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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

怪奇事件縁側日記「魔女の鏡」8
「怪奇事件縁側日記」の続きです。いやはや、大変。
書きためはしてあるんですが、別のシーンが多いのでつなげるのが大変です。
では、どうぞ。
09.11.5 UPにあたり、抜けていた部分がありましたので修正しました。この記事自体は10月26日にUPした内容と同一のものです。

怪奇事件縁側日記 春
「魔女の鏡」8

4月7日 9:30
「菊花学園の掲示板を探れ、って、何でまたそんな表の……」
「表じゃないほうよ」
9時頃にノートパソコンを持ってやってきた明日華は、しばらく涼香と課題やらテストやらの話で盛り上がった後に菊花学園の掲示板を探れ、といったのだ。表の、と言ったのは、あるかないかも分からない、いわゆる巷で噂されている「裏サイト」であることを認めたくないが故のあがきである。
「裏サイトっていったって……あるの?そんなの」
「私も確信はしていないけど……検索して出てこないなら諦めるか……」
「裏サイト」とはいわゆる学校の公式サイト以外に生徒の交流目的で作られる非公式サイトのことである。交流目的、と言う割には近年あまり良い噂は聞かないし、すべての生徒が知っているかと言えばそうでもない。明日華の言うとおり、学校名で検索してもヒットしない場合が多いのが現状だ。件の菊花学園の裏サイトも、彼女によれば例外に漏れず学校名で検索してヒットをしなかったらしい。それを聞き流しながら裏サイトのなんたるかをインターネットの某百科事典に載っている範囲で頭にたたき込んでいた涼香は、ある単語が引っかかって幼なじみのほうを振り向いた。
「菊花学園で検索して出てこなかったんでしょ?これ以上何を……」
そこまで言って、気が付いた。明日華が肩をすくめながら頷く。
「お得意様の情報屋さんの名前」
「なんかこっちから情報が引き出されているような気もするんだけどね」
ため息を吐いて、彼女はお得意様のハンドルネームを突っ込んだ。
エンターキーを押すと、たちまちのうちに数百件の検索結果が表示される。
「さすが有名人……頭から調べるの?」
「……ん、一応頭から」
神妙な顔をして明日華が頷くので、涼香の背筋も自然と伸びる。一番上のリンクをクリックするとそれは一つの掲示板だった。
某掲示板のあのブルームーンに紹介された板よりも匿名性が高く、ハンドルネームの記入欄には「名無し」の文字がずらりと刻まれている。これはどこの掲示板なのだろうか。少なくとも、某掲示板ではなさそうだ。
「これ、どこの板?」
「分からないわ……涼香、ウィルスチェックはしてある?」
「遅いっ!……してあるわ」
明日華を以てしてもどこの掲示板かは分からないようだ。珍しい、と思う。だが、それが裏サイトたるものなのかもしれない。
「さて……と、目的の情報屋さんはいるかしらね?」
「さあ……ここで情報集めしているんなら……」
そう涼香が返して、ふと目が留まる。
五つの書き込みに一つ。かなりのペースで書き込んであるハンドルネーム。
相手を煙に巻くような書き込み。
間違いない。
「見つけた……ブルームーン!」
明日華がち、と舌打ちする。まるで予想はついていたけれどそれを上回る現実をみた、というような苦々しい顔だ。
「やっぱり……予想外といえば予想外だけど」
「あぁ、そういえばいろんな掲示板に顔を出しているものね」
「そうね。たまには掲示板に来ればいいのに、ナズナ」
拗ねたように唇を尖らせる明日華は小動物みたいで可愛らしい。だが、それとこれとは話が別だ。涼香は親友の頬をつまんで引っ張った。
「だめ。私が書き込んだら、あんた調子にのるじゃない」
うにうに、と何か言いたそうな顔をしているので手を離してやる。
「調子にのるのはブルームーンでしょ」
「ほら拗ねないの」
ぽん、と頭に手をおいて画面に向き直る。ブルームーンは相変わらず謎めいた発言をして、後始末を面倒くさくしている。
「誰かこの情報屋を黙らせられないの?さすがに三割自分の話が出てるのは嬉しくないわね」
「無理。私だって出来るものならやってるわ。どうせそっちにも流れてるんでしょ?」
