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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」28

いよいよ推理編に突入。
いくつか前の記事で書いたとおり、とってもえげつないです。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

神様。
仕事がどんなに辛くても辞めたくなかった理由は、同僚にいさめられるほど不遜なものでした。
分かっているのです。
私はあの人を愛する資格はない。いえ、愛してはいけないのです。
メイドだから、ではありません。
あの人は既婚者なのです。厳しくて嫌みも多いけれど、美しい奥様がいらっしゃったのです。だから私はあの人を愛してはいけないのです。
それにあの人は恩人です。化粧品会社に勤めていた父の仕事が無くなって、路頭に迷うしかなかった私を、同僚を雇ってくれた恩人なのです。その恩人に愛を乞うなど、なんたる恩知らず。だから私はあの人への想いを胸の奥に封印しました。
だから、あの人が亡くなった時も主人を亡くした悲しみだけの涙を流しました。
私にはあの人と恋をする資格なんか無かったのですから。
けれど、私はあの人が亡くなってからもずっとこの屋敷で働き続けました。同僚のように怒られもするけれど本当に本当の偶然で、奇跡のような確率で褒められることが嬉しかったからではありません。
私の心は主人を亡くした時に一緒に葬られてしまったのですから。
けれど、私はこの屋敷を離れたくなかった。大好きな人の思い出が残っているこの屋敷から離れたくなかったのです。いつか暇を出されるその日まで、愛した人の温もりを、言葉を感じていたかったのです。
おかしな話ですよね。
親子ほども年齢が違う相手に恋をして、恋人でもないのにその人の温もりを感じていたいだなんて。しかも相手は既婚者なのに。
自分でも分かっているんです。もしかしたらこの恋は錯覚なのかもしれないと。
神様、あなたは私をお叱りになるでしょうか?
お叱りになるでしょう。倫理的に許されませんものね。
それでも人の心まではあなたに従順ではいられないのです。
私はあの人が好きでした。錯覚だとしても、愛していたのです。たとえあなたに責められ、地獄の業火に炙られようとも、この気持ちだけは後生大事に抱いてゆきます。
ですから。
許して欲しいのです。
分かって欲しいのです。
人は愛故に誰かを殺すことをも厭わないと。

神様。
私はあの人の本を読んでいる間に、どうしてもやらなければいけないことがあるのを見つけたのです。
それは、彼らの忘れ物を見つけて届けることだったのです。
お叱りになりますでしょう。
けれど、わたしはあの人に全ての顛末を話さずにはいられませんでした。

