怪奇事件縁側日記「魔女の鏡」4
お久しぶりです。夏休みも終わって昨日から大学が始まりました。
いやはや、起きるのが大変。
そんなわけで、「縁側日記」の4話目です。切りどころがなくて短くなってしまいました。
では、どうぞ。
「怪奇事件縁側日記」春 「魔女の鏡」4
昨日のことだ。
サイト「新月」のメッセンジャーに待ち合わせてログインしたナズナ―涼香のハンドルネームだ―は管理人であるブルームーンと談笑していた。
元々このサイトの設立時からの常連で、ブルームーンとは気心が知れている。ついでにいえばひょんなことから互いの学校の話になり、互いの話に符合する点が見受けられることから二人の学校が同じ菊花学園高等部だということがかなり前に判明した。これがほかのサイトであれば学校名まで出すことはなかっただろう。
いや、「新月」のなかでは二人ともそんなことをいわなかった、いや、書かなかった。
何故学校名までがわかったかというと、菊花学園のホームページ上の掲示板に「ナズナ」「ブルームーン」の名前で書き込んでいたからだ。それからは二人の個人的なことを話すための隔離部屋に設置されたメッセンジャーで話をしている。
昨日も同じように話していたのだが、何の話だったか、よく覚えてはいないのだがひょんなことからブルームーンがこんなことを言い出したのだ。
『七不思議って知ってる?』
『七不思議って、あれでしょ。夏になるとテレビの特番でやってる』
『そう。だけどさ、菊花学園にもあるって知ってる?』
『なんか聞いたことがあるけど……』
『けど?』
『中身までは知らない』
『そう?ナズナさんなら知ってると思ってたけど……まあ、一つ二つ知ってる人はいると思うから、聞いてみるといい。ただし』
ただし、の次に文字が続いていないので、こう返す。
『誤送信?』
文章を書いている途中で更新ボタンを押したつもりが、誤って送信ボタンをクリックしてしまうことがある。そうかと思ったのだが、ブルームーンは否、と返してきた。
『誤送信じゃなくて意図的に切ったの。ただし、七つ全部聞いても死なないからね』
『やだ、どこかの漫画の借用じゃない。ブルームーンともあろう人が、珍しい』
『こう見えてもミステリー漫画は読んでるんだよ』
そんな個人的なことはどうでもいい。どうでもいいが、彼(または彼女)が知っている七不思議の内容については興味がある。それをさんざん問いつめたのだが、結局はぐらかされてしまった。
だが、その問いつめる中で、ブルームーンが送信した文章がずっと引っかかっていたのだ。
『どこかの階段に引っかかってる豪華な鏡。あの鏡にふれてはいけないよ』
「涼香?ちょっと、涼香」
後ろから明日華に肩を揺さぶられて、涼香は思考の海から戻ってきた。
「あ、何?」
「委員会決めだって。私はどこも入らないけど、入る予定は?」
「無いわ」
即答すると、明日華が嬉しそうに微笑む。クラス中でごにょごにょと相談が飛び交っているせいか、鈴山教諭も止めようとはしない。ついでに学級委員と風紀委員は決まったようで、委員会名の下にそれぞれ男女の名前が書いてある。
「優と唯奈は?」
「私たちも入らないかも。部活とか、家のこととかあるし」
「かもじゃなくて、入らないの」
優が苦笑してそう言うと、唯奈が困ったような顔でツッコミらしきものを入れる。
「私たちと同じだ。でも、文化祭の係はやらされそうだけどね」
「家のこととかつっこまれたり?」
「あり得る……そのときはあきらめる?」
「私はあきらめるわ。いちいち説明したくないし」
そう。家の事情なんて人に聞かれたくない。誰がなんと言おうと、言いたくないものは言いたくないのだし、言ったところでデタラメ扱いか同情を買うだけだ。同情を買うのならまだしも(買いたくないと言ったら言い過ぎだし、格好をつけているみたいで好きではない)、デタラメ扱いで今以上にクラスから孤立したくない。他人を受け入れるでも拒絶するでもないその態度こそが自分の抱える一番の問題なのだとは分かっているのだが……。
