「星祭りの詩」3

卒業式が終わりました。
楽しい三年間でした。辛かったこともたくさんあったけれど、本当に、充実していました。
本当に、大好きな人ともお別れで、もう二度と話せないと思うと、かなり寂しかったですが、これでいいんだろうと思います。また何処かで会えるかもしれませんから。一緒に学校から駅まで走った人は、後にも先にももういないと思います。
卒業しても友達でいようと言ってくれた友達、本当にありがとうございます。話が合わないネタもあったけれど、私の萌え話を聞いてくれてありがとうございます。ほんと痛い話とかあってごめんなさい。またみんなで遊べることを祈っています。


さて、今回は「星祭りの詩」の3話目。友情ってほんといいものだなと思いながら書いていました。草稿から削った箇所や付け加えた箇所などあるのですが、やっぱり草稿よりも読みやすい話ではある気がします。
では、どうぞ。

第三話 夜の次の朝

「なんだよ……」
そう教室で呟いてから、優に3週間が経っていた。星史はまだ、美織とアカリに話しかけるきっかけを見つけられずにいた。二人もその雰囲気を察してなのか、あの日の星史の言葉に気を悪くしてなのか、全く話さなくなった。
「舞野、おまえあの二人と喧嘩でもしたのか?」
からかうように聞いてきた友人に、彼は苦笑しながら首を振った。
「別にしてないよ」
「でもお前、あいつらとやけに仲良かったじゃん」
「そりゃあ幼なじみだからな」
そう、幼なじみにして、一番の親友たちだった。いや、今でもきっとそう思っている。
向こうはどう思っているかはわからないけれど、自分はそう思っている。が、それをどう曲解したのか、友人はにやにやと変な笑みを浮かべて、こう宣った。
「三角関係にでもなったか」
「なるか!」
そのあと、休み時間の全てをかけてそんなどこぞの昼ドラみたいな展開になるわけがないということを説明したが、ますますいろいろな意味で曲解をくらっただけだった。要するに、思春期の男女が仲良く話していれば恋愛関係だと誤解する類の物だろう。とはいえ、この学校内ではこんなことはしょっちゅう起きているから気にするほどのことでもないのだ。

決してみんなのいうような痴話げんかではない。当たり前だ。
だが、一度張った意地をゆるめるのもなんだか癪な気がしてならない。それは星史の身勝手な思いこみだとはわかっている。何かを話しかけたそうにしてやめている美織の仕草や、沈んだように伏し目がちになっているアカリの仕草で、それは痛いほどに知らされている。
「ちょっと待て、これは俺のプライドに関わる……」
そんなわけ、ない。
別に自分のプライドが惜しいわけではない。
意地を張れば張るだけ後悔と虚しさが押し寄せるだけだ。
だからといって、楽になるためだけにプライドを捨てるのは、自分に対しても、自分の作品に対しても、あの二人に対してもよくない気がした。
だから、どうにかしてあの二人に彼なりに謝りたかった。
もう一度、話したい。
その思いで、彼は原稿用紙に向き合った。

締め切りが、迫っていた。
全く持って言葉が続かない。
何を言葉にすればいいのか、星史はだんだん混乱してきた。
伝えたいことがありすぎるからだった。
「俺、ちょっと散歩してくる」
母親にそう言い残し、サンダルを突っかけて外に出た。

星の、綺麗な夜だった。きらきら瞬く星を見ていたら、たまっていた物がすっと溶けていく気がした。いらだちとか、不安とか、そういうものが、意味のない物だと思えたのだ。
だから、かもしれない。
普段だったら絶対に行かないだろう薄暗い森に囲まれた神社に行こうと思ったのは。そこに行けば、願いや言いたいことを、すっかり吐き出せる気がしたのは。

急で長い石段を登り、境内が見えてきた。
昼間でも薄暗い境内は、夜になるとすっかり闇に溶けて見えなくなってしまう。氏子でさえも来たがらない薄暗さを、数年前につけたばかりの虫の死骸のこびり付いた電灯が助長している。
その境内の、賽銭箱のところに人影を見つけた。人がいるとは思わなかったから、星史はついつい森の中に飛び込んで、木々の間に隠れながら人影の真横まで歩いていった。幸い、森の中は境内みたいな玉砂利ではなく、柔らかい土だったので足音は聞こえていないようだ。
人影は、二つ。どうやらそれは両方とも少女のようだった。一人は黒髪、もう一人は亜麻色の髪だった。顔立ちは二人とも整っていて、黒髪の少女は可愛い、亜麻色の少女は格好いい、と形容されるだろう。そこまで観察して、星史はその二人の正体に気付いた。
−−あいつら……何でここにいるんだ!?
彼女たちは美織とアカリだった。二人ともこの神社に来ることは滅多にない。大体が星史と同じ理由である。その彼女たちが、ここに、いる。何か迷うような目の色をして、何か言いよどむように唇を引き結んで。黙って覗いていると、彼女たちは一瞬だけ視線を交わして、賽銭箱を睨み付けるように見上げた。そのまま5円玉を投げ入れ、手を二回打ち合わせる。目を閉じて願いを捧げている。
ポエムコンクールの願い事なのだろうか。おおかた、賞が取れますようにとかそんな感じではないのだろうか。そんなことを星史は思いながら、ボンヤリ二人を眺めていた。と、彼の耳に、辛抱ならないというような切羽詰まった囁きが聞こえてきた。

「また、みんなで話したいです」

−−賞なんてもう、どうでもいいから!

やけに、胸が締め付けられた。
やっぱり、つまらない意地を張っていると思い知らされた。この二人が、大好きだと今更ながら感じた。
「言ったら効果が薄れるんじゃなかったか?」
「それでも、いいの」
アカリは少し考えて、ああ、そうだな、と言った。
「星史に届いてるかもしれないもんな」
「うん」
二人はそんな話をして、鳥居をくぐっていった。
星史は隠れていた木にもたれかかって賽銭箱を見ながら、先ほどの会話を反芻して、呟いた。
「やっぱり俺、お前ら好きだよ」
彼の中には、そのことしか残っていなかった。
だから、願った。
「俺に、もう一回あいつらと話せるチャンスをください!」

翌日、彼は教室のドアが開くのをずっと見ていた。
美織が入ってきて、席に着いた。ため息を、一回。彼女の視線の先を追って、ばっちり目が合ってしまった。彼女が慌てたように口を動かそうとするから、先に、言った。

「おはよう」

それまで焦燥の色しかなかった美織の目に、安堵の色が載せられた。
「おはよ」
彼女は嬉しそうにそう笑って、星史の席に駆け寄ってきた。後ろから二人の方に遠慮がちに手が載せられた。
「アカリ?」
「おはよう」
口調はぶっきらぼうな割に、アカリの頬はうっすら紅い。それが緊張からくるものだと、彼は少しだけ、わかった。

友人のちゃかした声が聞こえる。
「おぉ、舞野!朝から何やってんだ〜」
「お前の想像してることじゃないぞ!」
「なんでだよ〜!」
その返答に、三人からかすかに笑い声が漏れた。
しばらくぶりの、笑顔だった。

つづく。

テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

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紅崎姫都香

Author:紅崎姫都香
誕生日:昭和天皇の誕生日の前日(要するに4月28日です)
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趣味:小説書き、イラスト描き、楽器演奏
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好きな物(漫画と小説):いろいろ。ブログで書いているモノがそうです。
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