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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」16

またまた続きです。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

「今朝?……ゲストハウスの前に?」
「ええ。6時頃なのですが」
アメリアは一瞬逡巡するように考え込んで、ゆっくりと口を開いた。
「その時間なら……いたかもしれないわね。朝露に濡れるバラを見たかったから」
「……千切っても、ですか?」
「それはきっと見間違いよ」
見間違い。
見間違い。
そうであったらどんなに良かったことか。
けれど、真由子は覚えている。
目を擦ってもその姿がぶれなかったことを覚えている。
「……」
「匂いを嗅いでみたり、ちょっとモデル気取りで花びらをくわえてみただけだったのよ」
「……そういう意味での見間違い、ですか」
「ええ。ほら、よくあることじゃない?恋人が他の女とキスしてると思ったら目に入ったゴミを取って貰っていただけだった、とか」
「そう、ですね」
それはあるかも知れない。そう素直に思えたから、納得した。
けれど今度は別の疑問が生じてくる。
「朝露ならもう少し早くても良いと思うんですけれど、いつから?」
「10分くらい前からかしら。うちにもバラはあるけれど、ミニバラだからたまには大輪のバラも見たいと思ったのよ」
「そうですか……私の家にもバラ、ありますよ。……ピンクのやつですけど」
まあ、とアメリアが嬉しそうに笑う。
「今度写真を送ってくれると嬉しいわ」
「ええ、今度お送りします」
「……そうだ、バラで思い出したの」
「……?」
何をだろうか。
「ヴィオリアはね、たまに村人に手紙を出すことがあったのよ」
それが何を意味するのか、真由子はまた分からなかった。

「私は何も知らないわ!本当に知らない!」
メアリ・ローズシープの金切り声を遠くに聞きながらみさきは沈黙した。
本当によく喋る、とぼんやりと思う。ここまでヒステリックに喚き散らして疲れないのだろうか。
「……そう。でもあなた、どうしてそんなにがたがた震えているのよ?」
「だ……ダイアナの死体に、白木の杭を打った方が良いのかと思って」
「白木の杭……って、それじゃヴァンパイアじゃない」
そうよ、とルージュの塗られた唇が動く。魔女に殺されたと主張していたメイドに対して彼らがやったのだと断言したものと同一人物とは思えない。
「ヴィオリアはヴァンパイアでもあるのよ!でなければ血で満たしたバスタヴなんかに入れるはずがない!」
「……お嬢さん、エリザベート・バートリ夫人ってご存じ?」
知ってるわ、とまたメアリが叫ぶ。
「あれは人間よ。れっきとした人間よ」
「その根拠がどこにあって!?」
「伝説が彼女を脚色したのよ。灰被り娘が魔女の魔法でシンデレラになれたように、彼女も伝説の中でだけは確かにヴァンパイアのような扱いを受けられるわ。……ヴィオリアがどうかは私にもまだ分からないけど」
だから知っていることをお話しなさい。そう目で訴えかけると、メアリは俯いた。
「……私、ダイアナは殺されても仕方ないと思ってたの」
「殺されても仕方ない?」
「いっつもヒステリーを起こして、いっつも人のせいにして。自分だけは良い子でいようとしてたのよ」
「自分だけは……ね」
ぽつりぽつりと呟くメアリの姿は先ほどまでメイドに怒鳴り散らしていた彼女と同じ人物だとは思えない。それぐらいに静かでもの悲しい姿だった。
「お母様は私たちの努力の結果しか見なかった。どんなに頑張って勉強しても必ずトップに近くなければならなかったの。だからいつもダイアナは嫌みを言われて、私も嫌みを言われたけどダイアナにも嫌みを言われて……そういう人はいっぱいいたこと、私知っているわ。私だって嫌みを言っていたから知ってる。ケリーやアニーが私たちに良い感情を持っていないこと、知ってるわ」
「……そうね。私はあなたじゃないからあなたの気持ちを分かれといわれてもできないわ。……けれど、同情ぐらいはしてあげる」
メアリが微笑む。
「ありがと。……お父様も、メイドをどうしても甘やかして、趣味に没頭したこともあったから私たちのこと、あんまり構ってくれなかった」
彼女の言う甘やかす、とはメイドのミスを叱りつけてそのままにしない、ということである。メイドから見ればそれは良い雇用者といえるだろう。ミスを見逃すのかフォローするのかは分からなかったが、とにかくメイドのミスを指摘しっぱなしではない、というのは雇っている側からすれば甘やかしていることにもなりうる。
「きっとメイドさんから人気があったんでしょう?」
「ええ。お父様の愛人になりたいと吹聴していた輩もいたみたい。でも、お母様がそういう輩はみんなクビにしていたわ」
「……でしょうね」
「でもね、お父様、それについては何も言わなかったの。だからお母様も寂しかったのかもしれない……」
そう、とみさきは相づちを打つ。自分の夫がメイドとそういう関係になる、というのは少なからずプライドを傷つけられるに違いない。自分が普段こき使っている人間に夫婦の契りを交わした相手を取られる、というのはどれほどの屈辱だろうか。
「だからその反動なの。私たちは誰にも傷つけられちゃいけないの。誰も絶対自分を傷つけないって思っていなきゃいけないの」
「そう……」
「だからそれで、いろんな人が傷ついてきたのかもしれない。私だってダイアナのことが大嫌いだったこともあったわ。自分の方が年上なのを良いことに私に意地悪ばかりして……って。だけどね、ダイアナだって気にしてたんだと思うの。あの落書き、本当にヴィオリアがやったんだとしたら……きっと、魔女が生き返って今度こそ私たちを皆殺しにするつもりなのよ!」

