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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」30

推理編の続きです。
いよいよ真犯人が分かります。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

「アメリア・エイニーさん」
「……なんの事かしら」
「アニーさんに落書きをさせたのはあなたでしょう?……この件については、塗料の缶と刷毛に彼女の指紋が残っていました。一番上についていた新しいものです。……では、どうしてあなたが仕掛け人なのか?確かに私が見たあなたがバラの花を千切っている、という事だけでは弱すぎます。では、手紙に付いた指紋ならばいかがでしょう?」
「……」
手紙をすっと差し出す。そこには2種類の指紋が浮かび上がっていた。
「ダイアナさんの件の後、みんな指紋を採りましたよね。……さて、この手紙に浮かんでいる指紋ですが、一つは私の指紋です。ではもう一つは?当然発見したアメリアさんのものですね。私が封筒を渡したのですから。……では質問です。手紙には私とあなたしか触っていない。にもかかわらず、先に封筒に触った私の指紋の下にもう一つ指紋がある。そしてこれはあなたのものです。あなたが触ったのでなければ、誰が触ったのですか?」
「……でもそれはいちばん最初の手紙でしょう?2通目は?」
「触った場所がバラバラでした。あなたの手は2本しかありません。なのに四ヶ所指紋が残っています……封筒の、同じ面に、です」
暫くアメリアは黙っていた。それから、ゆっくりと髪の毛をかき上げて笑う。
それはとてもすがすがしく、それでいて寂しそうな微笑みだった。
「ばれちゃった……よく分かったわね」
「化学技術の結果です。本当は殺す気なんてなかったんでしょう?」
「ええ。……手紙を置いたのは私だし、ダイアナの部屋のドアも私がやらせたの。……アニーに頼んで」
彼女にお疲れ様でした、と声を掛け、また全員のほうに向き直る。
「ですがアメリアさんは手紙を置くこととドアの落書きの指示だけです」
どういう事なの、とエリシアが尋ねる。
「指紋がバラバラなんです。殺人事件を起こしたヴィオリアと、手紙を置いたヴィオリアは別人なんです」
犯人は1人ではない。それに騒然となる彼らにいいですか、と問いかける。
「第一殺人。犯人はメイドさんに毒薬……BTPを渡し、気付かれないようお手拭きやカップに染み込ませるように指示しました。BTPは体温で溶けるので、温かいお手ふきなんてすぐに染み込んでしまいます。これで準備は万端です。あとはいつものお誕生席に毒薬を仕込んだお手拭きやカップを置いてもらい、ダイアナさんがパンを手にとって口に運ぶのを待つだけです」
「でも、毒薬をどうやって持ち込んだというのですか?」
ケリーがもっともなことを問うてくる。
「簡単です。容器に入れて、手作りの菓子とでも言ってメイドさんに渡し、私が言ったとおりの指示をするだけです。次に起きた第二殺人……睡眠薬を紅茶に仕込み、ヴァレンスさんを眠らせる。これはメイドさんじゃなくても出来ますよね。その後二人の服を替える。ケリーさんとサリアさんが探していらっしゃったのはレオナルドさんが部屋にいなかったからではないですか?」
「え、ええ……」
「その時、レオナルドさんは部屋にはいなかったんです。シャツの胸ポケットに、一緒にいる人と服を取り替えてその人の部屋に行けという手紙がありました。つまり、彼は眠りに落ちたヴァレンスさんと服を取り替えて、自発的にヴァレンスさんの部屋に行ったと言うことです。その後は簡単、1人になれるタイミングを見計らって空き部屋に入り、インターフォンからヴァレンスさんの部屋に紅茶を持ってこさせ、自分は紅茶を受け取って毒を仕込む」
そこで真由子は一旦言葉を切る。彼が自発的にヴァレンスの部屋に行った理由は分かっていたからだ。その証拠を手の平で握りしめる。正体は草書体で書かれたメモだ。
「それからメイドさんに命じて茶器を引き取らせ、自分は何食わぬ顔でアリバイを証明できる行動をとる……」
