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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

「魔笛」によせて
うれしいです!
いろいろとうれしいです!
ってわけで、「paranoia」の青木様とある方へのお礼で、二次創作です。
ってか、いろいろ書くものたまってすみません……!
では、どうぞ。
作中に出てくるオペラ「魔笛」のあらすじは、こちらです。


「魔笛」によせて
「ただいま~!」
今日も写真を撮って上機嫌で帰ってきた彼女は、手に二枚の紙切れを握りしめていた。
「今日は早かったな?」
「うん、今日はフィルムがもうなくなっちゃったから、替わりを買ってかえってきたの」
「そうか。夕飯まだできてないから、少し待っていてくれ」
セルトがそういえば、うん、と頷いて彼女は部屋に帰っていく。
その背中を見つめながら、彼は夕飯のイタリア料理づくりを進めた。


「そうだ、セルト」
「ん?」
「明日、オペラ行かない?」
そういう彼女の表情には、混じりけのない好奇心。
「……何を見に行くんだ?」
「魔笛」
「……モーツァルト?」
「そう」
「……どこでこんなものを……」
「ええとね、モルガンさんが」
「先輩……」
あっけらかんとチケットの出所を白状した彼女に、無防備なのもほどがある、とセルトはため息をついた。
「で、行くの?」
「……ああ」
妙にあいてしまった言葉の間に、彼女が眉根をよせる。
「モルガンさんに何か言われるとか、なしよ!」
「いや、先輩は関係ない」
「そっか」

その日は結局その話で夕食が終わったのだが、セルトにとってはまだ終わりではなかった。
「セルト、明日オペラ行くんだって?」
「……ああ」
ミルズがにこにこと話しかけてきたのである。“自称”小説家でもある彼は小説もよく読んでいて、その手の話には強いはずなのであるが。
「どこからその話を……」
「いや、聞くつもりはなかったんだけど、食堂のドアのところでちょっと聞こえちゃって」
信頼する兄に限って、立ち聞きなどという真似はしないと信じたいのだが、隙あらばセルトたちをからかおうとしてくる彼のこと、どこからが本気なのかが読みづらい。
「でね、セルト」
「ん?」
テーブルに、一冊の本が置かれる。
「……『魔笛』?」
「そう、魔笛。予備知識ぐらいはつけておいた方がいいよ」

それから、彼は兄にわからない箇所をききながらあらすじを理解した。

大蛇に襲われていたところを夜の女王に助けられた王子が絵姿の王女に一目惚れし、救出のために悪魔の元へ向かう。
しかし、悪魔が女王の言うような悪い者ではないのではないかと王子は思い始め……という、敵と味方が思いがけずひっくり返るようなあらすじ。

「……ハッピーエンドでは、あるんだな」
王子も王女も、最後にはつらい試練に耐えきって見事結婚してみせる。
「そう、ハッピーエンドではあるんだよ。というか、君たちに送りたいオペラの一つだね、これは」
「……?」
「本当はね、いろんな人間が彼女に興味を抱いてた。もちろん、僕もね」
「……ああ」
「同時に、隙あらば君から彼女をかっさらっていこうとする奴らもいるんだよ」
「ああ」
「まだ、試練は終わっていないからね?」
そういうと、ミルズは自分の部屋へ帰っていった。

夜の女王や高僧、悪魔が王子に与える試練はどこか宗教色を帯びていて、苦しい。
けれど、苦しいからこそ、会えたときの喜びは大きいのだろう。
自分と彼女は、王子と王女だとでも言われたような気がして、セルトは心持ち、頬が赤くなった気がした。

これからも、試練は続くだろう。
けれど、どこまでも、耐えきってみせる。
彼女がいれば、それができるはずだから。
そんなことを思いながら、次の日、上品なワンピースを着た彼女をエスコートして劇場に向かっていった。

おわり
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