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創作ブログ(旧『花待館』)です。 なお、当館内に掲載しております作品等については著作権を放棄しておりません。

龍霊使い9
こんばんわ。今日実はスポーツ大会だったんですよ~。紅崎はスポーツ大会があまり好きではない(てかむしろ……)ので、密かに色々願ってたんですけど、初戦はやりました。
でも応援は大変面白く、怖いです。

さて、関係ないお話ですが、第9話突入です。のっけから玲が出てきません。

では、どうぞ。

 第9話 女王陛下に忠誠を3
「アンデス……やはりお前では駄目だったか」
何処かの山の神社の祠。狐の耳に、着物姿の女が呟いた。
もともとアンデスは悪霊にしては変に明るく、わざと自由奔放に振る舞いたがることがあったから、当然か。そうとも思った。
「行くか……弔い合戦に」
アンデスの自由奔放に惹かれていたのは紛れもない事実。ゴーストハンターという職業を憎み、人を憎んでいたのも事実。
そして何より。
自分はまだ、復讐を果たしていない。
他の者と違って。

第9話 女王陛下に忠誠を3


その日、神堂縹は町はずれの山に花を手向けに行った。
もう、彼女が十数年間続けている行為である。死んでしまった、彼女のペットのために。
いつもの花屋で、いつもの花を。
いつもの道を、いつもの速さで。
いつもの果物屋で、いつものリンゴを買って。
そして、いつもの、白い墓石に、いつものようにしゃがみ込む。
「キャスリーン……」
―――聞こえてる?
縹の眼が、切なさに染まった。
―――私のせい、なのかな……。
キャスリーンが死んだ時、彼女は看取ってやることが出来なかった。
もうすぐ帰ってくる時間だからと、道路に出た所を、トラックに跳ねられたのだという。
―――私が……私がもっと早く帰っていれば……。
でも、自分を責めても、キャスリーンは帰ってこない。そう、二度と。
―――やめよう……もう。
「今日は……帰るね」
縹は立ち上がって、くるりとうしろを向いた。そして、山から、遠ざかる。

1人で住むには大きすぎる家に帰り、紅茶を淹れた。
「あ……霧雨……やだ、雨じゃない」
慌てて立ち上がり、2階のテラスに吊した洗濯物を取りに行こうとした、その時。
「……?」
ふと、感じた違和感。
誰かが、いる?
―――いえ、そんなはずない。……私1人だもの……。
それでも、意を決して振り向いたその先には誰かがいて。
「誰……ですか?」
「忘れた……か」
―――忘れた?
忘れた、その単語を聞いて思い出すのは、ごくごく限られた人数しかいなかった。
けれど、目の前の誰かは、父親でも、母親でも、友達でも、彼氏でもない。外見だけなら、知らない、者。
「やはり……忘れたか」
鋭い目が、落胆にゆがむ。悲しそうに下がった目を見て、縹はあることに思い当たった。
―――あ……この眼……。
雨の中で、傷ついていた子狐。傘を差し掛けて、話しかけた、幼い自分。
そのまま抱え上げて、家につれて帰って、名前を付けて、飼った。
そう、名前は。
「……キャスリーン……?」
「はい、縹お嬢様」
「……また、会えるなんて……」
「不都合か?」
「いいえ!」
「私がここにいることが、そんなに怖いか」
「い……いいえ!怖くなんか……」
言いかけて、首を物凄い力で掴まれた。
「震えているくせに、よくそのようなことを……ッ」
「ま……待って……キャス……リーン……」
「私を置いて、幸せになるなど、許さない」
指先に、力が込められる。振り解けないくらいに、強く。
「そ……んなっ……」
「私を殺したのは、お前だ!」
―――違う!
チガウ!
チガウ、縹は眼で、そう語りかけた。けれども締め付ける力は強く強くなる。
「私が死んだ時、お前は友達と、笑っていた……!」
「―――!」
それは事実。電車の中では今時珍しく、携帯電話を切るのが習慣だったから。キャスリーンが死んだことを知ったのは、電車を降りたあと、かかってきた電話でだった。
―――あなたを1人で逝かせたのは……私の……せい……?
力無く抵抗した手が、キャスリーンの腕をひっかいた。

