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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」22

続きです。
もう4月ですね~……。昨日まで修羅場でした。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」


真由子がヴァレンスを伴って彼の部屋に戻ると、優美とみさきが簡単に検死の結果を教えてくれた。一旦スターアイ・グループを応接間に集め、もう一度事情聴取を行うという指示に従う。
「ミスター・スターアイ、あなたどこで何をしていたんですか?」
朱奈が少しだけきつい口調で問う。一大事の時にいなかったことが大分気に掛かっていたようだ。
「あ、あの、朱奈ちゃん、ちょっと私と話してて……」
「真由ちゃんと?え、でも真由ちゃんヴァレンスさん呼びに行ったんじゃ……」
「……ごめんね、……違うの。私、本当に情けないことなんだけど現場から逃げ出しちゃって……そしたら階段登ってきたの」
朱奈だけではなく、優美達も呆気にとられたような表情になる。ややあって、透子が遠慮がちに尋ねた。
「……あの、真由ちゃん、目が赤いけど……もしかして泣いてた?」
「半べそ程度。……私が泣いてなんかいられないから……さ、捜査、しよう」

レオナルド・フィレス。毒物による中毒死。死亡推定時刻は15:00。
レオナルドの服はヴァレンスのそれと取り替えられていた。
その情報を元手に捜査は開始されることとなる。

「アニーさん、あなたのアリバイは完璧といっても差し支えないでしょう……それで、ダイアナさんの時もお聞きしましたが、レオナルドさんが恨みを買うようなことをしたという覚えはありませんか?」
「いえ……私はメイドですから、基本的には雇用者のプライバシーに踏み込むことはないので……」
アニーは首を横に振る。
「ダイアナさんの時もそうでしたから予想はしていました。あ、えぇと、ゲストハウスのベッドメイクというのはシフトですか?」
「はい。急遽ゲストハウスが使われるようになったのでシフトを組んだんです」
「それは誰が?」
「サリアさんです」
「サリアさん、ですか」
「ええ。昨日の夜にお仕事が入っていなかったので頼んだんです」
アニーがシフトを組んだのではないという事は、彼女が恣意的に動ける時間は限られてくる。シフトを組んだのはサリア。
だとすると、彼女が恣意的に動ける時間は作れるのかもしれない。
「あの、ただ、その時間の前ですとサリアさんは台所にいたので……その……」
「台所……彼女が殺したという路線はシロだと思いたいですけれども……」
そう返事をすると、アニーはこちらを伺うような素振りを見せた。
「あの……本当に、ヴィオリアが生き返ったんだと思います」
「根拠は?」
「手紙です」
手紙。緋色の手紙。
呪いの手紙が根拠、というのは珍しいことではないかもしれない。
ただ、突如現れた緋色の手紙、という状況自体が真由子は気にくわなかった。
どうせ魔女だと主張するのなら、正面玄関から堂々と入ってきて、全員の目の前で魔女ですと宣言すればいいだけの話ではないか。ついでにカボチャを馬車にでもしていけばいい。
なぜそうしないのか。
それは彼女にはうすうす分かっていたことだけれども、それを口にするのはあまりに野暮というもの。言葉にして出すのは簡単だけれど、そうしてしまえばヴィオリアはまた死んでしまう。それにせっかく生き返ったヴィオリアを心ない言葉で殺してしまうのは彼らに辛い現実を突きつけることになる。
「……そう仰るのならヴィオリアは生き返ったのかもしれませんね」
真由子のその言葉に、アニーは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。

「私はアメリアやマイラと一緒にいたわ。たまにお手洗いに行ったりお菓子をもらいに行ったりしていましたけど、それもほんの少しの時間だったはずよ」
なるほど、と未来は頷く。アメリア達の話と筋は通っている感じがする。
「ということは、エリシアさんはヴァレンスさんの部屋には行かなかった、ということですか?」
「ええ。いずれは兄弟になるからでしょうね、あの二人はよく一緒にいるのよ」
「そうなんですか……恨みを買うようなことは?」
「沢山あったわ。ヴァリーもレオンも……でもね、きっとヴィオリアが罰を与えたんじゃないかなと思うのよ」
「ヴィオリア、ですか」
またヴィオリア。ヴェルビオラの住人はよほどこの魔女が好きらしい。
自分たちを殺そうとした悪魔にして彼らの栄光の象徴だからか。
魔女なんて御伽噺の産物だと未来はずっと感じていたけれど、昨日マイラから聞いた魔女伝説にも信憑性はあった。もっとも人を呪わば穴二つのような寓話めいた感触があったのは否めないが、それでも教会の宣伝や魔女を邪悪なものとするには充分な内容だったと思う。けれど、今この屋敷の住人、つまりはスターアイ・グループはほとんどが魔女が生き返ったのだと公言してはばからない。
「うん。だってヴィオリアは魔女ですもの。魔女がいるとしたら……それは色々な人の恨みが籠もった人形のような物なんじゃないかしら」
なんだか頭が混乱してくる。魔女は恨みの籠もった人形?何かの比喩だろうか。それとも言葉通りの意味か。
分からなくなってくる。
「人形ですか」
「ええ。糸のついたマリオネット。操っているのは恨みを持つ人達よ」
それはそうと、とエリシアが話題を変える。
「これが役に立つかは分からないんだけどレオンがね、殺される少し前だったかしら、指輪を拾った、って言ってたのよ」
「指輪……?」
「ええ。ヴァリーの婚約指輪か何かじゃないかしら」
なるほど、それなら納得できる。ともかく指輪、と未来はメモ帳に書き付けた。

