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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

『Tonight』
あはは……テスト、ヤヴァかったです。
出題傾向変わってたし!
記述が多いなんてシラナカターヨ!(日本語おかしい)
しかもまだのだめ見てないです。感想今回こそ書きたいな~。
では、またまた懲りずに前回の続き。

『Tonight』
「二時間やろう。その楽譜の曲から何曲でもいい。私を感動させられたら、婚約は内定と言うことにしてやろう」
渡された楽譜は5曲。
彼女の父・蓮谷は二人を一瞥すると、部屋を出て行った。
「結局、私たちの思い通りにはなかなか……ね」
月夏が苦笑する。
「まぁ、本当に、ウィーンには男友達はいたんだけど……何となく、みんな恋には落ちなくて……ね」
「……」
「財産がらみのこともあるんでしょうけど……ね。さて、何にする?」
「……財産がらみなら、何もあなたしか、ということはないのでしょうに……お好きな曲を」
亮は溜息を吐きながら楽譜をめくる。村山はその様子を見ていたが、しばらくすると、「蓮谷さまとお話をしてまいります」と言って部屋を出て行った。

「うふふ……お父様ったらベタね~」
「え?」
「ほら」
そういって彼女が差し出したのは「愛の挨拶」。
エルガーが妻に送ったとされる曲である。
ヴァイオリンが、フルートが、代わる代わる旋律を奏でる。まるで、愛することを許された、その幸せを愛でるように。
二人とも、この曲は初見ではない。
それが故に、なせる技なのかもしれない。
だが、それだけではないのかもしれない。

曲が終わる。構えをとくと、「何曲でもいい、と言われたからには全部吹きたいな」と月夏は楽しそうに楽譜をまとめて差し出した。
「あなたという人は……」
「ん?」
「ジュリエットと言うよりは、カルメンなのでは?」
「……失礼ね……それを言うなら、マリアさま、でしょ?」
「聖母は靴を脱いで道を走らない」
「走るわよ」
「……」
相変わらず、変な所で突拍子もないことを言う。亮にとっては初めて付き合うタイプの人間。
---でも、うっとうしいわけではない……むしろ……。
フルートの音が旋律を奏でる。亮はその音のさざ波に乗りながら、静かに目を閉じた。
---むしろ、発見があることが心地よい。
月夏のフルートと、亮のヴァイオリン。
じゃれ合うようなその音色は、次第に力強く美しい音色へと変わっていった。
ただただ隣で流れる清流が、一つに合流して、うなりをあげて海へと注ぎ込むように。
---やっぱり、儚げなジュリエットでも、優しいだけの聖母マリアでも、無い。……当然といえば、当然、か?
弾きながら、彼はそう思う。
彼女はジュリエットの境遇で、聖母マリアの優しさを持ちながら、カルメンのように奔放で、シャークスのマリアのように芯が強い。一筋縄では懐柔出来ないその気高さに、彼は心惹かれたのだから。

曲は何度も楽譜を変えて、体当たりしながら進んでいく。
まるで、今の二人のように。

---あなたと一緒に演奏してみたい。
いつか、そう言われた。その願いが、今こうして、叶っている。
---ジュリエットによろしくね、ロミオ。
店長の言葉が、脳裏から離れない。
---それをいうなら、マリアとトニーだろうに!
そんなことを考えていると、いつの間にか月夏が恨みがましそうな目で軽く睨んでいた。
---この曲、嫌い?
いつの間にか曲は指定されたものではなく、ミュージカル「ウェストサイドストーリー」の「トゥナイト」になっていた。
---嫌いではないですが……いいんですか?
---いいわよ。どうせ私はマリアだもの!
---……どうせって。
アイコンタクトで交わされる会話。フルートが高らかに愛を歌う。負けじとヴァイオリンも幸せの予感を囁く。

やがて、最後の一音を吹き終え、その余韻が消えたとき。
言い渡された、二時間が、来た。

つづきます。
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