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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

「お兄ちゃんの楽しいお料理教室」
わ~い!先日お話ししたかわかりませんが、いつもお世話になっている「paranoia」の青木様からセルト君のイラストを頂いてしまいました!嬉しい!こちらです。
さて今回も寄稿文。
またギャグです。ほんと、青木様やお兄さんファンの方、すみません……。
ではどうぞ。
「お兄ちゃんの楽しいお料理教室」

「さて。そろそろお兄ちゃんも家事にチャレンジしようと思う」
「ふぅん……で?」
兄としての威厳たっぷりに告げた台詞を、妹にさっくりと斬り裂かれて、和真の握り拳は意味を失った。
「だからね?今日からはお兄ちゃんがご飯作るから」
「ふぅん……って、え?」
今更ながら驚きの声をあげた彼女に、彼は余裕の微笑みを以て答える。
「大丈夫。名付けて『にぃにぃの三分クッキング』!」
---お兄ちゃん、ネーミングもさることながら、家庭科の成績悪かったんじゃ……。
そんな彼女の心配をよそに、和真は某料理番組のテーマソングに似ている「ペトルーシュカ」を鼻歌で歌いながら台所へ向かった。

Mission1
「じゃあお昼はシーフードカレーで!」
「え……」
どうやら彼女はカレーでも心配なようだ。
---私、寝込みたくないもん!いや、お兄ちゃんだって室内にカレーをほっぽっとくような真似はしないと思うけど……。
そんな彼女の心配を横目に、和真はおもむろに大鍋を取り出す。
「お兄ちゃん?」
その中にお湯を入れて、火に掛ける。そして彼が取り出したものは---レトルトカレーであった。
「辛口と甘口と激辛と中辛、どれがいい?」
「……中辛……ってか、それ……」
---料理って言うの?
彼女はそうぼやきながら時計を見た。2分30秒だった。

Mission2
「夕飯は何がいい?」
「う~ん……お兄ちゃんの作れるもので」
彼女のとてもとても不審そうな眼差しにたじろいだ和真は、じゃあ、といって献立を発表した。
「ライン風サウアーブラーテン(ビネガーワインの牛肉煮込み)!あとサラダ!」
「ちょっ……そんなの出来るの!?」
読書中だった彼女は驚いて立ち上がった。
「出来るとも!」
「ほんと?」
「ホント!」
しかし、彼女の頭の中で、どうしても何かが引っかかっていた。
---あれ?サウアーブラーテンって、どこかで……。
その時、冷蔵庫が開く音がした。彼女の視線の先で、兄は出したものをレンジで温める。そして、付け合わせのソースを盛りつけたその上にかけた。
「お兄ちゃん……」
彼女の頭の中で、何かが切れた。
「どうした?」
「どうしたもこうしたも……それ、私の作り置きじゃない!」
「あ、いや、その……」
それのどこが料理よ!と絶賛お怒り中の妹に、和真は狼狽えた。
「あ、明日は素麺にするから」
「……素麺?」
「そう、素麺!」
「今度はずるしないでよ?」
そんなこんなで、うやむやのうちに夕食は終わったのであった。

Last Mission

「さあやってまいりました、『にぃにぃの十分クッキング』!」
「もう充分……」
「今日は流し素麺といきたいと思います!」
「……だから十分?」
「そう」
「……電話してくる」
彼女は台所を出ると、家に招いても大丈夫そうな人に電話をかけた。
「あ……もしもし、由美ちゃん?」
そんな妹をチラリと見ながら、彼は流し素麺の装置を組み立てていた。

そしてお昼時。
「えっと……これ……」
「お兄ちゃんが……これがいいとか何とかで……」
すごく豪勢な流し素麺装置に、招かれた柳田、岩崎、由美は目をぱちくりさせた。何せ、だだっ広いダイニングルームにどんと青竹で出来た装置が置いてあるのである。
「和真……」
かくして、流し素麺は始まった。
「って、結局私が付け合わせ作るんじゃないの!ちょっとお兄ちゃん!」
「可愛い妹をその辺の男にやるわけにはいかん!」
「見知った顔でしょうが!っていうか岩崎さん友達でしょ!」
「関係ない!」
そんな会話を交わすうちに、彼女の頭の中で名案が浮かんだ。
---もう、これしかない!
錦糸卵を皿に盛ると、彼女はダッシュで兄の部屋へ行った。

流れる素麺。それは市販のつゆとあいまって絶妙なハーモニーを奏でた。
「あれ?」
最愛の妹が率先して素麺を流すのを見て、和真は目をしばたたかせた。
「まぁ、お兄ちゃんは黙って食べてて」
そして、流れてきたもの。白い、細長いものだった。
「あれ……これ……」
岩崎がビニルコーティングされたそれをつまみ上げ、中に書いてある文字を読む。
「ええと……現代文64点、古典87点、化学……」
さぁっと和真の顔が青ざめた。柳田と由美は何が起こったかわからなかった。
「数Ⅱ54点……」
「うわぁぁぁ!やめろ、音読するな!」
「え?」
「俺の成績表!」
「……成績表……」
ゲスト並びに兄の視線は実行犯である妹に向く。そして彼女は、にっこりと可愛らしく微笑んで、こう言った。
「お兄ちゃん、覚えてるよね?」
「え?」
「この間、私に『にぃにぃ』って呼べって言ったこと」
「……和真……」
「……お兄さん……」
「マニアックね~……」
「その仕返しよ」
そう冷たく言って、彼女は残りの素麺並びに付け合わせを流しはじめた。
「あう……そんな……」
「お兄ちゃん、これに懲りたら二度とバカなこと言わないで。それと、キッチン立ち入り禁止!」
その瞬間、和真はがくりと膝をついた。岩崎の、まぁ諦めろ、という声さえ耳を素通りして。
「すまなかった……っていないし!」
既に彼女はゲストを見送りに出ていた。
今日もまた暑くなりそうである。

おわり
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