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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

「龍霊使い」15
わ~!やばいことに。
今回から戦闘はいります。
お嫌いな方は見ない方がよろしいです。
というか、最終回どうしよう……。
では、どうぞ。

第14話 嵐の中へ

龍としての尊厳を忘れたか。
そいつはそう罵倒した。ヒトの形となって、使役者の傍にいる私を、龍としては生かしておけないと、大蛇の姿をしたそいつは言った。
でも、今、龍の魂(龍霊)となって使役者の命の灯を守る私の前に、蛇の魂(蛇霊)となって、使役者に取り憑いたそいつがいる。
「戦う、と言うよりは、もはや殺し合った方が早い」
蛇香蒼貴と名乗るそいつは、蛇眼を覆い隠すかのように伸ばしていた前髪を横にのけた。その闇色の前髪は、銀色の月光の色に染め上げたかのような龍牙玲のそれより長い。
憑かれたときより来世とのつながりを持つ互いの目は、もはや互いを“視”ることには専念しない。
龍霊と契約を交わした龍牙玲と、蛇霊に意志を侵食させた蛇香蒼貴の、互いの存在を賭けた攻撃は、続いている。
車の中に拉致られた玲が、無意識下で動いている状態から、覚醒するのも、もうすぐだろう。その身で使役者の盾となりながら、自らの終わりを予感して、昇華することも出来ず、ただただふよふよとこの世を漂っていた二つの哀しい神の残滓は、短い短い咆吼をあげた。
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解りきった結末だよな。
そう奴は呟いた。でも、今の私にはそんな物はどうでも良かった。精神を他者に侵食されたこいつの、数少ないリミッターをどう解除するか、否、させるか。
先天的な特殊能力も、役に立つとは思えない。透視でこいつの内臓なんか視たって面白くないから。
裏切るとか裏切らないとか、そう言う問題でもないし、どうして『蒼い蛇』なんかに入信したかなんて聞きたくもないし、聞く必要もない。
「今更僕を逮捕して、何の得があるんだい?」
そんな物、知らない。ついでに言えば、どうだっていい。私に降りかかるのが、災厄だろうと幸福だろうと、そんな物は知ったことではない。
みさきがここにいるのは、玲を救出するためではなくなっていた。テロリストを一掃するためでもない。他ならぬ、自分自身のため。
恵だけは、否、彼に取り憑いた亡霊だけは、何があっても許すことは出来なかったからである。
どちらからともなく、銃口がパン、と音を立てて弾を押し出した。
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やってらんないよな。お前が相手なんてさぁ。
その台詞が、どちらからともなく出てきた。
おそらく、目の前の奴も、俺も、考えることは同じなんだろう。こいつが相手なんて、まっぴらごめんだ。
でも、だからといって、逃がすつもりはさらさら無い。憑かれている目の前の野郎自体は面識もないし、交戦する筋合いもない。
当たり前だ。こいつは、スクールを崩壊させたテロリストではない。あのテロリストは、俺が封印したからだ。
だけど、夏塔英一とか名乗った奴に憑いている本体、ヒトを媒介としてそいつの精神を侵食する悪霊は、封印されない筋合いはない。
「物好きだよなぁ、お前も。ここには探している野郎はいないぜ」
そんなこと、今更言うな。
真には、彼が悪運に恵まれているのか、それとも最初からこうなる予定だったのか、今更解らない。
だが、憑き物を封印しないことには、もうどうしようもない。英一(媒体)が悪霊に食われても別に何ともないが、絶対に泣き崩れそうな奴がいるからだ。
この、女泣かせが。
内心、チッ、と舌打ちして、突っ込んでいった。
12
やっぱりなぁ。予測はしてたんだけど。
目の前に立つ野郎は、ちょっとだけ嬉しそうに唇をなめた。このシュチエーションのどこが面白いもんか。
ことあるごとに私の前に現れて、ちょっかいを出してくるこいつと交戦なんか、絶対にしたくない。
なのに、奴は嬉しそうに、きゅ、きゅ、と革手袋をはめてやがる。私は嬉しくも何ともないので、革ジャンのポケットに突っ込んだ拳銃の弾数を確認して、
今のところの相棒を突きつける。
「あぶねぇなぁ。そんなもん持ちやがって」
