FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」23

続きです。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

「ねぇ、絶対にヴァレンスがやったのよ!」
メアリが洸に縋る。洸はどうしたものかと少しだけ考え込んだ。
「動機が分からないことには断言の仕様がありませんけれど……ダイアナさんの時と合わせて考えるとメイドさん達も共犯、ということになるんでしょうか」
「そうよ、そうに決まってるわ。絶対そうなのよ!」
「……動機が分からないですし、どうしてメイドさんがそんな自分の得にもならないことをしなければならないんですか?」
メイドにとって自分が仕える家というのは当然ながら職場である。その家の者を殺すというのは即ち首になるということであり、下手をすれば職場が無くなるということでもある。
そんな自分にとってなんの得にもならないようなことをはたして彼女たちがするだろうか。
家の者を皆殺しにするつもりならばあるいは、と言えるかもしれないが、メアリが疑うメイドとは即ちローズシープ家のメイドであってスターアイ家やフィレス家のメイドではない。ましてや主人と婚約関係にある者を殺すというのはメイドの犯罪にしてはやり過ぎである。
「……それが私たちの決まりだからよ」
「決まり?」
「そう。スターアイ・グループの決まり。その家の財産を盗むだとか会社の利益を損なうだとか、経済的にダメージを与えない限り、私たちはどの家の使用人に命令しても良い決まりになっているの」
スターアイ・グループでの決まり事。まだ沢山ありそうな気はするが、そのうちのひとつと言うことだろうか。しかし、よほど仲が良かったのだろう。他人の家のメイドにまでいろいろと命令して良いなんて洸は聞いたことがなかった。
「スターアイ・グループ以外のお家のメイドさんには命令はできないんですよね?」
「ええ。私たちだけよ。何かして欲しければ主人を通すかお願いするしかないわね」
「それが普通です。……仲がよろしいんですね」
メアリは頷く。
「ええ。まぁ、それが多少自分に影響することであっても見なかったふりをするのだけれどね」
「見なかったふり……?」
「そうよ。見逃してあげるの。だからみんな感謝してるはずよ」

キッチンに飛び込むように入ると、サリアは後ろ手にドアを閉めた。そのままずるずると座り込む。夕飯の準備の時間が迫っていたが、彼女は何をする気にもなれなかった。
一体今朝から何が起こっているのだろうとぼんやり考える。
――ダイアナお嬢様が殺されて……ヴァレンス様が殺されて……今度は誰なんだろう。
しきりにヴィオリアが起こした殺人だと囁きながら、彼女は心の中が冷えてゆくのを感じていた。
ヴィオリアの伝承などこのヴェルビオラには掃いて捨てるほどある。
好意的な物だったり、マイラ・ブラウンの話した物のように悪意に満ちていたりする物もある。
――ヴィオリア……あなたは本当に魔女だったんですか?私には秘薬を創る、私の大切な……。
そこまで考えてばかばかしいと頭を振る。
ヴィオリアは魔女なのだ。
村人をバラに変えられるかどうかは別として、吸血鬼のように血を好んだかどうかは知らないけれど、とにかく彼女は魔女なのだ。
おそらくいるであろう真犯人は彼女が糸で操るマリオネットでありさえすればいい。
動機なんて沢山ある。けれど彼女はそれを知っていてはいけないのだ。
メイドである時の彼女は知っていてはいけないのだ。
どんなにこの家にとって不利なことを知っていようと、この事件に対して知っていることがあろうと、メイドである時の彼女は知っていてはいけないのだ。
「ねぇ、そうでしょう……?」
胸元を探るとちゃり、と澄んだ音がしてロケットペンダントに指先が触れる。卵形で銀色に光るそれは、彼女がメイドでない時の思い出を忘れないために買った物だった。留め具に触れて開けた中には、若草色のドレスを着た彼女とすみれ色のドレスを着た大切な人が笑っている。その人の名を、サリアはそっと紡いだ。
「レティー……」

手紙を貰って、彼は言われたとおりに指定の部屋にいた。
「ヴィオリアを愚弄した……か」
コツンと窓に額を付けて彼はつぶやいた。
ひんやりしたガラスが気持ちいい。
今にも泣きそうな顔をしていたあの日本人の探偵に真顔で言われて、彼は少なからず驚いた。
彼女がそれを信じる質には見えなかったからだ。
階段が嫌いだと言っていた割には大人しく捜査を進めているものだと思う。
取り調べにはいると言ったものの、正直に言って彼は生き返ったヴィオリアの存在なんて信じていなかった。
信じていたら友人を馬鹿にしなかったのだから当然と言えば当然だろう。
「いや、ヴィオリアは生き返ってなんかいない。そんなはずはない……だって僕のご先祖様に殺されたはずじゃないか」
それが教会の者かどうかは問題ではない。それよりも問題だったのは、ヴィオリアと名乗る黒羊のことだ。
彼らはスターアイ・グループ。
会社も家族も使用人すらも、裏切ることは許されない。それは神への裏切りに等しいからだ。
「……裏切り?」
その単語にはっとする。そして首を横に振る。
許されない。
許されない。
ありえない。
ありえない。
あの事が例え誰かを傷つけたとして、それは彼の責任ではないはずだ。
そうだ、それは彼らの責任ではない。
仕方のないことだったのだ。
だから彼らが責められる謂われはないはずだ。
ならばそんな不遜を働く魔女は誰だ?家族、使用人、友人。浮かんでは消える、見知ったその顔に傷つけた覚えは全くない。
スターアイ・グループに於いて友人内で恋人を作るのなんていつものことだった。
では誰が?
誰がこんなことを?
信じられない。
ふとノックの音がして、誰だいと問いかける。
ドアの外の声は意外と素直に名前を告げた。
「何か用かい?」
招き入れると、なぜこんなところにと尋ねられ、なんとなくだと答える。
「君はどうして?」
その人物はすっ、とティーカップを差し出した。疲れていると思ったという優しい配慮に感謝する。
「ありがとう。飲ませてもらうよ」
それは香り高いカモミールティーだった。香りを楽しみながら温かいそれを煽る。
このまま歓談を出来たなら、それはなんて幸福な時間だっただろう。
けれど彼は見てしまった。それを飲み干した瞬間、相手の口元が弧を描いたのを、見てしまった。
「どうしたん……!?」
最初に感じたのは息苦しさ。首を絞められてもいないのにどんどん肺に入る空気は少なくなってゆく。
目の前の相手はにこりと笑って、こう言った。
「この裏切り者……魔女が」
魔女はお前だ、その言葉さえひねり出せない。手を伸ばすとぽろりとあっけなく小さな硬い物が手に触れる。彼はそれにも気付かずに椅子から転げるように降りて、鏡台の前まで這ってゆく。
どうにかして、これを伝えなければ。
縋る思いでやっと立ち上がり、香水の瓶に手を伸ばした。ぱたんと落ちた何かにも気付かないままに。
スポンサーサイト

テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

最近の記事
これ以外にも、NOVEL INDEXを随時更新中です。
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
二次創作は「その他創作」からどうぞ。
FC2カウンター
FC2カウンターおんらいん
現在の閲覧者数:
無料カウンター
ブログランキング
FC2 Blog Ranking にほんブログ村にほんブログ村 小説ブログ ミステリー・推理小説にほんブログ村 ホラー・怪奇小説 長編小説 air-rank
サーチ様
検索エンジン Mono Search
ブログ開始から何日経った?
ブログ内検索
リンク
相互リンクサイト様、素材サイト様、管理人別サイトの紹介です。
このブログをリンクに追加する
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。