翌朝、真由子が真犯人を突き止めたという情報はスターアイ・グループを駆けめぐり、前日の昼食・夕食と同じように朝食を済ませたあとに応接間に全員が集まった。
「犯人が分かったって本当なの?」
「ええ。時間が掛かってしまいましたが、ようやく見つけました」
「さっさと話しなさい」
短くかつ威圧的なメアリを一瞥すると話し始める。
「魔女と呼ばれた犯人は、まず殺人計画を立てました。スターアイ・グループでは誰の家のメイドにもものを命ずることができますね」
「え、ええ……確かにそうよ」
真由子は一度頷いてから、全員の目を見て語り続ける。
「つまり、スターアイ・グループの一員であるローズシープ家のメイドに、あなたがた全員が命令するチャンスがありました。……もっとも、初日にあったダイアナさんのイヤリング事件は関係ないでしょうが」
あのカフェも、確かスターアイ・グループの誰かが経営していたはずだ。けれどきっと、それはただの偶然だろう。
「偶然に偶然が重なって、私たちとあなたがたは出会いました。イヤリングという、ひとつのつながりによって。そして私たちはローズシープ家に招かれ、そのドアに悪趣味すぎる落書きが施されているのを発見します」
「知っているわ。ダイアナが気味悪がってたもの。馬鹿馬鹿しい、どうして私たちが地獄に堕ちるのかしら」
忌々しそうにメアリが吐き捨てる。
「メアリお嬢さま……」
ケリーが発言を憂えるように目を伏せた。
「ま、普通はそうですよね。余談ですが、皆さんは聖書、よく読みます?」
「私たちだってキリスト教徒だから読まないことはないけれど……ミサの時に読むことが多いかしら」
確かにスターアイ・グループは企業の御曹司とご令嬢の集まりだ。会社の経営や社交パーティーだってある。聖書ばかり読んでいるわけにはいかないだろう。
「魔女と地獄がどう関係あるのか知りたくて、聖書を読みました。
正直に言って、異教徒で英語もそんなにできない私には深く理解することは出来ませんでした」
けれど、と真由子はマイラをまっすぐに見つめる。
「どうしてこの事件がこうなのかはわかりました」
「どうして、こうなのか?」
「ええ。未来ちゃん、思い出したくないだろうけど、覚えてる?第一殺人」
言われて未来が頷く。
「覚えてるわ。ダイアナさんの事件でしょう?」
「そう。朱奈ちゃん、まだ記憶に残ってるよね?第二殺人」
朱奈が頷く。
「でも真由ちゃん、聖書にそんなシーンあったの?」
真由子はそれに頷き返す。
「ないわ。まったくそんなシーンはないの。……洸ちゃん、とっとと忘れたいだろうけど少しだけ思い出して?第三殺人」
「記憶に新しいわ。昨日の夜あったばかりだもの」
洸は少しだけ悲しそうな目をした。真由子はそうね、と返し、先程からイライラしているメアリを一瞥するとエリシアに向き直った。
「さて、先程朱奈ちゃんに言ったとおり、この事件は同じシーンが聖書に載っているわけではありません。では何故聖書の話を持ちだしたか?答えは簡単です。あの落書き……もといメッセージと関係があるからです」
どのあたりが?とエリシアが怪訝な顔をする。
「あなたがたキリスト教は自殺がタブーでしたね」
「ええ」
「その理由は?」
あ、と朱宇が声をあげる。
「神が禁じたから、だ……」
「そう。いいですか、神が禁じた行為を敢えてやることは地獄への追放を意味します。あなたがたの地獄はどのようなものか、私には分かりません。けれど、これだけは断言しましょう」
そうして、まるで睨みつけるように力を入れて、相手を見据える。
「地獄に堕ちて欲しいからこそ、魔女、いえ、犯人は経口接種という形での毒殺を行ったのです」
「経口接種での毒殺が、地獄におとす手段……?」
「自殺じゃないじゃない」
「そうです。これは私たちから見れば立派な殺人事件。けれど、考えてみて。毒の入ったカップを知らずにとはいえ口に持っていくのと、注射で無理やり毒を注入されるのと、どう違うかしら?」
そうね、とみさきが答える。
「能動(アクティヴ)と受動(パッシヴ)の違いかしら」
真由子は少しだけ思考を停止する。
「すみません、日本語でお願いしていいですかね?」
「能動と受動の違い、って言ったの」
「あぁ……いけませんね、私もう少しボキャブラリーを増やさないとイギリスで生活できないわ。そうです、まさしく能動と受動の差。……単語間違ってたらすみません」
構わないわ、とアメリアが返す。
「それで、どうして毒殺が自殺に?」
「簡単なことです。……能動的に毒殺されるという行為は自分から毒を体内に取り込むことに他ならない。それは簡略化した行動だけ見たら自殺に他なりません」
「……」
「自殺はタブーです。神が禁じた行為です。それを行うということは、死後に訪れる天国という名の楽園からの追放、つまり地獄に堕ちるということです。犯人の狙いは魔女伝説なんかじゃない、まさしくこれだったんです」
「じゃあ、なぜヴィオリアの伝説が?」
マイラが疑問の声を上げる。それに真由子はメモ帳を取り出した。
「魔女は魔法を使うでしょう?何故魔女が生まれたか、知っていますか?」
「……」
「魔女はもともとキリスト教徒ではない女性の総称と言われています。一柱の神にのみ従うのではなく、沢山の自然の神を敬い、共存する民族をキリスト教徒はこう呼んだのです。黒魔術、ってご存じでしょう?」
「人を呪ったりする、あれだろ?」
「そうです。黒魔術は自己の欲求を満たすための魔術であると同時に魔術を掛けられる側が不都合な魔術の総称なんです。……対の概念に白魔術という代物もあるのですが、魔術という点では白か黒かの違いです」
「それで?」
「ヴィオリアは……最後は黒魔術の使い手と成りはてたんじゃないでしょうか」
「黒魔術の使い手と成りはてた?」
エリシアが聞き返す。魔術とは元々雨乞いのような儀式を起源とする行為だから、ヴィオリアの秘薬作りだってその呪術的な儀式の流れから派生したものではないのだろうかと言いたげにも見える。要するに、犯人が魔女伝説を扱うのならばこの殺人事件も納得がいくのにどうして納得のいかない方で説明しようとしているのかが分からない、ということである。
「伝説の最後でヴィオリアは何をつくりましたか?……そう、人を堕落させ、死に至らしめる毒薬でした。マイラさん、ヴィオリアの秘薬、もう一回教えてください」
「あぁ……確か『秘薬のうち、あるものは快楽を呼び覚まし、塗られた者は悪魔の手に落ちた。あるものは塗られた者も知らないうちに死の世界へと自ら旅立った。あるものはゆっくりと体を蝕み、苦しみの淵でもがきながら死の世界へ旅立った。あるものは血を吐き苦しみながら死の世界へ旅立った』……だったかな」
「今回、いちばん最初の『秘薬』は別の人物によって使われていたと言っていいでしょう。……快楽ではなく、恐怖を呼び覚まし、後の事件への引き金となってしまったけれども、それはその人物の想定外の出来事だったに違いありません」
「想定外……?」
「そう。それこそが一番の誤算。……この事態を一番気に病んでいるのは……落書きを仕掛けた張本人なんじゃないでしょうか……アニーさん?」
くるりと真由子はアニーのほうを見る。彼女は困ったような、悲しいような顔をして真由子を見つめ返していた。
「私……ですか……?そんな、誤解です!どうして私が……」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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