透子はケリーと一緒にいたというサリアの証言を信じてはいた。けれど、嫌な想像が脳裏をよぎる。
二人が共犯だとしたら証言なんて無駄ではないのか?
そんなわけないと思いつつ、諦め半分に殺人犯の心当たりを聞いてみる。
「ヴィオリアです」
「……そうですか」
瞬殺も何もあったものではない。これではまともな取り調べにならない。
どうしたら何か情報を引き出せるだろうか。
考えろ。
考えるんだ。
そう自分を叱咤していると、ある疑問が浮かんでくる。
「あの……ヴィオリアって、ヴェルビオラの人達にとってはどういう存在なんですか?」
「……私たちにとって……わかりません。私、そんなこと考えたこともなかったもので」
「じゃあ、なぜあんな伝説が?」
「今は寄付金が無くてつぶれてしまいましたが、昔はこの村に教会があったんです。きっとそこの人達が説いたのが始まりだと思いますわ」
「……ヴィオリアの容姿が詳しく出てこないのもそのせいだと?」
サリアは頷く。
「ヴィオリアは色々な顔を持つ魔女でしたから」
「今でもですか?」
「そうだと思います」

朱宇と優美は鑑識チームと共にレオナルドの遺体を調べていた。
「司法解剖はしないとはいえ、あまり気分の良いものじゃないですね」
ビニールシートの上に横たわる遺体を見て未来が顔をしかめる。
「そりゃあそうよ。できればあんた達には見せたくなかったんだけど……人手は多い方が良いのよ」
みさきが溜息を吐いた。真由子とパイプラインがあるらしい彼女が思いの外に自由奔放なことを知って、優美は少しだけ驚く。ついでに、みさきがほんの少しの気遣いを見せてくれたことにも驚いた。
真由子から聞く紅河みさきの人となりは、天上天下唯我独尊にしてツンデレ凶暴女王様だったからである。ツンデレの辺りに優しさの片鱗が見え隠れしてはいるものの、もっと傲岸不遜な人物だと思っていた。そんなことを考えていると、紅音がとんとん、と肩を軽く叩いた。
「無理はするなよ?みさきだってああ言ってるけど、お前らのメンタル面を傷つけたい訳じゃないから」
「分かってます。……大丈夫ですよ」
真由子とつるんでいる警官達はその外見よりも個性が強烈すぎて、何となく彼女に影響を与えているんだろうなと優美は考える。朱に交われば赤くなると言うけれど、どうやらそれは本当のことらしい。そんなわけでとりあえず彼女はレオナルドの遺体の死に顔を見ないようにしながらじっと眺める。そのシャツの胸ポケットに小さく折りたたまれた紙切れを見つけて引っ張り出す。
それは筆記体で書かれていた。なんて書いてあるのかは分からない。
「あの、これが見つかりました」
紙切れを渡すと、みさきが受け取って小さなビニール袋に入れる。朱宇がぽつりと呟いた。
「結局、これって人間の仕業なんですよね?」
「私はそうだと思ってるわ。結局のところ私たちが思い浮かべる魔女ってのはこの世にはいないの」
「まぁいるとすればハロウィンの日に来るぐらいですかね?……いや、来ないか」
「来ないんですか?」
思わず問うと、唐也はうん、と頷いた。
「だってほら、ハロウィンはお盆みたいなものなんだけど、あの世の概念っていうのがまずわからないでしょ?あの世ってどういうところなのかはまだ生きている学者の誰も分からない。そもそもそんなものがあるのかさえ分からない」
「あ~……たしかにそうですよね。そんな話をする人もあんまりいないし」
「それはね。心霊学者とか霊能者は別かもしれないけれど、本物かどうかなんて誰も分からないでしょ?だからあの世もそっちの世界の住人ぐらいしか分からないんじゃないかなぁ?」
唐也の言っていることは大体分かる。あの世の概念がないということはつまりあの世という世界の存在自体があやふやだと言うことだ。存在自体があやふやなものを存在すると客観的に断言することは断言する者の主観にゆだねられるので難しすぎる。ついでに言えば存在しないと言い切ることも難しすぎる。俗に言う悪魔の証明という奴だ。
従って悪魔の証明に巻き込まれるあの世という存在からきた魔女なるものも存在するかどうかは怪しいというわけである。いない立場を取ればいないことになり、いる立場を取ればいることになるからである。
ではヴィオリアはどちらなのだろう。第一殺人のあとの取り調べでほとんどの人間がヴィオリアの存在を口の端に登らせた。にもかかわらず伝承に統一感はない。
ではマイラが言っていた妖精は?
庭の草むしりを手伝ってくれる小さな妖精。彼らは悪戯も良いこともする。妖精というものはそういうものなのだろうか。そう言えばイギリスにはこの手の話が多いなとも思う。
それはそうと、真由子は怪談話が苦手だったはずだが、今回の事件は先ほど逃げ出したとはいえやけに大人しく捜査をしているなと思う。もしかしていつも捜査の時はこんな感じなのだろうか。妖精やヴィオリアの話と合わせて聞いてみようか、などと思って優美は少しだけ笑った。