いやはや、起きるのが大変。
そんなわけで、「縁側日記」の4話目です。切りどころがなくて短くなってしまいました。
では、どうぞ。
「怪奇事件縁側日記」春 「魔女の鏡」4
昨日のことだ。
サイト「新月」のメッセンジャーに待ち合わせてログインしたナズナ―涼香のハンドルネームだ―は管理人であるブルームーンと談笑していた。
元々このサイトの設立時からの常連で、ブルームーンとは気心が知れている。ついでにいえばひょんなことから互いの学校の話になり、互いの話に符合する点が見受けられることから二人の学校が同じ菊花学園高等部だということがかなり前に判明した。これがほかのサイトであれば学校名まで出すことはなかっただろう。
いや、「新月」のなかでは二人ともそんなことをいわなかった、いや、書かなかった。
何故学校名までがわかったかというと、菊花学園のホームページ上の掲示板に「ナズナ」「ブルームーン」の名前で書き込んでいたからだ。それからは二人の個人的なことを話すための隔離部屋に設置されたメッセンジャーで話をしている。
昨日も同じように話していたのだが、何の話だったか、よく覚えてはいないのだがひょんなことからブルームーンがこんなことを言い出したのだ。
『七不思議って知ってる?』
『七不思議って、あれでしょ。夏になるとテレビの特番でやってる』
『そう。だけどさ、菊花学園にもあるって知ってる?』
『なんか聞いたことがあるけど……』
『けど?』
『中身までは知らない』
『そう?ナズナさんなら知ってると思ってたけど……まあ、一つ二つ知ってる人はいると思うから、聞いてみるといい。ただし』
ただし、の次に文字が続いていないので、こう返す。
『誤送信?』
文章を書いている途中で更新ボタンを押したつもりが、誤って送信ボタンをクリックしてしまうことがある。そうかと思ったのだが、ブルームーンは否、と返してきた。
『誤送信じゃなくて意図的に切ったの。ただし、七つ全部聞いても死なないからね』
『やだ、どこかの漫画の借用じゃない。ブルームーンともあろう人が、珍しい』
『こう見えてもミステリー漫画は読んでるんだよ』
そんな個人的なことはどうでもいい。どうでもいいが、彼(または彼女)が知っている七不思議の内容については興味がある。それをさんざん問いつめたのだが、結局はぐらかされてしまった。
だが、その問いつめる中で、ブルームーンが送信した文章がずっと引っかかっていたのだ。
『どこかの階段に引っかかってる豪華な鏡。あの鏡にふれてはいけないよ』
「涼香?ちょっと、涼香」
後ろから明日華に肩を揺さぶられて、涼香は思考の海から戻ってきた。
「あ、何?」
「委員会決めだって。私はどこも入らないけど、入る予定は?」
「無いわ」
即答すると、明日華が嬉しそうに微笑む。クラス中でごにょごにょと相談が飛び交っているせいか、鈴山教諭も止めようとはしない。ついでに学級委員と風紀委員は決まったようで、委員会名の下にそれぞれ男女の名前が書いてある。
「優と唯奈は?」
「私たちも入らないかも。部活とか、家のこととかあるし」
「かもじゃなくて、入らないの」
優が苦笑してそう言うと、唯奈が困ったような顔でツッコミらしきものを入れる。
「私たちと同じだ。でも、文化祭の係はやらされそうだけどね」
「家のこととかつっこまれたり?」
「あり得る……そのときはあきらめる?」
「私はあきらめるわ。いちいち説明したくないし」
そう。家の事情なんて人に聞かれたくない。誰がなんと言おうと、言いたくないものは言いたくないのだし、言ったところでデタラメ扱いか同情を買うだけだ。同情を買うのならまだしも(買いたくないと言ったら言い過ぎだし、格好をつけているみたいで好きではない)、デタラメ扱いで今以上にクラスから孤立したくない。他人を受け入れるでも拒絶するでもないその態度こそが自分の抱える一番の問題なのだとは分かっているのだが……。
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