「刑事さん、僕は少し、疑問に思うんだ」
レオナルド・フィレスの台詞に唐也は何がですか、と返した。
「どうしてダイアナが殺されたんだろう。メアリでも良かったはずなのにね」
「メアリさんですか」
そう、メアリ。レオナルドは真剣な顔で頷く。
「……ヴィオリアは恐ろしい魔女だ。僕の家がヴィオリアの住んでいた家を管理しているから分かるんだけれど、彼女は壁にたとえ自分が殺されてもいつかきっと蘇ってヴェルビオラに終焉をもたらそうと落書きしている。そして、実際に彼女は生き返り、僕らを皆殺しにするつもりでいる。でもそれがダイアナである必要はなかったんだ」
「つまり、あなたやメアリさんが対象になってもおかしくはなかった……不特定の殺人だと、そう言いたいのですか?」
不特定の殺人。無差別の殺人。
テレビのバラエティー番組でよく見るようなルーレットをくるくる回して、ダーツを突き刺して景品を貰うように朝食の場にいた全員をくるくる回るルーレットに見立ててダーツという名の毒薬を突き刺したということである。
「そう。まぁ、僕にしたってメアリが殺されるのは気分の良い出来事じゃないけれどね。なんて言ったって婚約者だし」
「……そうですね。僕は既婚者ですけど、妻が殺されたらやっぱり悲しいだろうなぁ」
本当は悲しいどころの騒ぎではないとは思うが、それを想像してしまうのはあまりに辛すぎて、唐也は無理矢理そこから話題を変えることにした。
「つまり毒を入れたパンが一つはあった、ということですか?」
「そう。そしてそれはダイアナが囓っていたやつだ。犯人は毒を入れたパンをこっそり籠の中に入れてテーブルに置く。それか自分がパンを取るフリをして毒入りパンを籠の中に入れる。こうすれば誰かが食べるかもしれないだろ?」
「ダイアナさんを殺すという目的なら後者でしょうかね?」
「多分ね。……そうなるとやっぱり犯人はメイド達かな……いや、ダイアナのすぐそばに座っていた人間も怪しいことになるね」
メイドが犯人、というのは唐也が聞いた限りでは本日2回目である。だが、すぐそばに座っていた人間、というのは初耳だった。すぐそばに座っていた、となると最初に教えて貰った席順からしてメアリと真由子、それとヴァレンスと朱奈辺りか。
「しかし、真由子ちゃんと朱奈ちゃんはあなた方とは顔見知りではないはずですが?」
「僕は知らないけどね。ほら、あの真由子さんって探偵だろ?」
「……ええ。表にはまるで出ませんがね」
何が言いたい。そう食って掛かりたかったがまるで話にならなさそうな気がして思いとどまる。レオナルドは真由子や朱奈も含めて疑って掛かっているのだ。ここでどちらかを養護するような素振りを見せてしまえば情報は引き出せないと見て良いだろう。
「よく警察の人と一緒にいるって噂を日本の掲示板で聞いたことがある。それなら殺人事件を自分の手で起こしたいと思ってもおかしくないだろ?」
「朱奈ちゃんについては?」
「朱奈さんは確かタチバナ家のお嬢さんだったはずだよ。取引先の中に混じっていて、自分の家の意に添わない取引があったって恨んでいてもおかしくない」
安易と言えば安易、短絡的といえば短絡的だ。おかしくない、で片付けられる推測だけの殺人動機。ふと少し前に真由子に手伝って貰った事件を思い出す。彼女はなんと言っていたか。
『私は私のためにお縄になるのも嫌ですけど、誰かのためにお縄になるのはもっとごめんです。だから、誰かを殺したいほど憎んでも、その感情だけで冷静になれるんです。私が犯人だったら、虫けらみたいに殺してしまえる相手のためにこれ以上犠牲になろうとなんか思いません』
朱奈にしても、上海で自分の知り合いが殺人事件に巻き込まれるという経験をしている。直接的に事件を経験したわけではないが、彼女は加害者の知り合いであり、被害者の知り合いであった。両方の哀しみを理解しているはずだ。そんな朱奈が人を殺すなんて事があり得るだろうか。
「ありえない……かなぁ」
ふと漏れた言葉にレオナルドが首を傾げる。
「……?」
「まず、あの子達では無理でしょう。それでは動機が緩すぎるし、……それに今回彼女たちがイギリスに来たのは僕らが卒業祝いとして手配したからなんです」
「……そうか……じゃあやっぱりヴィオリアなのかな」
あきらめ顔でそうぼやいたレオナルドの態度に疑問が浮上する。
先ほど、ダイアナの傍にいた人間が怪しいと言っていた。その言葉通りに真由子達を疑ってのけた。では何故あの二人が無実だと分かった瞬間にヴィオリアの仕業だと断ずるのだろうか?
「メアリ・ローズシープさんとヴァレンス・スターアイさんに関しては?」
「メアリとヴァレンス?僕らは無実なんだ。そんなことするわけ無いだろ?」
「……もう結構です」
彼にとってはそれが現実なのだろう。諦めにも似た感情が湧き上がってきて、唐也は溜息を吐いた。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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