「ケリーさんはサリアさんと一緒にいたんですよね?」
朱奈の問いにケリーが頷く。
「ええ。レオナルド様をお捜ししていたものですから」
「たしかその時、アメリアさんが探していたって言ってましたね?」
「ええ。少し……話したいことがあるから、と」
話したいこと。それはなんだったのだろう。
アメリアに聞けば分かるだろうが、聞くのはあまりにも憚られた。プライバシーだからだ。本当に聞かなければならない時になるまでできればそっとしておいてあげたい。
「……レオナルドさんが殺される心当たりは?」
「私よりもトニーやフェニアのほうが知っていると思います。レオナルド様のお屋敷の使用人ですから」
「……なるほど」
あの二人ならば知っていそうだ。特にトニーのほうは随分真由子と気があっていたようだから、彼女を連れて行けばさぞかし話も弾むに違いない。
ふと、ミス・タチバナ、と名字を呼ばれて我に返る。
「なんでしょう」
「この事件はヴィオリアが起こしたものです。ヴィオリアと……その使い魔の妖精が皆殺しにしようとして引き起こしたものなのです」

やはりというべきかなんと言うべきか、メアリがヴァレンスを犯人だと言ってヒステリーを起こしたため、彼の取り調べは真由子が行うことにした。メアリの取り調べは洸がやってくれている。
「あの、先ほどは色々とありがとうございました」
「ううん、流石にあんなところに1人で座り込んでたから僕もビックリしたけれど……」
「それで、たしかクローゼットの中にいらっしゃったとか」
「うん。意識が途切れたと思ったらクローゼットの中にいて……レオンの服を着ていたんだ」
先ほども聞いたことだ。意識が途切れたと思ったら部屋にいたはずなのにクローゼットの中にいた。これで一緒に閉じこめられている人間がいたならば彼のアリバイは確保されただろう。
しかし、である。
そうは都合良く行かず、彼は1人でクローゼットの中に押し込められていた。
この事が彼のアリバイを弱くしている。
いや、ほぼ無いに等しいか。
強引に推理をしてしまえば、レオナルド・フィレス殺しについてはヴァレンス・スターアイを犯人にしてしまうことも可能だ。
つまり、レオナルドとヴァレンスが争うか何かの事態に陥り、ヴァレンスがレオナルドの頸動脈を押さえて落とすか何かして互いの服を交換する。そうしてレオナルドを自分の部屋に運び、起こして毒を飲ませて部屋を出る。手紙を落とす。
それが一番わかりやすい説明ではあるだろう。同時にメアリも思いついたに違いない。けれども根拠がどこにもない。手紙を置くことで同一犯による犯行を狙ったのかもしれないが、そんなことを主張したところで騙せるのはメアリぐらいなものだろう。
「紅茶を飲んだあとだったんだ……レオンも倒れたと思ったんだけれど……きっとこれはヴィオリアの仕業なんだよ。今度こそ僕らを皆殺しにするつもりなんだ……!」
ヴィオリアの仕業。
殺人事件の初めから彼らが主張してきたこと。
ヴィオリアは魔女。
魔女。
魔女。
魔女を愚弄したものは秘薬によって殺される。
――……愚弄したもの?
まだうじうじと悲愴なうめき声を上げているヴァレンスに声を掛ける。
「あなたは、ヴィオリアを愚弄したことがあるのですか?愚弄しなければ怖がるものでもない気がするのですが」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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