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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」33

動機編の後編です。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」


神様。あなたに愛された記憶ごと、あの人に愛された記憶ごと、私は消し去ってしまいたかったのです。
けれど、その人は言いました。
「あなたがそんなことをしては、その人達と一緒になってしまいます」
ではどうすればいいのですかと私は尋ねました。
「忘れ物を思い出させてやればいいのです」
忘れ物。私が人形ではないと言うこと。神の人形ではあっても、愛した人の玩具ではないと言うこと。
それでも胸の内によぎる昏い焔を、私は見ないふりをしました。
その私に、白く小さな手が差し伸べられたのです。
「それ相応の復讐をするべきです。あなたにはその権利がある。あなたの中の怒りの衝動を……そのまま彼らにぶつける権利がある」
私はその手を取りました。
その人のダークブロンドのシニヨンの余り毛がわずかに揺れました。
「あなたは……どなたですか?」
「私は……ヴィオリア。ヴァイオレットというの」

「その人はヴィオリアの末裔だと言っていたの……それから、私はケルヴァーンとアニュエールに頼んでこの事件に協力して貰ったの」
「申し訳ございません、メアリ様……でも私、どうしても許せなかったんです!」
アニーが訴えかける。ケリーがその背中を支えるように立ち上がった。
「邪魔だからと言って、卑怯な手で私たちの父の勤め先を奪った……私はそれがずっと許せませんでした。旦那様があんまりお優しいから、私はここにいたいと思ってしまったんです。……私、旦那様のことが好きでした」
「……ケリー!」
「いい加減にお分かりください。どんな形であれ人は人を愛するのです。あなただけが愛されていればいい時期は終わったのです」
淡々とケリーは言葉を紡ぐ。いったんは叱りつけようと彼女の名前を呼んだメアリも、今はその言葉に宿る怒りに当てられたように動かない。
「私はこのお屋敷でたまに褒められるのが嬉しかったんです……でも、私たちが味わった苦しみは、メアリお嬢様にはお分かりになれないでしょう!私たちは黙って現実を受け入れるしかないんです!ですから……あなたが一番憎かった……」
「……っ」
このままではメアリを責めるばかりでラチがあかない。
殺された側にも同情できない代わりに、殺した側にも同情ができないなと真由子はぼんやり思う。
「ねぇ、エリシアさん」
だから一歩踏み出て、エリシアの傍に膝を付く。
「あなたはいま、幸せになれましたか?」
「え……?」
「たしかにあなたたちから見れば彼らは魔女ですし、同時に魔女狩りの村人です。……でもね、私たちが生きているのは現代のロンドンで、妖精さんも魔女もいないんです。ねぇ、彼らを殺してもあなたが行き着く先は地獄なんですよ?たしかに自分から毒を呑んだヴァレンスさんたちは地獄行きでしょう。そうでなくても地獄行きだと思いますけれど……でも、あなたたちまでお供する謂われはないんじゃないですか?」
「分かってる……分かってるの……でも、思い知って欲しかったの……!」
「それなら、スターアイ・グループを解消して、拠点を移したりしてもう一度対抗できるように再興すれば良かったんです。あなたが融資を取り付けられる銀行はまだ沢山あったはずです」
「……そうね……そうすれば良かった……そうすれば……最高の復讐になったかもしれない……」
「ね?……さて、ヴィオリアの末裔と言えば……どなたですか?」
「私です」
真由子の問いにすっと進み出たのはサリアだった。
「サリアさん……ですか?」
「ええ……もう隠す必要もありませんし、バカらしくなってしまいましたので」
そうして、彼女は鮮やかな赤毛のツインテールを掴んで引っ張った。すると、ダークブロンドのお団子にまとめられた髪の毛が現れる。
「何故、と聞いても?」
「はい。私の家、ヴィオリアの末裔ではありますけれど……ロンドンでレストランをしていたんです。売り上げは右肩上がりだったのですけれど、いつの間にか借金を背負わされて、あの土地をホワイトローズホテルに買い上げられて……ですから、ほんのちょっとした悪戯程度だったんです。あのあと両親はフランスに職を見つけに行き、帰ってきませんでしたし……妹のサリアは風邪をこじらせてこの世を去りました。私、両親とサリアを奪ったこの家が憎かったんです。だから、妹の名前を借りて、赤毛のウィッグを被って……でも、方法は幾らでもあったんですね……」
「……そうですね……でも、流石に悪いと思っていたみたいですよ?皆さん、全員に」
「え?」
真由子は朱宇から受け取った紙の束をマイラに差し出す。
「これは……?」
未来が答えた。
「来期の、ハニースター株式会社の経営方針です」
「ベリーナ化粧品会社、エイニー卸業、ブラウンエンターテイメントコーポレーションを……子会社として買収、のち独立……レストラン『ウィレスト』三年計画……そんな……」
彼が信じられないと体を震わせる。
「『ウィレスト』って……私の家の……」
「うん……オーナー不在のため、ヴァイオレット・ローズマリーにホワイトローズホテルのレストランを任せる……って」
彼らの眼からあふれ出るのは後悔の涙。
けれど、涙でぐしゃぐしゃのその顔は、二日間で見たどの笑顔よりも綺麗だと真由子は感じた。
彼らはこれから茨に囲まれた道を裸足で歩くだろう。
決して逃れ得ぬ地獄への道を歩いてゆくのだろう。
けれど信じたいと思う。
すれ違いで人を傷つけても、いつか分かり合うことができるのだと。
たとえ、それがもう叶わなくても、いつかまた出会えるのだと。
そう、信じていたいと思う。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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