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怪奇事件縁側日記「籠の中の鳥」3

縁側日記です。
ちょっと物語が進みます。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記
夏・1 「籠の中の鳥」

翌朝のことである。
明日華とともに学校に向かった涼香は、黒山の人だかりに気が付いた。
いつものことだが、私立菊花学園高等部の生徒達はどうしてこうも野次馬根性丸出しの者が多いのだろうか。携帯電話でこの光景を写真に撮る者や電話で知人に連絡を取る者ばかりではないか。
「なに……あれ?」
「さぁ……あ、パトカー」
「警察?なんでまた……」
校門の傍に止まったパトカーからは当然ながら警官が降りてくる。次いで到着した救急車からは救急隊員が一刻を争うように担架を持って駆けてゆく。
「担架!?」
どういうことだか、さっぱり分からない。
誰かが倒れているのか?
「どういう事?」
「わかんない」
そういいながら明日華の身体がかすかに震えているのを見て、涼香は彼女の手を引いて校舎に向かった。自分の手だって汗ばんでいるのは知っている。一刻も早く教室について呼吸を整えたい。そう思いながら進める歩はどんどん速くなり、やがて幼なじみの手を引いて駆け出す構図になっていた。途中、校門へ向かっているらしき男子生徒とすれ違う。彼は電話で誰かと会話しながら歩いていた。けれど、その会話に明るい色は見あたらない。
「……マジかよ!?え、お前見たの?」
どちらかといえば恐怖かもしれない。驚愕ではあるかもしれないが、嬉しいとか楽しいとかいう類の感情から来るものではなく、恐怖や不気味さから来る感情のようなものだろう。
「……が……って?」
すれ違ってしまったからよく分からない。けれど、涼香には男子生徒の声色に含まれた負の感情を併せ持つ驚愕だけで充分だった。
何が起こっているのかは知らなくてもいい。
関係ない関係ない関係ない!
どうせ最初は衝撃を受けても、彼女の心の表層を傷つけるだけでただただ上っ面を滑っていってしまうのだから室宮涼香には関係ない!
そう思いこもうとした。
明日華がきゅ、と袖を掴む。
「涼香……みんな、ああいうの、好きなのかな?」
「好きなんじゃない?……でも私たちには関係ない、そうでしょ?」
「……うん……私には、関係ない……!」
彼女は深呼吸を繰り返して頷く。その頭を涼香は撫でてやった。
「そう、私たちには関係ない……今日学校終わったら暇でしょ?」
「え……うん」
「駅前に出来たジェラート屋行こうか」
無理矢理話題転換を図ってそう誘うと、幼なじみは満面の笑顔で頷いた。
「……うん!」
つくづく食い意地の張る奴め。思っても口に出すことはなかった。

教室に入るとおはよう、と唯奈と優が出迎えてくれた。
「おはよ。校門のあれ、何なのかしらね」
話題を振ると、優が苦笑する。
「わかんないけど……みんなああいうのにはよく食い付くものね。なんだか釣り堀にいる気分」
「釣り堀……ね。言い得て妙かも」
涼香が同意すると、唯奈も頷いた。
「みんな絶対ゴシップ誌とか好きよね。あとは掲示板とか?」
「それは私たちも、でしょ」
明日華がようやく話に乗ってくる。
確かに優の言うとおりだ。警察と救急車が必要な何かのためだけに集まる生徒達と、小さな餌を釣り針に付けて放り込んだだけで食い付いてくる魚の群れは非常に似ている。だからこそ菊花学園七不思議なんてものが出来るのだろうし、信憑性も増すのかもしれないが、こんな事が何回も続くとやりづらいことこの上ない。そんなことを考えていると明日華がこちらに話題を振ってきた。
「そういえば涼香、あれから何か進展はあったの?」
「え、なんの?」
本気で分からなくて首をかしげると、彼女はによによと笑う。
「勿論電波の貴公子に決まってるでしょ?春の時のあれからずぅ~っと掲示板で惚気てるんだから」
「はぁ?」
「そういえばそうよね。電波っていうか超音波だけど」
電波の貴公子。その異称には聞き覚えがある。
いや、聞き覚えどころではない。涼香が頻繁にチャットをしている相手である。
あまりに親しくしているのとこちらの情報を一切出さないのが作用して、涼香と彼の関係は好き放題に装飾されているらしい。
そのはた迷惑な電波の貴公子の名を『ブルームーン』という。
何故電波の貴公子などというかというと、『ブルームーン』の言動は情報屋の癖をして謎かけをするような者が多いからである。ついでにオカルトの知識があるともっぱらの噂だが、涼香は全くのデタラメではないと思っている。実際、春に起きた失踪事件では随分彼の持っている情報に助けられたものだ。
「進展なんて何もないけど……?」
「あれ、なんか四谷怪談について語り合ったんでしょ?その時になんかいろいろあったって」
「……それ、進展って言うの?」
確かに四谷怪談について語り合いはした。ただ、その内容は『怪談は人間で実現可能か否か』であり、いろいろあった、の部分は議題を検証しただけの話である。
「内容に寄るけど」
「別に、検証してただけだけど?」
「進展とは言わないわね……それは」
そんなことを話していると、ガラリと教室の戸が開いて鈴山教諭が入ってくる。
なんだか焦ったようなその様子に、四人が四人そろってあぁまた職員会議かと溜息を漏らした。予想はあながち間違っていなかったようで、まもなく黒板にでかでかと自習、という文字が現れた。
鈴山はやっぱり焦った様子で教室を出てゆき、また静寂だけが残った。
「やっぱり自習?」
「……みたいね」