大きなお世話だ。
伊良部日馬は、次第に険しくなって行く紅音の眼差しには目もくれず、一枚、木の札を取り出した。いま、紅音の傍にはアリスはいない。
日馬が蛇を扱うのと同じように、彼女が眼で合図をすれば、みゃあ、と鳴いて蛇を囓ってきてくれたのに。
そんなことを考えている間に、日馬は真っ白な長い体に、紅蓮の眸を持つ蛇を繰り出していた。
ソレが紅音の華奢な体を締め上げるのと、彼女の手から銃が離れるのと、同時だった。
13
そうなのね?わかった。
私が電話を切ると、妹が鋭い目で見つめてきた。
玲さん、危ないの?
危険な状態にあることは確実ね。そう言うと、妹は露骨に眉間にしわを寄せた。
「ナメちゃんは、役に立たなさそうね」
と妹は残念そうに言って、霧吹きで水槽に水を掛けた。
「稲原さんはね、出てきても良いし、出なくても良いって」
「いやよ、出る」
愛華がきっぱり一言、言い切る。知華は、しょうのない妹だ、という表情をしてから、また電話をかけ始めた。
『はい、チーム『光迅』。あ、水上さん』
「そうよ。愛華も私も、出るつもりでいるからね」
それだけ伝えて、電話を切った。
14
この間のお礼がしたくて。
彼女は可愛らしくはにかみながらそう言った。知らず知らず、僕は彼女を応接間に通した。
お礼なんて、良いのに、彼女は律儀なのかな。
僕は星李に助けてもらったときに、お礼をするどころか、ナンパめいたことをした。
そのお陰で今の僕らがあるような物かもしれないけど。
そんなことを考えてたら、穂上華音と名乗った彼女がじいっと僕を見ていた。
何をお考えですの?
猫耳がぴょこん、と動く。華音ちゃんは、暫くじっと僕を見てから、ふふ、と笑った。猫耳にメイド服。いかにも同僚が喜びそうな外見だ。
「唐也さん、私と、少し外に出ません?」
猫のようにすりすりと擦り寄って、唐也に体をぴたりと寄せた。
「え?」
狼狽える唐也に、華音が眉尻を下げてうるうると目を潤ませ、訴える。
「いいじゃありませんの?ねぇ?」
「いや、あの……」
優柔不断男の哀しい所か、こうまでされて訴えられると、強行にはねつけられなくなる。
「私のことがお嫌いですか?」
「ううん、嫌いじゃないんだ。でも……」
「彼女なら、帰ってこないわ」
「え?」
どういうことか。
「だって、彼女は、あなたほどにはあなたを愛していないはず」
いつも抱いていた不安を浮き彫りにされ、唐也が一瞬、無表情になる。
「愛しているのなら、邪険になんか扱わないわ。いつもいつも一緒にいて、もっと幸せになれるはずだもの」
そうかもしれない。
「星李は……邪険になんか……」
「してるじゃない。あなたよりも、仕事をとって……」
「それは……」
仕方のないこと、だと思う。そう言おうとして、華音に遮られた。
「唐也さんを誰よりも愛してあげられるのは、私だけよ」
いつの間にか、華音の顔が、目の前にあった。
「行きましょう?」
言われるがままに、腕を取られて、外に出た。
15
あら、もうお目覚めですのね?
誰だ、お前は。そう言いかけて、目の前の人物に気がついた。
白い髪に白い猫耳。眼鏡を掛けた、着崩した着物姿。
面識がある。確か、愛華の時に一回だけ交戦した、レリュー・マルガノフ。
ナイフかメスを取り出そうとして、異変に気づいた。
腕が、縛り上げられていて、動かせない。
「無駄な抵抗はおよしなさいませね」
ふふ、とグロスを塗った唇の端がつり上がる。
私が体を動かせないのを良いことに、そいつは私の頬に手を回した。
「ふふ……外見だけは完璧ですこと」
言葉を発するのも面倒くさくて、星李は何も言わない。
「中身が少々、玉に瑕と言った所ですわね」
そんな物はどうでも良かった。ここでお前と交戦する暇はない、と星李が呟く。
それを見越したようにレリューが嗤い、電流を青白く浮き上がらせる鞭で、ビシリと打った。
「威勢の良さは、変わりませんのね」
「……」
「このまま、打ち据えてから手下達に始末させるのもよろしいのですわよ?」
答えず、彼女はレリューを見据える。
「でも、その前に私から直々に最高のプレゼントを差し上げましょう」
「……?」
星李の眼差しが、訝しむように中空を彷徨う。その辺りに、大鏡が映し出される。
直後、彼女の眸に、信じたくないような映像が飛び込んできた。
―――唐也……!
つづく
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