雨だった。
紅珂みさきは地元警察から電話を受けて(基本的に国際警察と地元警察は連合して捜査を行うことが多い)、現場に向かっていた。
―――紅音が出張、安月君は用事で有休……。つまんないわねぇ……。
けれど、数分前に電話で聞いた話は心穏やかなものではなかった。
―――独り暮らしの令嬢が何者かに殺された……か。
現場に車を止めると、電話してきた警察官に近寄る。
「絹崎警部」
「あ、これはどうも、紅珂警視」
絹崎が会釈する。みさきは門を睨み付けるように見ると、絹崎に聞いた。
「現場の状況は?」
「ええと、被害者は、神堂縹、24歳です。第一発見者は被害者の恋人の月草千澄。今日合う予定だった月草が、インターフォンを押しても電話を掛けても応答がないということで、合い鍵を使ってはいり、応接間にさしかかった所で倒れている被害者を発見、つうほうしたということです。発見当時、被害者は既に死亡しており、現在死因を……」
「わかったわ。とりあえず、中に通しなさい」
「はっ」
絹崎が傍にいた警官に指示を伝え、みさきは中に通された。
「あの……書斎はこちらですが……」
「……あぁ……はいはい」
「順番通りに見なくても……?」
「いいわよ。どうせ、それはあなた達の仕事でしょ」
「まぁ……そうですけど」
鑑識官や絹崎の誘導を無視して、みさきは応接間に向かう。そこに、神堂縹はいた。
「……神堂さん……か」
アマチュアの間では、有名なサックス吹きだった。みさきとは大学こそ違ったが、なにかと縁があり、一緒に何処かのカフェで演奏したこともある。
「あの……」
「……あら、重要参考人」
「月草です」
「変わんないでしょ、どっちにしたって……」
千澄は憮然とした顔で、まぁそりゃそうですけど、と言う。
「……で……」
「はい」
「神堂さんは?鑑識に連れて行かれたのよね」
「……はい。病院の方に」
「国際総合病院?」
「はい。そこの、霊安室じゃないでしょうか」
しっかりした千澄の受け答えに、みさきはいささかの疑問を感じながらも、神堂邸を後にした。

「みさきじゃないか。こんな所までわざわざ来るなんて、明日は雨か?」
地下一階に続く階段から出てきた女医・虎星李の第一声がコレだった。
「……失礼ね。仕事で来たのよ」
「……唐也いないのに?」
「……アンタ、仕事ははじめに上司ありきでそれから部下に回されるのよ」
「へぇ……じゃ、紅音は?」
「出張……って、もう帰ってくるか」
「というか、お前がこんな所まで来るの、めったにないだろ」
「まぁね」
「で?何の用だ?また関係ないことだったら、すぐ帰らせるからな」
「あ、ひど~い。安月君の有休、誰が取ったと思って……」
「あのなぁ……で、何なんだよ?」
「殺人事件の……捜査よ」
あぁ、と星李が事も無げに言う。
「そこ。霊安室にいる。さっき私が調べたけれど……玲を呼んだ方が良さそうだ」
「どういうこと?」
「……見ればわかる」
こっちだ、とまた白衣を翻して霊安室に向かう星李の後を、みさきは慌てて追った。
「みさき」
「ん?」
「人はどうして……」
「え?」
「イヤ、何でもない」
「……気になるわね」
「何でもないから」
「そう」
階段を下りるヒールの音が、かつ、かつと響く。
「ここだ。神堂縹が……今、眠る場所」
重く感じる鈍色のドアを開けて、星李は中に入った。
「……普通の事件なら……こうもややこしくはならないんだけど」
「……ええ」
「けど……これ……明らかに違う、だろ?」
身体から立ち上る、微かな気配。
「……悪霊の、残滓……?」
「だろうな……」
「星李……あんた……」
「無理だ」
みさきの言葉を遮って、星李がそっけなく言う。
「私は確かに全ての医師免許を取ったけど……死んだ人間を生き返らせられるほど、器用じゃないんだ」
「器用って……そんな……」
「いいか、みさき。私がこちらに来る前に、親戚が住んでる瓏の王宮にいた医師に聞いたことだ。『以请求想还活的人,被请求想弄活的人,有呼吸的人,也必须怎么濒死帮助。可是,已经呼吸完全号哭也返回人世的事不能的人,不可绝对使之复活(まだ生きたいと願う人間、生かしたいと願われる人間で、息のある者は、どんなに瀕死でも助けなければならない。しかし、既に息絶えて泣きわめいてもこの世に戻ってくることの出来ない人間は、決して生き返らせてはならない)。』ってな。生き返らせることは、やっぱり禁忌を犯すことで、自然の摂理に逆らうのはよくないそうだ」
「……それも、そうね……」
―――Il y a un chemin de chaque personne.Comme pour la longueur vivre comme pour le contenu.(人それぞれの道がある。生きる長さも、その中身も)
昔習ったフランス語で無理矢理言葉を頭の中でひねり出しながら、みさきは縹と対峙した。
「……綺麗……ね」
「ああ」
静かに、彼女は眠っていた。

つづく
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