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怪奇事件縁側日記「魔女の鏡」17
17話目です。
では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 春
「魔女の鏡」

『昼休みが終わったときにはいなかった?』
涼香は怪訝そうに問い返す。
昨日の昼休みと言えば要が助けて、と叫んだはずなのにいなかった。
『そう。丹波って知ってる?裏サイトの掲示板に常駐しているんだけど、彼が突き止めてくれたよ。クラスメートの後藤朔斗が昼休みに教室を出ていくところを目撃したってさ』
『じゃあ私の持ってる情報はその後かしら』
涼香は思わせぶりな態度をとりながら、気が気ではなかった。これだけは事実、されど彼女は何の手がかりもない。
『どんなことでもいいよ、話してくれるかい?』
欲しいのはナズナと話す話題か、情報か。涼香は情報に賭けた。

『同日昼休みの最後に、室宮涼香と藤野麻里紗が一階東階段で湯浅要の「助けて」という声を聞くも、現場には湯浅要の姿はなかった。その代わり、バラのコサージュが落ちていた』

4月12日、15:30
「涼香、本当に要ちゃんをみたの?」
「見た、っていうか声を聞いた、っていうほうが正しいけどね。声がしたのに誰もいなかった」
1時に召集がかかった内容は、予想通り湯浅要の失踪を知らせるものだった。ついでに2人失踪者が出たということで、一週間ほど捜索を行うため休校になるということだった。
2人の行方は依然判っていない。なぜ失踪したのかさえ判っていない。だが、確実に失踪した証拠がある。
それがこれか。
涼香はブレザーの内ポケットに突っ込んだままのバラを取り出した。
「あれ、何それ」
「バラのコサージュ。……これ、生け花かしら」
明日華がつ、と指を滑らせる。
「生け花……かなぁ?造花っぽい気もするけど」
「そうよね」
「……絵描きの涼香が言うんなら間違いないだろうけど……わかんないか」
「わかりゃ聞いてないわ」
「だよね」
考え込もうとする彼女にコサージュを手渡す。
「時計持ってるでしょ。私が今から昨日の行動を再現するから、時間計って」
「え、あ、あぁ、うん、わかった」
階段を上がり、おそらく昨日と同じ位置に立つ。行くわよ、と声をかけ、どうぞと帰ってくると同時に階段を駆け降りた。一段とばしで賭け降りて、ちょうど大鏡の前で立ち止まる。
「えっと、二十秒」
「二十秒ね。じゃあここから走るから、もう一回」
先ほどと同じように走る。駆け下りて右に曲がり、途中で止まる。
「どう?」
「二十五秒。ちょっとのぞけば姿が見えると思う」
「足音は?」
「ばっちり聞こえたわ」
「……要ちゃんはあの時、足音なんか聞こえなかった。人間の技とするにはキツいわね。手すりに乗って滑ればあるいは?」
「要ちゃんはそんなこと出来ないわ。一昨日出来るようになった?って聞いたら無理です、って言ってたもん」
そうよね、と返して考え込む。
――じゃあ、あれは、いったい何なんだ?
いくら自問しても、答えは出ない。
人間業で出来ないことが、どういうトリックを使ったら出来るかなんて、皆目見当も付かない。
「涼香」
「ん?」
「ブルームーンは、なんて言ってるの?」
明日華が言っているのは、掲示板の書き込みのことだ。午前中涼香が流した情報を、彼は掲示板に流した。けれど、思い出す。
「……本当に七不思議が再現されたのか、って」
「七不思議の再現?」
「ん……また後で聞いてみるわ。帰りましょ」
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