまくいかなかったとか、借金が出来てしまったとかいう噂が近所では流れたけれど。その噂にはもっとドロドロした、よくない噂もあったけれど、遠野家はそれを気にしたのだろう。噂が流れてからすぐに彼の家は引っ越しを決めたようだった。
『家の都合で……ちょっと、どこかに行かなきゃいけないらしくって』
『……そっか』
私はそれしか言えなくて、俯くしかなかった。私は有馬の家の事情を詳しく知っているわけではなかったから。行かないで、なんて無神経なことを言えるわけがない。それなのに言いたくてたまらなかったのは何故だろうとずっと思っていた。彼が新幹線で私の傍を離れるその日が来るまで、ずっと思っていた。
 結局、行かないで、なんてどこかのラブロマンスみたいな可愛らしいことは言えなかった。けれど、有馬の妙に大人ぶった、優しそうな微笑みが基地で過ごしたときに見た微笑みとだぶって、自然と涙が溢れたのを覚えている。
『離れても、ずっと友達だからね』
私がそう言ったら、彼は姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていたのだった。私に一つだけ、約束という名の餞別を残して。

 有馬との時間の回想から帰ってきた私は再びペンをとる。書くのは小学校の同窓会の案内。それと、ほんの少しの私信。
 私信を書くにあたって今思い返すと、私が有馬の転校間際に彼に対して抱いていた感情はもしかしたら初恋だったのかもしれない。いや、きっと「もしかしたら」や「かもしれない」という言葉が付くのではなく、今でもその淡い初恋のような感情は私の中にずっと住み続けている。なぜなら思い出の中の遠野有馬は何年も経ったのに色褪せずに笑っているから。
 だから、私信には短く、たった一言こう書いた。
『あなたと同じ流れ星をまた見たいです』
幼い日に交わした、たった一つの約束を違えないために。
                     おわり
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テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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