「ご名答」
ブルームーンとメッセンジャーをするときは情報を出し合うため、某掲示板に常駐しているメンバーの名前もよく聞いている。もちろんハンドルネームだし、伺い知れる性格だってあっているかどうかも怪しい。ただ、彼は非常に喋りたがりだと言うことだけははっきりしている。持っている情報が筒抜けだからだ。さすがに自分のプライベートや他人の個人情報は出しはしないが、それでもいつ誰かのプロフィールを並べ立てられるかは分かったものではない。
だが彼らの書き込みから分かるのは、やっぱりこの掲示板(おそらくは裏サイトだろう)でも昨日話のあった失踪事件の噂で持ちきり、ということだった。いくつかの憶測が綴られているが、いずれも憶測の域を出ないものだ。
具体的にどのような憶測かというと、好きな女子にふられたからホテルにずっと泊まっているだの、下校途中に綺麗なお姉さんに誘われてどこぞの埋蔵金を発掘しに行っている、だの、他校の彼女とどこかへツアーに行っているだの云々かんぬん。
「女子の話ばっかりじゃない……なにこれ?」
「先輩……よっぽどモテてたのね。へぇ、涼香、初雪学園って知ってた?お嬢様学校の」
「知ってるわよ。近くじゃない。吹奏楽で見かけたことがあるわ。評判は知らないけど」
明日華は半ば真剣に書き込みを読んでいるが、涼香はほとんど流し読みをしていた。女子関連の話は8割方ガセだと分かっているからだ。谷川ミユキの話では、山岸哲弥は非常に一途で、頼まれたり困っていたりすれば誰にでも優しくするが本命にはとりわけ気合いが入るのだとかいうことだ。だから彼が初雪学園に恋人がいたとすれば、ミユキの話と大幅にずれる。それに、下校途中にそのまま埋蔵金を発掘しに行く人間がいるだろうか。山岸は野球部だから、春先に激しい運動をすれば汗をかくだろうし、風呂にも入りたいだろう。いくらなんでもどろどろのまま発掘しに行くのは考えがたい。ついでに、谷川ミユキはまだ山岸をふっていない。ふる予定なのかつき合う予定なのかは知らないが、とにかくまだそういうアクションはない、はずだ。
「でも、これ初雪学園に失踪した子がいない限り証明できないわよ」
「知ってる。そんなお嬢さんはいないわ。それにほら、初雪学園はいろんな所からリムジンのお迎えが来るところだもん、大事な娘がいなくなったら親が学園を潰しにかかるわよ」
「……それはどうか知らないけど、いないってどうして……」
分かるのよ、と言おうとしたところ、明日華が涼香の唇に人差し指を当てて封をした。言ったら野暮だ、ということなのか、分かってるでしょ、と言うことなのかは見当が付かないが、どうせまたろくでもないことをして情報を仕入れたのだろう。具体的には今現在やっているようなことなどをして。
「分かっていてよ、明日華さん」
「そういうことですわ。……それはともかく、ブルームーンの七不思議説はスルーされているのかな?」
「されていないと思うわ。ほら、うちは高校だから彼氏彼女とかそういうネタが取り沙汰されるのも分かるけど、こういうの見てるとブルームーンが一方的に七不思議が怪しい、って言ってるわけじゃないでしょ?これとか」
涼香が指さした先には、七不思議の鏡の話が1行だけのブルームーンの書き込みがあった。
『どこかの階段に引っかかってる豪華な鏡。あの鏡にふれてはいけないよ』
それに対する主なレスポンスは以下の通り。
『なんだそれ、鏡?』
『ブルームーン、相変わらず電波だな』
『どっかで聞いたことある、でも、どこだっけ?』
『七不思議ネタなんか面白くない』
「面白いかどうかって重要なのかしら……」
「ま、電波呼ばわりよりはましなんじゃない?」
明日華の言う通りかもしれない。最もらしく色恋沙汰以外のことを書いて電波呼ばわりされるよりは面白くないと言われる方が良いだろう。
「で、どうする?」
「もう少し見てみれば良いんじゃない?」
だんだん面白くなくなってきたスレッドを惰性で見続ける。何も収穫はないのではないかと自然と思われてくるが、何か見つかって欲しいと期待しながらスクロールバーを動かす。
スクロールバーも大分下の方に来て、もう何も見つからないかと思われたときだった。
「あ……来た!」
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