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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」20

さて、続き。
今回ちょっと短いですが、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

「ヴァレンス様、アニーでございます」
ドアの前で一度深呼吸をすると、アニーは扉を叩く。
返事がない。
「ヴァレンス様!いらっしゃいますか?」
相変わらず返事は返ってこない。返ってこないのならば、ノックをしても仕方がない。
もしもみさきがここにいたらドアを蹴り開けてくれたに違いない、そんなことをぼんやり考えて、ふと思いつく。
――蹴り開ける?それっていつも鍵が掛かっていた時だけよね?あれ、鍵って、掛かってるの?
ノックをしていたからてっきり鍵が掛かっていると思いこんでいた。完全に偏見である。
「あの、鍵って開いてます?」
「鍵……ですか?」
アニーがドアノブをひねる。かちゃりという音がしてドアが部屋の中身を解放した。境界を跨いで部屋の中に入ったアメリアとアニーが立ちつくす。
「どうしましたか?」
「ヴァレンス……様……?」
「あれ、ヴァリー……よね……?」
部屋の中にヴァレンスらしき人影はあった。だが、背もたれの高い椅子に座っていて判別ができない。本日の彼の装いはグレーのツータックズボンにサックスブルーのワイシャツだった筈だ。ネクタイはしていなかったように思う。それらしき衣装は見えるものの、顔も髪も見ることができないので確信が持てない。その椅子の足下に、ふと真っ赤な染みができているのを見つける。
「……!?」
ざっと血の気が引く。これで本日何度目だろう。もしあの染みがケチャップやトマトソースや絵の具ではなくて、血の染みだったら。なおかつそれがヴァレンス・スターアイの物だったら。
ここに医者はいない。
だが、警察はいる。
まだ息があるのなら、病院に搬送できる!
「そこから動かないで!」
言い残し、真由子は部屋を飛び出した。

紅茶の匂い。
くるくる回るミルクの模様。
それらを見つめながら、私はゆっくりと瞼を閉じる。
考えれば考えるほど曖昧になっていく私とヴィオリアの境界はミルクと紅茶の色の境界に似ている。
御伽噺の魔女は御伽噺に魔女にされた。
私もあなたを魔女にしてあげた。
だからお行きなさい、可愛い私のマリオネット。
血のように赤いバラを、呪いの緋色の手紙を届けなさい。
数々の魔女の秘薬を使えばバラのように赤い血が花開く。
楽しくてたまらないわけではないけれど、どうせ私は残虐きわまりない魔女。
何も怖がることはない。のろわしい相手もどうせ残虐きわまりない魔女。
そしてあなたですらも残虐きわまりない魔女なのだから。
さあ、次にヴィオリアを愚弄するのは、誰……?

神様。
あなたは大切な人がいなくなる瞬間の痛みをご存じでしょうか。
その人自体はすぐそばにいるのに、私の言葉が届かなくなる瞬間の悲しみをご存じでしょうか。
近くにいるのに私は捨てられた人形ですから見向きもされないのです。
そのことが悲しくて、暫く私は暖炉のそばで泣いていました。そうするとあの人が歩いてきてどうしたのですかというのです。
なんでもないのです、と私は答えました。そうするうちにふわふわとした誰かが新しい紅茶とクッキーを運んできました。私に仕える妖精です、とその人は言いました。
あなたには見えるのですね。
その言葉に、見えるものと見えないものとがいるのだと知りました。
見えない人はどういう人なのですか。
私は尋ねました。
「それは自分を偽り、人を貶めて自分だけは聖者であろうとする者です」
その人は、言いました。
それを聞いて、私は遠い日のことを思い出しました。
楽しかった日々。
大切な人に大切にされた日々。
もう二度と戻らない、忘れたくない大切な思い出。
私はその人に聞きました。
「どうして人は大切なことを忘れてしまうのでしょう?」
私はもしかしたら、彼らが憎かったのではなく、ただ、彼らに思い出して欲しくて、思い出してくれない彼らに絶望していただけなのかもしれません。
それでも、私は彼らが魔女だと思いたかったのかもしれません。
だって、そうでしょう?
魔女とは即ち、私に仇なす者なのですから。
けれど、私は分かっていたのです。
私もまた、魔女なのだと。
この目の前にいる女の人もまた、魔女なのだと。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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