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怪奇事件縁側日記「魔女の鏡」12
「魔女の鏡」の続きです。
ただいま終盤戦を書いてます。

では、どうぞ。

怪奇事件縁側日記 春
「魔女の鏡」12

「はい……あの……先輩、失踪した人、山岸先輩って、本当ですか?」
少し前、明日華が伝える、と言った事実。
伝える相手から切り出され、明日華が言い淀むのがわかった。
涼香は明日華の肩に手を置き、要に向かって頷いた。
「そう……なんですか」
「要ちゃん、山岸先輩は……失踪事件に巻き込まれているの。でも、きっと、すぐ戻ってくるだろうから……」
「はい。明日華先輩が言うと、なんだか本当になりそうな気がします」
要の目に涙が盛り上がったが、彼女はそこまで泣き虫ではないようだ。
涙を浮かべたままにっこり笑って、そう答えるくらいの殻はあるということだ。
親しい先輩に噂を否定してほしかった、という願いを否定されても笑えるだけは自分を繕えるのだろう。
「ありがとうございます。ごめんなさい、お時間……」
「大丈夫よ。先輩、早く帰ってくるといいわね」
「はい!じゃ、失礼します」
ぱたぱた駆けていく明日華の後輩を見送って、涼香はふと、階段に目を留めた。
引き寄せられるように踊場に目をやる。
リノリウムの踊り場はいつもと変わらない。
なのに何故か、引きつけられたのだ。
「涼香?」
不審そうな明日華の声に引き戻され、慌てて涼香は頭を振った。
「あ、ううん、何でもない。帰ろう」
「ん。……ねえ涼香、先輩、帰ってくるといいね」
「そうね。要ちゃん、待ってるものね」
「谷川先輩も、ね」
同じ学年としては待っているだろうが、谷川ミユキは湯浅要と同じような意味合いで待っている、というところについてはノーコメントだ。
「……そうね」
さぁ、帰ろう。
唯奈と優が待つ校門に足を向ける。春の柔らかい日差しが桜に降り注いでいた。

しかし、のちに涼香は知る。
このやり取りが、思わぬ事態を招くことを。
そして、『鏡』が見ていたことを。
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