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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」21

さて、後半戦に入ってきました。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

早く、早く行かなくては。
その思いが真由子を走らせた。ようやく見えてきたドアに乱暴にノックをし、中の様子にかまいもせずにドアを開ける。
「あら、真由ちゃん?」
「よかった……真由子ちゃんのおかげで命拾いしたよ」
のんきに唐也をいじめているみさき達がそんなことを言う。
「そんなことはどうでも良いんです。早く来てください!」
「早く来いって……どこに」
「ヴァレンスさんの部屋です!」
「ヴァレンスの?どうかしたのか?」
「様子がおかしいんです!あと床に赤い染みが……」
それを聞くと、みさきの表情が一瞬で険しい物に変わる。
「すぐ行くわよ。急いで」
「はい」
みさきが救急鞄を持つのを見届けてから、真由子はまた駆けだした。走りながら携帯電話を取り出してダイヤルする。時差など全く考慮しなかったが、それでも相手はきちんと電話に出てくれた。
『はい、もしもし』
「玲さん、ですか?」
『ええ。私よ。どうかしたの?』
「今イギリスにいるんですけれど、事件に巻き込まれちゃいまして。それで血がどれだけ流れれば人って危ないんですか?」
電話の向こうで一瞬答えに詰まる声が聞こえた。
『え、全体の量の三分の一よ。全体の量は体重1キロあたり60ミリリットルって考えればいいわ』
「ありがとうございます」
『待って。星李が、血の出ている場所によって生きていられる時間は違うし、毒殺なんかだと失血死じゃなくて毒物が心臓にまわったり筋細胞に作用を及ぼしたりするから窒息死か中毒死を疑えって』
「……!ちゅうどくし、中毒死……まさかっ」
『真由ちゃん?』
「……いえ、ありがとうございました。それじゃ、切りますね」
電話を切ってヴァレンスの部屋へと走る。
「今戻ったわ!」
部屋に駆け込んで、捜査用の手袋をはめて、染みを踏まないようにくるりと正面に回り込む。
「ヴァレンス……さん……?」
椅子に座っていたその人物は確かに吐血されたと思しき赤い液体を口から零していた。それは手の平にも付いていたし、顔の下半分にもべったりと付いていた。かっと見開かれた目は何かをそこに焼き付けたのかどうか、今となっては分からない。
「真由ちゃん……もう、ダメみたい……」
「遅かった……っていうか、最初から遅かった……のかな……」
幾ら呼んでも返事がなかったの、と洸が言った。
真由子もそれに力無く返事を返す。けれど、ヴァレンス・スターアイと思しき死体を目の前にして、何か違和感を覚える。
「あのさ……ヴァレンスさんの髪の毛の色って……プラチナブロンドだったよね……?」
「え……うん……それが、どうかしたの……?」
「この人……金髪だよ……?」
その場の空気がぴんと張りつめた。
「え……!?」
ヴァレンス・スターアイはプラチナブロンドのショートだったはずだ。しかし目の前の男性は金髪のショート。
金髪で、この家のこの部屋に自由に入れる人間。
そうなると、自然と限られてくる。
そして、その想像は間違っていることを許さない。
「まさか……レオナルド、さん……?」
紅音がすぐに薄い紙に彼の人差し指を押しつける。ファイルを開いてレオナルドの指紋と照合する。そして、きつく目を閉じた。
「そんな……レオナルドさん……!」
あまりのことに悲鳴さえも出ない。部屋にいたのは、レオナルド・フィレス。
そして彼は血を吐いて死んでいた。

