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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

「闇夜の中の香」
あわわわわ。
続きでございます。
もうね、ナンパ師みたいな台詞がいっぱいでてる割にそんなにたいしたことないんだろうけれど私的にはあまいあまいあま~い!!!みたいな感じです。
恋愛モノあんまり書いてませんし。

というか、なんか曲聞いてたらイメージが浮かんだので。

では、どうぞ。




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「一体どういうつもりなんだ」
「いや、ここなら大丈夫かと思って」
未だに困惑気味の九兵衛に土方がそう答えると、二人の間に形容しがたい沈黙が流れた。
「……なんか、頼むか」
居心地の悪い沈黙に耐えきれずに土方が聞くと、九兵衛は首を横に振った。
「いや、いい。まだワインがあるし」
「そうか」
「それはそうと、ホストクラブではあのような挨拶なのか?」
「は?」
「ホストクラブは僕の家ではないのだが」
そこまで言われて、その『挨拶』が山崎の「お帰りなさいませ」という台詞だと気付く。
たしか、それは執事喫茶の台詞だった気がする。まかり間違ってもホストが言う台詞ではない気がする。
「たぶん、なんかで間違えたんだろ」
「そうか」
そこまで言って、九兵衛が不意に視線を泳がせる。そこでようやく、土方は自分が九兵衛の手を握ったままだったことに気がついた。
なんてベタなシチュエーションだと思う。
「わ……悪ぃ」
慌てて手を離す。
「いや」
けれど、次の彼女の台詞に驚いた。
「君以外だったら、投げ飛ばしていた」
「ちょっと待て、お前その腕の何処にそんな怪力」
「しらん!」
九兵衛の腕は華奢である。手首の細さに、先刻驚いたばかりである。
「どうも、男に触れられると投げ飛ばしてしまうんだ」
「まじかよ」
「ああ」
そこで彼女はいったん言葉を切り、招待状を取り出した。
「なぜ君は、これを寄越したんだ」
「なぜって」
別に、特別理由がある訳じゃあなかった。
かといって、知り合いだからというわけで、考え無しに出したわけでもなかった。
来るという確信も全くなかったが、誰に、と思ったら九兵衛の顔が浮かんだ、というわけである。
だが、なぜかと聞かれても、明確に答えられる理由が見あたらなかった。

九兵衛は柳生家の次期当主。
世間には、男として姿をやつしている。
その労苦は、セレブでもなく、女と偽られたこともない土方にはわからない。
けれども、あまり表情を揺らがせることもない白皙の美貌の下に、いい知れない負の感情が渦巻いていることぐらい、わかる。
何でもないように男として振る舞うその陰で、犠牲にしてきた女としての憧れや感情があったことを、つい先日、知ってしまったから。

--だから、少しは女として笑わせてやりたかった、からか?
「土方君」
「いや、多分、お前の笑顔が見たかったから、だろうな」
彼女は一瞬きょとんとした。
その後、ふわりと、笑顔を見せた。
美しく花開く、という仕草でありながら、笑顔そのものは狂い咲く花のようだった。

--あぁ、まただ。
闇夜に可憐に狂い咲く花。
その花は散りもしないのに、土方を包み込む。
包み込まれるたびに、甘美な香りに包まれて、我を失いそうになるのだ。
彼女はさしずめ、その花だった。
柳生の屋敷で刃を合わせたときから比べると、いや、その後にキャバクラで見かけたときよりも、その印象は強くなる。

「土方君?」
またきょとんと聞かれて、ようやく土方は現実に帰ってくる。
「んだよ」
「ありがとう」
また花の笑顔を見せられて、彼の胸がらしくもなく高鳴った。
「なぁ」
「ん?」
儚げで危うげで、美しい花。
「この後、ヒマか」
「あ……ああ」
今までは決して手折らせようとしなかったけれど。
「じゃあ、夕飯なんかおごってやる」
闇に紛れて手折ることを、許してくれるだろうか。
「……ありがとう」
微笑んだままの彼女の唇に、彼は自分のそれをそっと寄せた。

おわり
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