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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」14

続きです。
事情聴取に入りました。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

「あとでいろいろ聞くから、呼んだら来てください」
そう言う真由子の声を聞きながら、ケリーはアニーを伴って控え室に引っ込んだ。
扉を閉めると同時に深いため息が漏れる。
「アニー、大丈夫よ。私たちは大丈夫よ」
「でも私っ……一生懸命働いてきたのに、なんで……」
「……そうね……」
泣きじゃくる同僚の肩を抱いてケリーは扉を睨みつける。
いろいろな事情を抱えた2人を雇ってくれたローズシープ家には感謝している。けれど、それとこれとは事情が別だ。
2人がローズシープ家に勤めることになったのは、家族がリストラにあったことが切っ掛けだった。学生時代にケリーの父親とアニーの父親、それにダイアナとメアリの父親に交遊があり、リストラされたことを知った彼が休暇の時によく働いてくれたことだし、と二人を雇ってくれたのだった。
「旦那様……」
今は亡きローズシープ家の主人を思い出す。彼女はあの優しい笑顔に随分と癒されてきた。
仕事でミスをしても、どこがいけなかったのか、どうすれば良かったのかをきちんと教えてくれる人だった。ダイアナやメアリにも会社の経営術を教えこみ、ローズシープ系列のホテルの経営は右肩上がりだ。素直に尊敬できる主人だった。
けれど、今はそんな主人を少しだけ恨めしく思う。
「旦那様がお亡くなりになる時に……私たちも辞めれば良かったわね」
「ケリー!そんなこと言わないで……」
「アニーだってたまに言ってるじゃない。分かっていて選んだことだったけど、って」
でも、とアニーは俯く。
「……優柔不断なのね。あんなに酷いことを言われて初めて自分の選択が過ちだったと気付く……だけど、次に一度でも怒られなければそれも忘れてしまう。……あなたが羨ましいわ」
「ケリー……」
「自分のことだけを考えて勤めていられるんですもの……私には無理だわ」
ケリーにしては珍しいことだった。何も考えずに本音を零したことに気付けなかった。
普段は効率よく仕事をこなすもののミスが目立ち、そそっかしいアニーはこういうところで、本当にこういうところに限って聡い。一瞬にして哀しみと悔しさにゆがんだ表情を緊張したものに変えて彼女を見つめる。
「ケリー、あなた、まさか……まだ……?」
その言葉で初めて彼女は自分の失言に気付く。はっと気付いて後悔するがもう遅い。彼女の言葉は生憎紡がれたあとだった。
「え……そ、それは……っ」
「あなたが今まで辞めなかったのはそのせいなの!?」
「……っ」
「だめよ、そんなの、絶対ダメよ!まさか、あなた……」
エプロンドレスの袖の部分をぎゅっと掴んで問いつめてくるアニーに思わず強い口調で言い返した。
「あなたには関係ないでしょ!?私が辞めなかった理由も、あのことだって、関係ないわ!」
「ケリー……!」
アニーがたじろぐ。ここまで激高されるとは思ってもみなかったらしい。けれど、彼女のその言葉は、彼女の言わんとしていることは、確実にケリーの心の琴線に触れた。
関係ない。
そう、関係ない。
ケリーが辞めなかったのは彼女なりの理由があるからであって、それはアニーが辞めなかった理由には何の関係もない。ついでに言えば、今朝起こった事件にも関係がない。
けれど同僚は泣きそうな声で彼女に縋った。
「ダメよ……そんなの、絶対ダメよ……そんなの、絶対許されっこないわ……」
「……」
「お願い……お願いよケリー……お願いだから思い直して……」
「……」
許されない。そんなことは分かっている。
けれど、それを承知の上だったのだ。
だからそれを分かっていて、分かっているからこそアニーの懇願に沈黙を持って答えるしかなかった。
――申し訳ございません、旦那様……私はメイド失格かもしれません……。
あんなに優しくして貰ったのに。
あんなに目を掛けて貰ったのに。
その期待を自分が裏切ったような気がして、切ない気持ちに苛まれた。
けれどそれですら後悔できない自分がいて、その悔しさに彼女は天を振り仰いだ。
――嗚呼、神様。どうして私はメイドなのでしょう……どうしてあの方は……。