「どういう事なの……レオンが……死んだ……?」
アニーに呼ばれてきた姿の見えないヴァレンス以外の人間の第一声はこれだった。
「レオン!……何かの間違いよ、信じないわ、こんなのっ」
メアリがレオナルドの遺体に駆け寄ってその肩を揺さぶる。
「レオン!ちょっと、ねぇっ、返事をしなさいよ、レオン!」
「メアリさん……」
「ねぇっ、私をからかっているんでしょ!?返事をして!死んだなんて嘘でしょ?ねぇ、レオンっ、……レオン……っ」
揺さぶって、揺さぶって、それでも彼の時間は動き出すことはなかった。彼女の瞳に涙が溢れ、その頬を伝う。
「嫌よ、レオン、私を置いていかないで、レオン!嫌ぁぁぁぁ!」
その膝元に泣き伏すメアリは昨日や今朝の苛烈な面影はなく、婚約者の死という悲しみに暮れる、あまりに哀れな姿を見せていた。
ふと小さく鼻を啜る音がして、そちらを見てみると、アメリアの瞳が赤く染まっていた。その肩をマイラとエリシアが支える。
親しい友人だったからだろうか。後ろから見れば眠るように死んでいたのに、さぞや苦しんだのだろうと想像できてしまったからか。
その光景を見ているのは真由子には辛すぎて、彼女はそっとヴァレンスの部屋から外に滑り出た。そのまま一歩、二歩とよろよろ歩いて行き、突き当たりの壁に背中を預けてずるずると座り込む。
こういう光景を見たのは一度や二度のことではない。以前優美と共に鎌倉に行った時だって見たことがある。
けれど、こういった光景を見て自分が抱く感情は未だ慣れることはない。
助けることができなかった。
私が悠長に事件を捜査していたからまた犠牲者が出てしまった。
けれど今すぐ事件を解決できるかと言ったらそんなわけが無くて、あまりに悔しくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。
いつも飲み込んできた苦い固まりをまた飲み込まなくてはならないのだ。
「どうしたらいいの……」
抱えた膝に顔を埋める。階段を上ってくる足音に、彼女は気付かなかった。
「どうしたんだい?そんなところで」
「きゃっ!?」
急にとんとん、と肩を叩かれて真由子は心臓が止まりそうなほど驚いた。ばくばくととんでもない音を立てて早鐘を打つ胸をどうにか押さえて後ろを向く。そこにいたのはプラチナブロンドのショートの男性。ブルーのワイシャツに焦げ茶のベスト、同色のストレートズボン。その装いは亡きレオナルド・フィレスのそれだったが、髪の毛だけが違う。
「ヴァレンス……さん……?」
「うん?どうしたの?」
彼は階段を上がりきって真由子の前に膝を付く。その心配そうな顔があまりにも優しくて、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「私は……なんでもないんです。でも……レオナルドさんが……っ」
「レオンが?」
「ごめんなさい……私、二人も殺されたのにまだ解決できない……」
悔しくて悔しくて、視界が涙でにじむ。こんなにみっともないところを見せたくないから早く応接間に行って欲しいのに、ヴァレンスはなかなかその場から動いてくれない。
「……ありがとう」
「……え?」
責められてもおかしくない。それなのに、彼は困ったように微笑んでいた。
不意に肩を掴まれ、抱き寄せられる。昨日も嗅いだどこだかの香水の匂いがする。それとはまた別の香水の匂いもする。
「ディーナとレオンのこと、僕の分まで悲しんでくれてありがとう」
「……でも……」
「二人も犠牲が出たのはやっぱり悲しいし、犯人を早く捕まえて欲しいとは思うよ?……だけど、あの二人は殺されてもしょうがないなと誰でも心のどこかで思っているはずだ。真由子さんにはあまり聞かせたくない話だけれど、あの二人は恨まれても仕方ない。だけど君に悲しんでもらえて、少しは報われたんじゃないかな……」
大きな手が頭を撫でる。その感触が幼い頃を思い起こさせる。
「そう、ですかね……」
「うん……だから、泣くのを我慢しなくて良いから……ね?」
頬に感じる温かさに胸の奥が切なくなって、真由子は緩く目を瞑った。泣けと言われたのは久しぶりだったから。
結局そうしていたのは2分か3分ぐらいだった。
少しだけ涙と一緒に余計な感情を洗い流してしまうと、頭の中に漠然とした疑問が浮かび上がってくる。
何故彼は部屋の中にはいなかったのか。
彼はどこにいたのか。
なぜレオナルドの服を着ているのか。
「ありがとうございます……あの、どうしてここに……?」
ヴァレンスは少し言いにくそうな顔をして、やっぱり言いにくそうに言葉を連ねた。
「うん……それが、レオンの部屋でお茶をしてたんだけど、気がついたら誰もいなかったから……」
「気がついたら?」
「そう。気がついたら。意識が遠くなってね、もう一度意識がはっきりした時には暗いところだったな。うん、クローゼットにいたんだ」
「クローゼット、ですか」
ということは、もしかしたらレオナルドが殺された時間帯にはアリバイがないかもしれない。しかし、意識が遠くなった、というのが引っかかる。
いや、本当は引っ掛かってなどいないのかもしれない。
クローゼットにいたことすらも怪しい節があるのだから。
「……とにかく、現場に戻ります。……ついてきてください」
「現場?どこだい?」
「……あなたのお部屋です」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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