結局自習は三限まで続き、同時にその騒ぎも三限まで続いた。
その間半数ぐらいの生徒が帰ってきたが、教室は騒々しいままだった。その生徒達も、病院に担ぎ込まれたものがいるということ以外はろくな情報を持ってはおらず、昼休みの教室には様々な憶測が飛び交っていた。まさに無法地帯である。
「……で、病院に担ぎ込まれたってのは知ってるけど、お向かいのナントカさんの家のポチって何よ?」
出汁巻き卵をつつきながら涼香がぼやくとキュウリの塩漬けをかじっていた唯奈がねぇ、と頷く。
「あとは何だっけ、三日前に行方不明になった……えぇと」
「校門を左に曲がって次の交差点で右に曲がって300メートル歩いたところにあるタバコ屋の二階の何某さんのお家に居候しているナントカさんの飼ってたハムスター?」
二つ目のイチゴサンドをお弁当袋の中から取りだした優がつなげる。食べていた俵結びを飲み込んだ明日華がげんなりしたようになにそれ、と呟く。
「出来の悪いジョークにしては修飾語が長すぎるじゃない。……っていうか、どうしてポチとハムスターで警察?」
「ほら、動物虐待とかあるじゃない?」
「……まぁ、あるけど」
「ハムスター相手に担架はいらないと思うけど?」
「え、担架?」
涼香が溜息を吐いて話に割り込むと、優が驚いたように聞き返す。
「そ、担架。誰かまた怪我人でも出たのかと思ったけど……ポチとかハムスターとか言ってるんなら大丈夫だったのかもね」
「あとはあれ、裏門を右に曲がって次の次の十字路を右に曲がって次の交差点を左に曲がって500メートル歩いたところにあるアパートの向かいのラーメン屋の女将さんの実家で飼ってる昨日失踪したカミツキガメとか」
唯奈が思い出したように担架で運ばれた身元候補を挙げる。
「修飾語、多いわ……ハムスターとカミツキガメで良いでしょうに」
「まぁね……でもおかしいよね?動物だったら保健所の出番じゃない?何で警察?」
そういえばそうだ。優の言うとおり、動物が担ぎ込まれたのならば警察が出る幕ではない。いや、出る幕なのかも知れないが、保健所が駆けつけてくるものではないか?
そこまで考えた時、校内放送を知らせるぴんぽんぱんぽん、という無機質なチャイムが響いた。
『今朝方の件でただいまから全校生徒に事情聴取を行います。各クラスの担任の先生方は打ち合わせ通りに行動してください』
放送部ではなく滅多に合うことのない副校長の声がそう喋る。その声色にもどことなく焦ったような響きがある。
「事情聴取?」
さっぱり訳が分からない。今朝方の件で事情聴取?
そんなことを考えていると鈴山教諭がせかせかと入ってきた。
「え~、みんな噂では聞き及んでいるとは思うが、今朝方の件について、知っていることがあったら話して欲しい」
それは知っているが、何を話せというのだろうか。それはクラスにいる者全員の総意だったらしく、同じく昼食を取っていたらしい藤野麻理紗が先生、と立ち上がる。
「知ってる事って言っても、そもそも何があったんですか?私ずっと朝練してたんで知らないんですけど」
「そうか。……今朝の騒ぎの内容だが、本校の生徒が遺体で見つかった」
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テーマ : 連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:4月28日
血液型:A
趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
年齢:23。
好きな物(漫画と小説):いろいろ。ツイッターと二次創作ブログでいろいろ書いてるのが好きです。
カップリングもいろいろです。二次創作してるのが主な萌え。
色々なネタで呟きます→@kurekito

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