「待って。何故ヴァレンスの格好をさせる必要があったの?」
「多分順番を入れ替えたからです。本当はヴァレンスさんのほうを先に殺したかった。けれどアクシデントが生じた。犯人が回収しておきたかった物をレオナルドさんが拾ってしまったからなんです」
「それは、何……?」
アメリアの問いに、真由子は黙って後ろ手に隠しておいたビニール袋を出した。
「指輪……?」
「はい。犯人の、指輪です。何故回収しておきたかったかと言いますと、犯人は本来第二殺人でヴァレンスさんにスターアイ・グループのとある事情について問いつめるつもりでいたのです。これはその証拠として回収しておきたかった。そのための小道具ではあったのですが、レオナルドさんが指輪を拾ったと言っていた、とエリシアさんが証言してくれています。それを聞いていた犯人がレオナルドさんを殺した、というところでしょう。そしてトリックの対象を交換し、本来ならば先に殺されるはずだったヴァレンスさんをクローゼットに隠し、入れ替わらせてレオナルドさんを一旦部屋から『消失』させるというトリックを作り出した……アメリアさんもこれは予想外だったと思います。何となくヴァレンスさんの部屋に手紙を置き、エリシアさんの部屋で何気なくお茶をしている間に彼は殺されてしまったのですから」
「クローゼットだなんて……そんな……」
「人間の隠し場所としては最適ですよね。けれど、髪の毛の色は隠せません。急ごしらえのトリックだったとしたらそれこそアクシデント、そうでないにしてもカツラでごまかせるのなんてただの時間稼ぎでしかありません。ですからさっさと本人でないことを確認させ、消えたほうに殺人の疑いを掛ける……そういう寸法です」
「じゃあ、ヴァリーの時は?」
「ヴァレンスさんはダイアナさんの部屋にいました。ダイアナさんとの思い出を偲ぶためだったのか、それとも別の理由からかは知りませんが、彼はとにかくそこにいた。そして毒の仕込まれたお茶を飲んだ。それだけです。……第二、第三殺人共に5分、10分で終わらせることができるものです」
場が静まる。
魔女の秘薬などで引き起こされた殺人などではない、毒薬を使った殺人事件だったということが、あまりに衝撃だったと言えよう。
彼らはずっと魔女ヴィオリアが引き起こした殺人だと信じて疑わなかった。
だからアリバイに5分10分の空白時間が出ても気にすることはなかった。
だが、今、そのアリバイが崩されてゆく。
彼らは音を立てて崩壊してゆくアリバイを為す術もなく見守っていた。その彼らに真由子は証拠を突きつける。
「ついでに、レオナルドさんの部屋から睡眠薬の空袋も上がっていますし、彼の部屋のドアに残されていた指紋のうち2番目にはレオナルドさんのものが検出されています。……さて、犯人の言い当てに戻りましょうか」
そこで一旦言葉を切ってうつむき、また顔を上げる。
不安がないといえば嘘になる。
けれど、全てを総合して考えて、全ての証拠が指し示しているのが犯人なのだ。
だから、迷いを振り切る。
「この事件の犯人についてですが、計画性はありましたし、とっさの時のアドリブも良くできていました。けれど、その方法については何となく雑だと言えるところが少なくありません」
「雑……?」
朱奈の怪訝そうな顔に頷いてみせる。
「ええ。雑。指紋を一切拭き取らなかったり、証拠の回収を忘れたり。……けれど指紋についてはある程度納得できます」
「どういうこと?」
「それはここが生活する場所だからです。そこに指紋が遺っていなかったら、さすがに不自然でしょう?」
なるほど、とマイラが頷く。
「たしかに指紋が遺っていなければヴィオリアの犯行にはできないかもしれない」
「そう。けれど、却ってそれは好都合でした。……犯人の作った台本に生じた些細なミスが露呈してしまっていたのですから」
「どういうこと?」
「犯人しか知り得ない情報を流した、そういうことです」
ねえ、そうでしょう?
くるりと身体ごとヴィオリアに向き直る。
息を呑む音が聞こえる。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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