真由子は用意された空き部屋でアメリア・エイニーと向き合っていた。
事情聴取を録音し、捜査以外では公表しないと約束する旨を伝えてからメモ帳にペンを走らせる。
「えぇと、アメリアさんは洸(ほの)ちゃんの前でしたよね」
「ええ」
たしか朝食の時の席順はダイアナが誕生日席、その右側に真由子、朱奈、未来、朱宇、優美、洸、透子が順に座り、左側にメアリ、ヴァレンス、エリシア、レオナルド、マイラ、アメリアだったはずだ。
「どなたかをお招きになる際にはいつもこの席順なんですか?」
「ええ。ダイアナがお誕生席に座って、メアリがそのそば。あとは自由なのだけれど、代わることはまずないわね」
「そうですか……ダイアナさんとは交友関係がありますよね、それはどのくらい?」
その質問にアメリアは少しだけ考える。
「そうね……学生時代からかしら。パーティーで知り合ったのが切っ掛けだったから、知らないことも沢山あったけど」
「パーティー?」
「ええ。ヴァリー……ヴァレンス・スターアイの会社のパーティーよ。昨日あなたたちと出会ったレストラン、あれが開業した記念だったかしら。当時私はレオンと付き合っていたのだけれど、あのレストランに私が卸した品物を置くことができたらどんなに素敵だろうと思っていたわ」
アメリアは今、レオナルド・フィレスと付き合っていたと言った。
思わず聞き返す。
「レオナルドさんと付き合って?」
「ええ。……今はもう別れてしまったのだけれど」
「そうですか……では、彼女が恨みを買うといったことは……沢山ありそうですね」
その言葉に彼女が苦笑する。真由子もつられて苦笑して、真面目な顔に戻る。
「あれではね……」
「あったのですか?」
「あるもなにも、心当たりがありすぎて……大学時代にさんざん貢がせて結局付き合わなかったミスター・ホワイトとか、三角関係だったミズ・ショーンとか……あぁ、火遊びだったみたいだけど、旦那さんを巡ってミセス・グリーンからも恨みを買っていたみたいね。それと……」
アメリアが指を折って数え上げる。彼女の言うとおり、それはそれは心当たりがありすぎるだろう。
「多いですね……なんだかスキャンダルのワゴンセールみたい」
「そうね……でも、私は……真由子さんには悪いけど、メイドが一番恨んでたんじゃないかと思うわ」
「……それは、そうでしょうね……」
真由子の脳裏にあのやり取りが蘇る。
ダイアナは昨日、客人の前でアニーを叱りつけていた。こんな事が日常茶飯事に起こっていたのだとすれば、それは恨みを買ってもおかしくないだろう。
「いつもああなんですか?」
「ええ……酷いなとは思うのだけれど、粗相をしているのは事実だし、止めたって無駄だから……」
「そうですか」
止めたって無駄。
おそらくはスターアイ・グループの全員が同じ見識に違いない。
そういえばヴァレンスも言っていたような気がする。
「……あの、もう一つ、良いですか?」
「ええ。……何でもどうぞ」
真由子は逡巡した。
これが外れていたら、失礼になるかもしれない。
けれど、外れていなかったら手がかりにはなるかもしれない。
しかし、一度考えるのを辞めた案件なのだ。
聞いて良いものか。
迷っても答えは出ない。
ならば、悩んでいても仕方がない。
外れていたならば謝ればいい。
どうにでもなれとそのまま質問をたたき出した。
「……あの、今朝、ゲストハウスの傍にいましたか?」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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