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杉田真由子の探偵日記「魔女の狩人殺人事件」12

つづきです。
モノローグ。
では、どうぞ。

杉田真由子の探偵日記
「魔女の狩人殺人事件」

私という人形は愛されて育ちました。
神様に愛されて、家族に愛されて育ちました。そのことは否定しようもありません。
そのことには感謝しているのです。
けれども、どうしてもあなたを恨まねばならないことがあるのです。
あなたは私の神でした。いいえ、これからもずっと神であり続けるでしょう。
けれど、それならばどうして私はここに座っているのでしょうか。
私は永遠にあなたのしもべでありたかった。あなたが作り出した人形として、幸福のまま死んでゆきたかった。
私があなたに懺悔をしなければならなくなったことを、きっと私は永遠に怨み続けるでしょう。だって神様、あなたは私が苦しい胸の内を吐き出しても何も言葉を掛けてくれない。目の前にある聖像のように、ただただ静かに立ちつくすだけ。
私はあなたに愛されて育ちました。
けれど、人が苦しい時に欲しいのは仮初めの優しい眼差しではなく、言葉を抱き留めてくれる腕だったのです。
私はそれを、ある冬の日に実感してしまいました。
あなたがくれなかったものを、あの人はいとも簡単にくれた。
だから、神様。
私自身が地獄に堕ちる前にもう一度だけ。
もう一度だけで良いのです。
あなたの愛を裏切った、愚かな子羊の懺悔を聞いてくれますか……?

温かな暖炉。
広大な書庫。
それらに囲まれて、私は本を読みあさりました。
けれど、私は未だに迷っていました。こんな事をしてよいものか。
本当はしてはいけないことなのに、私はその誘惑にあらがえないかもしれない。
あらがうべきなのに、そうしたくない自分がいることに恐怖し、罪深さに戦きました。
開いたままの本のページを、視線だけが上滑りしてゆきます。本の内容など、もはや私の頭の中には入ってきません。
ですが、私はずっと思っていたのです。
ずっと私の心の中には、してはいけないことをしてしまわなければ、私の救われぬ魂は永遠にこの世という煉獄をさまよい続けるだろうという思いがあったのです。
本を一冊閉じて、また一冊を抜き出して。
なんて生産性のない行動でしょう。
神様の人形であることに気づきもしなかった時の私ならばこんな行動はあるいは嘲笑したかもしれません。一人で読めもしない本をただ開いたり閉じたりしているなんてとからかったかもしれません。
けれど、今の私にはその行動が神様への懺悔に思えてならなかったのです。
同時に、我らが父の仕打ちへの復讐という恐ろしいことを考えているような気がして、気付けば私は閉じたままの本を抱きしめて震えていました。
嗚呼、なんて愚かで惨めな子羊でしょう!
神に愛された白き子羊に混じる、神の愛を裏切った黒き子羊とはまさに私のこと。どうして私は生きているのだろう。どうして誰も私という罪人を殺さないのだろう。
温かな暖炉の傍で、ずっとそればかりを考えていました。

罪人。
罪を犯した哀れなる子羊。
もはや生きていることすら汚らわしい者へと私は成り下がってしまった。
悲しかったのかもしれません。
哀しかったのかもしれません。
どちらなのかは分かりませんが、本を抱きしめて震え続けながら私は声を殺して泣きました。
けれども、罪人という言葉にすぐに浮かぶのは私の大切な人達でした。
私という人形の持ち主でした。
私たちは等しく罪人なのだ。
そう思うだけで、心持ちは少しだけ明るくなるのです。そんな自分に恐怖しながらいつまでもぐずぐずと本を抱きしめたまま泣いていました。
神様、これは懺悔なのです。
けれど、私は自分の罪を贖おうとは思えません。
何度も私は自分の罪を悔いて贖罪をすることを考えました。
けれど、私は罪を贖うことができません。
だって私は人形なのです。
元はといえば神が創りたもうた人形なのです。
あなたにつくられて、あなたに愛されて、私は充分に幸せでした。
けれど、私は人形なのです。
あなたを裏切ったことは充分に分かっています。
私が天国へ行けないことなど充分に分かっています。
けれど、私はそれでも罪を贖うことなどできはしない。
嗚呼、また雪がちらちらと降ってきました。
けれどもあなたは私をまたあの寒い街の中へと追い立てるのでしょう?
人形(イレモノ)ならば人形(イレモノ)らしく動けと言わんばかりに、もう力尽き果て立ち上がることすらできぬ罪人に煉獄の鞭を振るうのでしょう?
それが例え、あなたにとっては罪人を慈愛のヴェールで包み込む行為に他ならないとしても、私はもう、罪を赦す慈愛の御手に縋る資格さえないのです。
恐ろしいことを考えてしまった私には、あなたの後光さえも道標になりはしない。
ですから、どうか早く私を止めてください。
そうでなければ、私は本当に生きてはいられないのです。
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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