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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」27

誰かのモノローグ。
推理編の開始です。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

マイラ・ブラウンはあてがわれた部屋のベッドで横になっていた。
スターアイ・グループで過ごした日々を少しだけ思い出す。
楽しいことも、そうでないことも沢山あった。けれど、ある一点において、彼は仲間を許すことができなかった。
あれさえなければ彼らは今日、殺されることもなかったのではないだろうか?
犯人は分からない。
けれど、大体の目安はついている。
きっと犯人はマイラの代わりに罪人に罰を与えてくれたのだろう。彼はそんなことを願った覚えも頼んだ覚えもないのだけれど、きっとそうだ。
腕の中に大事に抱きしめていたものを奪われる感覚というのは慣れることはない。
あの3人が死んだ時も背筋が凍るほどにぞっとして、それから解凍されるような感覚に陥った。もしかしたら取り調べの時に余計なことを口走ってしまったかもしれない。
けれど、彼はそれを後悔する術を知らない。
犯人に全ての咎を押しつける気はない。自分だって同じ事を考えたのだから。
だからこそ、彼は思うのだ。
この世に本当に神様がいるのならば、どうして自分たちをこんな目に遭わせたのかと。
彼は神の愛し子の人形のままでいたかったのに、人形は捨てられては生きていけないのに、どうして捨ててしまったのかと。
――神の愛し子……か。彼らこそがそうだというなら、僕はきっと天国へは行けないかな……。
数ある伝説のひとつでヴィオリアを焼いた聖なる焔。
あれに焼かれて彼も死ぬのだろうか。
そう考えて、それも悪くないなと彼は笑った。
何故なら彼は神の愛し子。神に愛され、その愛を失った哀れな子羊なのだから。
――嗚呼、それでも。私はあなたに懺悔をしないではいられない……。
他の誰が詰ろうとも、彼は自分の犯した罪を悔いることはない。
けれど。
どんなに地獄の炎に焼かれようと、彼は神にだけは自分の本心を告げずにはいられなかったのだ。

大分掛かって、真由子は聖書を読み終えた。
手帳に書いてあったこと。
レオナルド・フィレスのポケットに入っていたメモの意味。
そして、殺人方法の意味。
ダイアナ・ローズシープを死に至らしめた毒薬がどこに仕込まれていたか。
全てが線で繋がって、綺麗な図形を描いていくような錯覚を覚える。
「真由ちゃん、紅音さんがこれ、結果って」
優美から渡された走り書きのメモと写真を見て、図形の全体像がはっきりしたものになって行く。
数カ所で採った指紋がそれぞれ違う理由も、なぜレオナルドがヴァレンスの部屋で死んでいたかも分かる。
そして、ことあるごとに出てきた妖精の意味も。
だから真由子はこれで捜査は終了だと告げた。
「明日、朝イチで真相を話すわ。だから……今は何も言わないで」
窺い知れた動機があまりにも切なくて、そのまま彼女はゲストハウスの自室に戻った。

彼女は部屋の窓から月を見ていた。
ここから身を投げたらどんなに楽だっただろう。
けれど彼女にはそんなことはできない。彼女は神に愛された羊だから、神の愛をこれ以上裏切ることなんてできなかった。幾ら捨てられた人形だからといって、冷たい雪の中に置き去りにするなんて許されない、そう思っていた。
――それでも、私はどこかで許してしまっていたのかもしれない。
だって冷たい雪の降る日にあの人に出会うまで、彼女は彼らの咎を許そうとしていたのだから。
月は相変わらず光ってはいたけれど、彼女はそれが恐かった。
その月の向こうからあの人が歩いてきそうで、恐かった。
不意に、その月の光が遮られる。
「……?」
まるでレモンのマカロンにクリームを掛けたように、月に雲がかかっていた。ドアのほうから囁く声が聞こえる。
「あなたの忘れ物は……取り戻せた?」
忘れもしない、あの人の声。
彼女はこの声に屈して神の愛を裏切った。
神に裏切られた代償に、あの声を手に入れた。
「……取り戻せたのかしら……」
取り戻せたのかと言えば、否と答えるしかない。
けれど、その人の言う『忘れ物』の正体は分かったような気がした。
だから曖昧に言葉を濁す。
「声に迷いがあるわ」
だというのに、その人の声は初めてあった時と変わらず優しくて、泣きそうになる。
「……あなたの、いえ、彼らの忘れ物は取り戻せるものではなかったのかもしれないわね」
「そうかもしれません」
「後悔してもしなくても、これで彼らは地獄へ行く。あなたに迷いがあっても、ね」
「……はい」
彼女はゆっくりと膝を付いて、再び雲間から顔を出した月に跪いた。
なぜなら、彼女は今でも神を愛すことしかできないのだから。

彼女は赤を瞼の裏に思い描いた。
赤。
赤。
赤。
トマトのような赤ではなく、バラのような緋色。
「ごめんなさい……」
何度も何度も、バラの花びらみたいに真っ赤な血が彼女の身体に降り注ぐのを妄想した。
絶望に満ちた瞳でこちらを見つめて死んでゆけばいいと思っていた。
それなのに、彼女はそれを実行することができなかった。
神に捨てられても、神を裏切ることができなかった。
あの部屋の赤いペンキは彼女の涙。
大切に手の平に閉じこめておいたのに、強い風になびいて彼女を捨ててしまった羽への恨みの涙。
せめて手の平にあったはずの羽には気付いて欲しかった。それでも、それはその命を終わらせるまで気付くことはなかった。
彼らが残した忘れ物は、彼女にとっては心臓を裂かれるような痛みを残すばかりだった。
早く引き取って欲しいのに。
彼らはそれをはねつけた。
手紙の主に気付いて欲しかったのに。
彼らはそれから目をそらした。
私の前から逃げ出すのなら、あなたは魔女ではないのですか?
その問いに、彼らは答えてくれなかった。
「私は結局……用済みなのね」
ぱたぱたと枕に涙が落ちる。いつか呼んだ日本の物語みたいに真っ赤な色をしていたらどんなに良かっただろう。彼らに見せてやれればどんなに楽だっただろう。
でもそれはかなわない。
既に彼らは地獄へ行ってしまったのだから。
――それでも、神様。私はあなたを許すことができないのです。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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