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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

『Je te veux?』
やっぱり調子に乗って書きました。
二人とも音楽ってのは書きやすいです。
では、どうぞ。

『Je te veux?』

「屋敷まで」
そう主人に告げられて、車は滑り出し、やや荒っぽい運転(だと亮は思った)で裏道を走って屋敷に着いた。
いつの間にやらヒールを履いた月夏が荷物と楽器を持って、呑気にも正面玄関から、ただいま~、と突入する。
「これは……ロミオとジュリエット、どころではないな……」
「ええ、ジュリエット、と言うよりも……」
「……カルメン、か」
そうですね、と村山が苦笑した。
「みんなには内緒よ!」
そう言ってまた、彼女はヒールを脱ぎ捨てて何処かへ走っていく。
「ふふ……いらっしゃいませ。お嬢様ならサロンですよ」
「……手慣れていらっしゃいますね」
「あの方は、衝動でお動きになりますから」
そう含み笑いを残して、メイドはこちらです、と案内した。

「……時間、無いから……早く入って!」
月夏は二人を招き入れるとドアに鍵を掛けた。
「え……」
「時間が、無いの!……ここなら、少しは……」
「……それは、どういう……」
「今、弾ける?」
亮の問いを遮って、彼女はCDをセットした。
「あ……サラサーテ」
「そう。知り合いのヴィオリストから貰ったの。オケだけのやつ」
サラサーテのヴァイオリン協奏曲。亮が本選で弾いて、どうしてもうまくいかなかった曲。
「今なら、弾けるはずよ」
「知って、いたんですか」
「白が引き立つのは赤だものね……カルメンって、赤ってイメージ」
白は、いつもの学ランのことなのか。そして赤は、曲のイメージ。相変わらず、抽象的にものを言う。けれど。
---弾きたい。
そんな気持ちがふと沸いて、思うがままに弦に弓を滑らせた。
「本選、残念でしたね」
「ええ……」
「まぁ、同じような経験、してますし」
村山が問い返すより早く、彼女は楽器を手にしていた。もちろん吹くのは、カルメン幻想曲。
フルートの音色と、ヴァイオリンの音色が混ざり合い、絡み合う。それはまるで、互いを誘惑し合っているようで。
曲が終わるまで、艶っぽい音色は続いた。
最期の一音を弾き終えて、ふと傍らを見れば、イタズラっぽく微笑んだ月夏。
「次は、私?」
そう言った時、CDは次の音楽を流しはじめた。

つづくんです。
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